邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「股旅」

2007年04月26日 | ★ぐっとくる時代劇
「おひけぇなすって、おひけぇなすって。
早速おひけぇありがとうさんにござんす。
てめぇ生国と発しますは・・・」


わらじを脱いだ先で
胡散臭い度120%の常田富士男 相手に長~い
仁義を切るところから始まる。
長々とした挨拶は三人目になると
「略させていただきます」と、はしょられてしまう。

百姓が嫌で
渡世人になった 萩原健一、小倉一郎、尾藤イサオ
ぼろぼろの合羽をからげて旅をする。
粋がって悪ぶっていてもどこか滑稽な三人のバランスが絶妙。

巣からようやく外に出た雛のように
無知で危なっかしい若者たちが、
因習と義理で固められた社会で必死にあがく。
普遍的なテーマを、時代劇ロードムービーとして見せている。

当時の風習や決まりごとを説明してくれるナレーションが
登場人物に親近感を持たせ、
市川監督ならではの
カット割りと編集の技が冴え渡って
何回も見たくなるシーンが続出!

余韻が残る台詞を書いているのは、詩人の谷川俊太郎と監督である。

かっこよさとは程遠い、リアルな演出も見事だ。
刀で斬られた際も
「痛え、いてててて~~~」と飛び上がってシャウトするショーケンもいいが、
主役といってもいい小倉一郎が、
馬鹿で哀しくて抜群に可愛い。
もちろん野良犬のような尾藤イサオも持ち味生かしてます。
デン助こと大宮敏充 がろくでもない父親役で出ている。
目を凝らしてみたが、デンスケに間違い無い。
誰にも真似できぬ味わい出し珠玉だった。

いつの時代にも途方にくれながら
必死に生きようとする若者の姿は愛おしくて傷ましい。
ラストも情けないやらジ~ンとするやらで、たまらない。

1973年 
監督 市川崑
脚本谷川俊太郎 市川崑
撮影 小林節雄
音楽 久里子亭
美術 西岡善信 加門良一
照明 塩野昌

映画の中のイイ女:
井上れい子:男ばっかりの中で紅一点の若い娘っこ。
それも加藤嘉扮する百姓の、
「親子ほど年の離れた後妻」というびみょ~な役どころ。
すらりと伸びた手足やすっきりとした美貌で
掃き溜め?の中の鶴のように光っております。

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「脱獄囚」

2007年04月23日 | ★ハードボイルドな映画
脂汗がにじみ出るほどはらはらした。
彼奴を逃がすな!」と共に
日本映画史上に残る傑作サスペンス

撮影は成瀬巳喜男作品でもおなじみ玉井正夫。
まず脱獄の場面から始まるが、無駄が一切無く
たたみかけるようなテンポのよさで
3回ほど思わず「あっ!」と叫んでしまった。
演出が素晴らしい。

とにかく脱獄した死刑囚役の佐藤允が怖いのなんのって。
この人は「独立愚連隊シリーズ」などの陽気な役をやると
この上なく爽やかなのに
敵にまわしたら最後?最高に怖いタイプだと思う。
飢えた野獣のようにぎらぎらと光る目に
頑丈な体躯。まるでを思い起こさせる。
睨まれたら恐怖で金縛りになりそうである。

その脱獄囚が復讐のため、
自分を逮捕した刑事(池部良)の家族を狙い
隣人の母(中北千枝子)娘を人質に取って篭城する。

犯人と戦う池部良はスラリとした、いい男。
終始厳しい表情で妻を守る様子はまるで
「セブン」のブラピみたいにカッコイイのである。

命を狙われるか弱い妻役はというと、
それが見るからにたくましい草笛光子なので
「怖いわ、あなた」と言っていても
「そおお?」と思ってしまうのは仕方が無いのではないか。
だがしかし、暗闇の中の攻防は大変リアルで、
見ているほうも歯を食いしばってしまうこと必至。

こんな映画が半世紀前に作られていたなんて信じられない。
池部の家と中北の家のインテリアが
まるでアメリカのホームドラマに出てくるようで興味深かった。
ラジオから流れる放送もなぜか英語(米軍放送)なのだった。

池部の上司役に藤田進。頼もしく、温かみがある。

1957年

監督 鈴木英夫
脚本 村田武雄
原案 石川年
撮影 玉井正夫
音楽  芥川也寸志
美術 小川一男
録音 . 下永尚
照明 石井長四郎

*鈴木英夫関連記事
非情都市
悪の階段
彼奴を逃がすな


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樹木希林in 「生活ほっとモーニング」

2007年04月22日 | ★TV番組
先日朝のNHK番組に
樹木希林さんが出演されていたのを観たので
そのことを書きましょう。

樹木さんは内田裕也プロデュース「サトリ」の曲(ロック)で登場した。
子供を育てる際も
子守唄は「ゴー・ジョニ・ゴーゴー」だった・・とのろけ?
のっけからダンナ色濃厚。

8年も離婚裁判が続いたとか、
だんなの話はまだ続いたがそれはまあいいとして、
着物で出てくれたのが嬉しかった!
それもお母様のものだという黄八丈に
別の黄八丈羽織(ただしあえてヒモ無し)を
重ねての黄八アンサンブルという個性的ないでたち。

伊藤博文の愛人のものだと言う、味わいのある留袖だとか、
着物から帯にしたものなどをスタジオに持ち込み披露。
古いものを生かすセンスの良さと上手な繰り回しに感心する。

男性アナウンサーがその中の着物に対しての感想として
「いいですね、きらきらしていてねえ」と
言ったのがお気に召さなかったようで、
「きらきらしているからいい・・・ってあなた。」と、ばっさり袈裟懸けに
アナ慌てふためく→冷や汗
アナウンサーたるもの、言葉には気をつけねばなるまい。
すぐに「ごめんなさいね、いじめちゃって」と謝っていたが
その後、それまで無難にこなしていた女子アナも
「年をとったら化粧はしないほうがいいと思う。
特に美人じゃない人はやめたほうがいい。
あなたは若いから良いけどね」発言で凍りつく場面もあった。

オダギリ・ジョーとの「東京タワー」の宣伝がメインであったが
やっぱり只者ではないものを出すとただではすまない生放送!と
思ったのであった。

別れてくれと言われ続けながらも
内田裕也をずっと「主人」といい続けているのも
すごいと思った。
勝負は裕也の負け。

「東京タワー」は大勢の人を泣かせるのでしょう。

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「出獄四十八時間」

2007年04月20日 | ★ハードボイルドな映画
峰岸隆之介は和製ジェームス・ディーンか?
森一生+宮川一夫「ある殺し屋」コンビによるハードボイルド。

無実の罪をきせられ「臭い飯」を食わされた元警官(峰岸隆之介)が出獄。
親友(長谷川明彦)の手を振り切り、
単独で事件の真相を探り復讐を遂げる。

最初から犯人がわかってしまう筋書きがちょっといただけないが
爽やかな笑顔を一切排除し、孤独な男を熱演する
峰岸の魅力で見せる。

東宝にスカウトされ、
大映で何本か主役を務めた後、
「峰岸徹」と名前を変えて現在も渋い演技を見せつけているが
そういえば
「サード」で森下愛子を買うヤ●ザ役よかったですねえ。
ちょっと個人的にはショックな役柄でしたが、
峰岸の汚れ役があったからこそ、永島敏行が生きた!
そう思っとります・・
井上順や大原麗子らがいた
「六本木野獣会」のメンバーだったことでも有名だ。

石原裕次郎に憧れて芸能界入りしたっていうけど、
赤木圭一郎と言われた方がぴんと来る。
彫の深い美貌、スラリと伸びた長い脚、

ケチのつけようが無い二枚目峰岸が
倉庫、港、採石場を走る、走る。
走るシーンがやたら多い
ハリウッド映画のような派手なアクションや思い切った演出が目をひく。
スタント無しの体当たりの荒業に感服した。
相手役も大変だ。
戸浦六宏なんか縄をかけられて
車でひっぱられること数十メーターですもん。
気の毒だった。

峰岸に絡む「フーテン」美女に松岡きっこ、仇だと誤解して狙う安田道代(大楠)、
共にピチピチとはじけそうな躍動感で、作品に色を添えている。

ドライな白黒画面はどこを切っても一枚の絵のよう。
峰岸ファンは必見!

1969年
監督   森一生
脚本 吉田哲郎
撮影 宮川一夫
音楽   池野成
美術   太田誠一

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「怪談・牡丹灯篭」(文学座)

2007年04月17日 | ★恐怖!な映画
杉村春子と長年コンビを組んだ北村和夫おすすめの一作。

山本薩夫監督による傑作映画「怪談・牡丹灯篭」では
小川真由美と西村晃
が演じていた、
亡霊と取引をしようと企てる貧乏人の夫婦を
杉村春子と北村和夫がやっている。
この二人に焦点が合わせられた芝居。

一気に江戸にタイムスリップした。

亭主(北村)は、お化け封じのお札をはがしてやる代わりに
百両持って来いとお化けと掛け合うのだが、
相手が相手だけにびびりまくりながらというのが可笑しい。

脚本(脚色:大西信行)がめっぽう面白い。
映画版西村+小川コンビは
金に目がくらんだ浅ましさが前面に出ていたが、
芝居版での杉村演じる女房は、
亭主を思う女心があふれんばかりで哀れさが際だった。
俗物があぶく銭をつかんだらどうなるか。
北村和夫の至芸もたっぷりと楽しめる。

色と欲。
不思議な因果で絡み合う登場人物たちの
様々な愛の形も感慨深い。
夫婦のその後の運命にもひねりがあった。

杉村VS北村の江戸っ子弁でのやりとりが
一部の隙も無い芸術的な間合いで繰り広げられる。
巧みに笑わせた後しんみりさせたと思えば一転、
はらはらさせられたり、
観客は二人の思うがままに翻弄される。

おまけに、杉村の三役早変わりも味わえる贅沢なエンターテイメント。
女房役からすばやく
北村と取引するお化けに変身するが、身のこなしが気色悪いわ、
台詞に凄みが利いているわで、たいへん怖い。
もう一つの役は、ラストに出てくる上品な奥様。
体つきから仕草、喋り方まで見事三通りに演じ分けております。

不思議な縁に操られる人間たちのあれやこれやは
諸行無常の響きあり。
黙阿弥の芝居を髣髴とさせた。

狂言回しとして、加藤武が扮する原作者三遊亭円朝が前後に登場するのも粋。

これこそ生で観たかったなぁ。

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