邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「けものみち」

2009年05月19日 | ★TV番組
ムソルグスキーの「禿山の一夜」、
そして「展覧会の絵」に乗って
ドラマはぐいぐい進んでいく。
音楽が緊迫感をあおり、効果的に使われている。

割烹旅館で仲居として働く民子(名取裕子)。
仕事が終わってぐったりと家へと帰る民子をカメラが後ろから追います。
質素な身なり、無造作にゴムで結わえた髪、暗い表情。
「不幸せな女オーラ」が体全体から立ち昇っております・・

あばら家では
寝たきりになり一層嫉妬深くなった夫(石橋蓮司)が
あろうことか
民子の腰巻を巻いて寝ているのであった!
おぞましさに顔を背ける民子だが、微妙に目の動きが変わって
カメラは名取裕子の恍惚の表情を追うのでありました・・
・・・・・
・・・・・

という幕開けからして衝撃的。大人・・大人な演出・・・
だけどこれは序の口。
全編息を呑む展開なのです!

はっきり言ってエロティック!
この作品はエロスの匂いがたちこめております。

民子は小滝(山崎努)という客に会い
誰も通らない
「けものみち」を走り始めるのだった。

名取裕子は表現力が豊かで、恋をする女、ふてぶてしい女、
官能に燃える女、可愛い女、修羅の女と
幾通りもの顔を見せて最高!
濡れ場も上手い。
山崎努(こちらも最高)との絡みも息を呑むほどセクシ~~だ。
政界の大物鬼頭(西村晃)の底知れぬ恐ろしさ、
底無しのいやらしさも必見!

和田勉の演出が冴え渡り、
全3話、あっという間に見終わってしまう傑作ドラマだ。

脇も役者ぞろい。
民子の周辺を嗅ぎまわる刑事に伊東四郎
加賀まりこは、鬼頭家の女中頭、
美しいが少しトウが立った女を演じていてさすがだった。

全員ひとくせもふたくせもある登場人物たち。
けものみちの先は果たして??

最近米倉涼子主演でリメイクされたが
平幹二朗がやった鬼頭はすごい衣裳とメイクで化け物っぽかったし
屋敷もデフォルメされ遊園地みたいだった!

82年にNHKで放送されたこの和田勉演出版は
一度見て忘れられなかった作品。
このたび、松本清張生誕100年記念特集として
日本映画専門チャンネルで
放送された。

余談:女性のみなさま、
艶の無い
ゴムで束ねただけの髪形はいくら美人でも
不幸なオーラが出るのでNGです。
バッサリ切るもよし、
もしくはコジャレたシュシュでもみつくろいましょう。
民子は化粧して髪をあげてピンクのフリフリのブラウスを着た途端、
幸せオーラが出てました。
しつこいですが、「ゴム」「ゴムだけ」はやめときましょう!

1982年
和田勉演出
松本清張原作
ジェームス三木脚本

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森光子「放浪記」ドキュメンタリー

2009年05月16日 | ★TV番組
森光子さんのドキュメンタリーを見た。

気持ちが身体を動かすのだという現場を見た思いがしました。

ワイドショーの司会、
テレビドラマ、舞台と百戦錬磨の女優さんも
89歳とあっては、誰もが連日の舞台公演は「大丈夫かな」と思うところ。

確かに去年の大阪公演の終盤、
疲労でふらふらになり、
表情も無くなったような状態に陥っていた森さんだった。

だがここからが凄いところで、
5月の東京公演の稽古では
魔法にかかったように見事復活したのだ!

「放浪記」2000回を迎える頃には
目の光が生き生きと蘇り
舞台を飛び回っていたのにはほんとうに驚いた。
インタビューにはジョークで返すなど、頭のキレも抜群だ。
2000回を超え、
「2001回を迎えてどんなお気持ちですか」と問われ、
「2002回の前って感じですね」と答えていた!

人って信じられない可能性を持っているものだと
びっくりしました。
もはや人間の身体を借りた
魂そのものがそこにあるような・・・

黒柳徹子が登場して最高に可笑しかった。

オカッパの鬘にピンクの楽屋ガウン、
モガ風の装いはバッチリ似合っていたけど
奥様風アップ鬘に普通の羽織に着物、
普通のメイクだと全然誰だかわからない!

続けること・張り合いを持つことって大事なんですね~~

余談:森さんは下積み時代が長かった。
私の世代だと「時間ですよ」の女将さんとか印象に残っているけど
その前の
映画女優時代では配役の5番目か6番目、もっと下に
名前があることも。
その当時か、
「あいつより上手いはずだが何故売れぬ」という川柳を書いたそうだ。

「あいつ」って誰??

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脱兎のごとく ・岡倉天心

2009年05月13日 | ★TV番組
和田勉演出
松本清張原作「岡倉天心・その内なる敵」より
1985年NHKドラマ

西洋へと流れ始めた明治の美術界で
日本の美術を守ろうとする岡倉天心(山崎努)の奮闘と苦悩。

 岡倉VS西洋化へ傾く美術界

人の奥様(名取裕子)との激しい恋愛も見所だった。
もちろん自分にも妻子がありながら・・ですよ。

このころの和田勉の松本清張ものって面白いんですよね~。
これは見逃していたので
録画して見る。日本映画専門チャンネル。

名取裕子のダンナ役は佐藤慶なんですよね。

山崎VS佐藤

どっちも負けそうにない組み合わせ・・・(汗)

とにかく岡倉のエキセントリックさ、
天衣無縫!を前面に打ち出した演出は
しばしあんぐりクチが開いてしまう激しさ。

普通の俳優なら無理、不自然、
奇をてらっているように見えるようなところを
すんなりこなす山崎努は凄い。

和田VS山崎

和田勉は音楽も多用するけど
これはショパンの「英雄」などの旋律が
全編にわたって駆け回る。
ちょっとしつこいくらいな使い方が持ち味で
それが
猛烈なエネルギーをかもし出すのだ。

西洋シャクナゲの花のように
華やかな美貌の名取裕子は、男性を激しく求める役がぴったりで
岡倉とくんずほぐれつ・・って感じで
こちらも戦いのような恋愛。まるで格闘技のようであった。

山崎VS名取

岡倉の正妻を演じる樋口可南子は控えめ。
本来は
名取VS樋口の図式なのだけど。

最後は印度ロケも交える意欲作。

山崎 イン ガンジス川!
ガンジスで吼える!

なんかもう、激しい。全編戦いのドラマだった!

そういえば本棚に
読みかけの「茶の本」があったのだった!
岡倉先生の思想をもう一度勉強しよう。

和田勉演出
松本清張原作
脚本:筒井ともみ

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