邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「隠し砦の三悪人」

2005年11月30日 | ★ぐっとくる時代劇
先が読めない面白さ。

菊島隆三 小国英雄 橋本忍 黒澤明という
ゴールデンメンバーの共同脚本による
見事な構築に、まるで面白い本を読むように夢中になってしまう。

こすっからくて、小心なくせに欲張りで意気地がない、
だけど憎めない百姓、
藤原兼足と千秋実のコンビの一挙一動が最高!

大笑い。

セットもすごい。
人も馬も大熱演。
決して手を抜かない演出は目を見張るばかり。
どうやって撮ったのか?と思うシーンのオンパレード。

「大・大」冒険活劇と言いたい。

この映画でも男同士(三船と藤田進)の熱い絆が描かれるが、
べたべたすることなく
魂と魂が結びつく究極の関係がまぶしい。

胸がすくような決め台詞もあったり
「裏切り、御免!」
誇り高い雪姫(上原美佐)の凛と響く歌声も
胸に沁みて、
大満足。

とにかく、まことに、
スカッとする~~~!・・・映画なのです。

1958年  黒澤明 監督作品 脚本  菊島隆三 小国英雄 橋本忍 黒澤明
撮影 : 山崎市雄  音楽 : 佐藤勝  美術 : 村木与四郎

■人気ブログランキングへ
よろしかったらお願いいたします


「涙を、獅子のたてがみに」

2005年11月29日 | ★イカス!映画たち

また忘れられない映画がひとつ増えた。

さすらい日乗さん
BSで放送されることを教えていただき、
篠田正浩監督の「涙を、獅子のたてがみに」を見る。

冒頭、瓦礫の中をとぼとぼと歩く野良犬は
強い獅子に憧れながら、騙され傷ついた主人公サブ(藤木孝)のようだ。

白黒の、港の映像にガムを噛む藤木の顔がかぶさる。
これはフランス映画?と思うタイトルバック。

藤木孝の鞭のようにしなやかな肢体、
ほとばしるような生気。絶叫。そして歌の素晴らしさ。

この映画は彼が渡辺プロから独立したときに作られたそうです。
ずいぶん前に「懐かしの・・」みたいなTV番組で
ロカビリーの曲をちらっと聴いて、
悪魔的な魅力に打ちのめされた。
それ以来聴きたくても聴けなかった彼の歌を
この映画の中で存分に聴くことが出来た!

舞台は横浜の港。

港湾荷役労働者(早川保ら)の組合設立を阻止する会社側(南原宏治)に
騙され利用される若者(藤木)の悲劇。
サブを愛するウエイトレス・ユキに、これがデビュー作である加賀まりこ。
いじらしく可愛い。
アンニュイな人妻に岸田今日子。

篠田正浩監督の画面は
構図が最高に美しい。
横浜の街、港、海。
飛び跳ねるように歩くサブを追いかけるカメラ、
労働者たちの群。
ラストシーンは劇場にいるような陶酔を覚えた。

港近くにあるサブの狭い部屋。
ユキの前で歌う、
「私を捨ててしまってくれ」
一度聞いたら忘れられなくなる歌だ。
(この曲はもう一度ヨットの上でも歌っている)

*************************
「私を捨ててしまってくれ」
作詞寺山修司 作曲 八木正生

年老いたカモメよ 哀しみよ
心あるならどうかわたしを捨ててしまってくれ
すっと遠くの日の沈む沖よりも
ずっと遠くの海に
私を捨ててしまってくれ
カモメ、カモメ
昔の愛よ
カモメ、カモメ
汚れちまった私の夢に
海のうねりが高すぎる

**********************
・・・
「いいわよ。一度だけなら・・」(ユキ)

金持ちパーティに潜り込んだ貧しいサブが
体中から搾り出すようにアカペラで歌う
「地獄の恋人」も衝撃。

寺山修司と八木正生のコンビはあの
「あしたのジョー」「力石徹のテーマ」でも有名。

脚本にも寺山修司の名がある。
寺山の葬儀で「100年経ったら帰ってきてくれ」と誰かが言ったとか?
100年と言わず帰ってきて欲しい。

篠田+寺山の大傑作
DVD出しておくれやす!

1962年 篠田正浩監督作品  脚本 篠田正浩、寺山修司、水沼一郎 

■藤木孝「24,000のキッス」もどうぞ!

■ブログランキング参戦中
苦戦中。応援よろしく!!


「酔いどれ天使」

2005年11月27日 | ★人生色々な映画
この顔!
若き三船敏郎の美貌に驚嘆する。

黒澤映画には
「顔」インパクトの俳優が多々出演する。

志村喬の個性的な容貌も一度見たら忘れられない。
強烈な+極と+極が激しくぶつかりあう「酔いどれ天使」。
この映画から黒澤映画に三船敏郎はかかせない
俳優となった。

肺を病んだヤクザと、
変わり者の「酔いどれ」医者との物語。

風紀が乱れた戦後の町にはヤクザがはびこり
通りの脇には
ガスがたえずぶくぶく出続ける汚れた水溜りがあった。

その泥の中であがいているような松永。(三船)

絶望した松永が雑踏を歩くバックに
陽気な「カッコー・ワルツ」が流れるシーンがある。

「野良犬」と同じくまたもや音楽の魔術がここにも。
軽やかなメロディが哀しみをより際立たせるのだ!
なんと残酷な演出だろう。

夜になると街角から聞こえてくるギターの調べは
もの哀しく洒落ているし、
ナイトクラブで笠置シズ子が歌う
名曲「ジャングル・ブギ」は黒澤明が作詞!

音楽がこんなに魅力的に使われている映画はなかなか無い。

薄情な情婦役の木暮美千代、清らかな花のような久我美子。
女優の使い方もばっちり。

いつもは、「腹にいちもつ」とか、「蓮っ葉で実がない」とか、
「ぐうたらだらだら」とかの役が多い千石規子が
情を見せてくれてほっとした。

終盤に近づくにつれ
三船がだんだんとやつれ、
逞しい体もペラペラになり、さながら
「吸血鬼ノスフェラトゥ」のように変貌していく。
それは大げさだとしても、
海辺の幻想の場面は
ドイツ表現主義の映画を思い起こさせた。

ラストの格闘の場面圧巻。

志村喬の深い表現力もすごいが
三船の静と動のコントラスト、
衝撃ともいえる存在感に圧倒される。

私は「酔いどれ天使」は
眞田(志村)ではなく
松浦(三船)なのだと思っている。

1948年 黒澤明監督作品  脚本:植草圭之助 黒澤明  撮影: 伊藤武夫
音楽:早坂文雄  美術: 松山崇

■人気ブログランキングへ
よろしかったらお願いいたします


「県警対組織暴力」

2005年11月27日 | ★ハードボイルドな映画

シリーズDVD全部揃えたあなた、
「広島死闘篇」がまだ忘れられない御仁は
ぜひ「仁義なき戦いシリーズ」のとどめ、
笠原和夫脚本「県警対組織暴力」も見て!!
そこまでのコアなファンは見ておられると思うけど・・
はっきりいうて「新・・」は別ものですから。

この題名は東映の岡田社長がトイレでポン!と思いついたという。

のっけのつかみがすごい。

若いもんをずらっと並べ菅原文太の声が響く。

「拳銃不法所持!」ビンタ、
「武器道具集合罪!」ビンタ!張り倒し。
「公務執行妨害!」ビンタ!

「お前らみたいな雑魚をブタ箱に放り込んでみても
税金の無駄遣いじゃ。やるだけやって死んでこい!その方が掃除が早いワイ!!」


台詞で頭殴られるってこんなかんじですかね。

「ぼけーとしちょらんとはよう出入りにいかんかい!」

あの、広能昌三が帰ってきた!と
一瞬錯覚するこのど迫力。
でも実は180度立場逆転して警察側。部長刑事。

警察官になったのは、ピストルを持ちたかったから・・
という動機の久能。

「捕まえられるより捕まえる方になろう思うてのう。」

ダーティ・ハリーなんか目じゃないダーティさ。

どっちが県警でどっちが組織暴力かわからないような血と暴力場面は続く。

川谷拓三が菅原文太と山城新伍に取り調べ室で
ボコボコにされるシーンは歴史に残る。
菅原文太と松方弘樹のからみ、松方VS池玲子タッグマッチ。
梅宮辰夫のエリート警部。金子信雄、成田三樹夫も出ている!

この映画は深作欣二の・・というよりは
「総長賭博」、そして
「仁義なき戦いシリーズ」で我々の度肝を抜いた
脚本家、笠原和夫の映画だと思う。
構成がかっちりタイトにきまっている。
そして躍動する登場人物たち!

終わりは当然ハッピーではありません。
この緊迫感、疾走感そして絶望感よ!
ブラックユーモアもバシバシ効いている。

笠原は晩年「やくざ映画の笠原と言われるのはうんざり」と
言っていたそうだが、自分が書いた作品の中でこの映画が一番好きだったとか。

だがこの後、深作監督とは色々あって完全に決別することになる。
笠原は最後にコンビを組んだ「やくざの墓場・くちなしの花」を見てもいないそうである。

1975年 脚本:笠原和夫 監督:深作欣二  東映

■ブログランキングへ


「野良犬」

2005年11月26日 | ★人生色々な映画
前置き無しの、
たたみかけるような演出が光るサスペンスの傑作。

新米刑事が満員のバスの中でピストルをすられてしまう。
必死の捜索の甲斐もなく
その拳銃を使ったと思われる事件が発生。
行き詰るような緊迫感とスピード。執念の捜査が始まる。

若い三船敏郎の真摯なまなざしがたまらない。
コンビを組む熟練刑事に志村喬。

公開は1949年。
ハリウッド映画も、
現在あるテレビの刑事ものも、
みなこの作品を手本にしたのではないかと思うくらい、
凝縮されたエッセンスが詰め込まれている。

戦後まもない混乱、貧困、いかがわしい雑踏など
当時の風俗が投影され、犯罪の背景が浮かび上がる。

淡路恵子は初々しいながら、
やはりそこらの女優とは違うぞ光線を放っていた。

この作品でも音楽の使い方が抜群。
壮絶な格闘の場面に流れるのは
「ショパン」のワルツなのだ!

黒澤明と菊島隆三による脚本はもちろん素晴らしいが、
台詞無しで映像によって
犯人の心情を表現するラストがもう・・すごい!

木村功の演技にはいつも胸が締め付けられてしまう。

映像による表現の素晴らしさが堪能出来る一本。

1949年 黒澤明監督作品 脚本 黒澤明 菊島隆三 撮影 中井朝一
音楽 早坂文雄 美術 松山崇

■人気ブログランキングへ
よろしかったらお願いいたします