邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「乱れ雲」

2006年04月27日 | ★愛!の映画
夫を轢いた男(加山雄三)との愛に苦しむ未亡人を
司葉子が熱演している。

幸せいっぱいの新妻だった由美子(司葉子)の生活は
交通事故によってずたずたにされてしまう。
夫(土屋嘉男)は即死。妊娠していた子供も中絶し、
義姉(森光子)がしきっている十和田湖の旅館で再出発することに。

だけどひょっこり、同じ土地に赴任してきた加山と再会する。

憎いはずの男をいつのまにか愛し始めてしまい
自分を責める由美子。

武満徹の叙情的な音楽が切ない。

この映画は司葉子と武満徹の映画であった。

と、いいますのも加山はいい男なのですが
さわやかすぎて
要するに背徳の匂いがしないのである。
女は苦しんでいるが
この男は能天気だなあと思ってしまうのである。
無邪気なだけによけい女は苦しむのであろうか。

成瀬監督には珍しいカラー映画。

瑞々しい緑の洪水の中で
由美子が山菜取りをしているシーンは息を呑むほど美しい。
が、そこへ三島(加山)登場。「ボクも手伝いますよ!」。

美男美女が奏でる愛の物語。
成瀬の遺作として高い評価を受けている映画ではある。

もうひとつのカップル森光子とその愛人、
加東大介は十分すぎるほど生臭い(?)
男女の匂いを撒き散らしていたのが対照的だった。


1967年  成瀬巳喜男 脚本 山田信夫
撮影 ..  逢沢譲 音楽   武満徹 美術  中古智

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成瀬巳喜男「女の座」

2006年04月25日 | ★人生色々な映画
商店を営む婚家で、
夫亡き後一人息子(大沢健三郎)の成長だけを
生きがいに暮らしている芳子(高峰秀子)。

姑(杉村春子)は芳子を気遣い、小姑の中で
4女の夏子(司葉子)だけは芳子に同情的だった。

心優しい舅夫婦(笠智衆・杉村春子)、
先妻の長女で態度がでかい松代夫婦(三益愛子・加東大介)、
夫婦で小さなラーメン屋を営む次男夫婦(小林桂樹・丹阿弥谷津子)
仕事に失敗して転がり込んできた三女の路子夫婦(淡路恵子・三橋達也)
生花の師匠をしている次女(草笛光子)、しっかりものの4女(司葉子)、
現代娘の5女(星由里子)などにぎやかな顔ぶれ。

そこへ姑のあきが昔生んだという、六角谷甲(宝田明)が突然現れる。

オールドミスというか、行かず後家の次女草笛光子は、
如才ない六角に
ぽわ~んとなって恋をしてしまうのだが、
美人の芳子との間を疑い、嫉妬に狂うのだった。
草笛光子は男っぽい顔なので睨むとすごくおっかないです。

ここで芳子に大きな不幸が訪れたのは驚きだった。

男女間の神秘を表す見本のように、
女と出て行った夫(加東大介)を
ぶつぶつ言いながらも家に入れてしまう松代(三益愛子)とか、
生活に不満げな次男の嫁だとか、
ちゃっかり居座る路子とダメ夫の三橋達也だとか、
様々な夫婦の在り方を見る楽しみもあった。

血をわけた実の子供たちには失望し
他人である嫁の芳子と一緒に
余生を送ろうとする老夫婦。

なんだかほっとするような、淋しいような結末ではあった。
芳子とあきが布団の綿入れをするシーンが
あって、当時の生活を感じました。

松山善三はこの頃すでに
高峰秀子と結婚していたんですね。

1962年 
監督 : 成瀬巳喜男  脚本 : 井手俊郎 松山善三
撮影 : 安本淳
音楽 : 斎藤一郎 美術 : 中古智

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成瀬巳喜男の「驟雨」

2006年04月24日 | ★人生色々な映画
週末、成瀬巳喜男作品を見る。

化粧品会社に勤める並木亮太郎(佐野周二)
と文子(原節子)夫婦は結婚4年目。子供無し。

早くも倦怠の風が吹き抜けている。
にもかかわらず、原節子がとってもいきいきと輝いて見える。
「山の音」よりも「めし」よりも。
すべてが実に自然なのだ。

ぽんぽんと丁々発止でやりとりされる会話は、
当世のご夫婦にも十分通じるのではないかしらね。
出かけたいくせにいざとなったらなんだか気がすすまない・・
「あるある、そんなこと。」とうなずく女性も多いと思う。

隣に越してきたのは
今里念吉(小林桂樹)夫婦。グラマーで
超わがままな妻(根岸明美)に振り回される小林桂樹。
ギャグも実にはまります。

ざあますイヤミ眼鏡婦人に中北千枝子、
長岡輝子は男言葉の幼稚園園長だし。これがまた上手くて可笑しいのだ~

口うるさい近所とのつきあいや、
自治会の会合での様子などが
面白可笑しく描かれる。

で、そうこうしてるうちに並木さんはリストラされそうになったりして。
ビルの屋上でつぶやく厭世的な台詞は、並木さんの本音らしい。
そのように、風刺やびりっとした毒も効いてます。

テクノロジーは進化して生活は豊かになったけど、
庶民の日常や夫婦間のいざこざなど、
驚くほど変わらないものもあるのだなあ。
水木洋子の脚本が、俳優たちの演技が、人々の心の襞まで見せてくれる。

「驟雨」は夏の季語だと思っていたけど
これは冬の物語。
ざあっと降ってすぐにやむ雨の意で、
一年を通して使える言葉であるらしい。

二人の間にも雨は降ったけど・・・

成瀬組が結集した、気持ちがほっこりする、大人の映画です。

成瀬巳喜男監督作品 
脚本   水木洋子
原作   岸田国士
撮影 玉井正夫
音楽   斎藤一郎
美術 中古智

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「霧の旗」森雅之版

2006年04月18日 | ★人生色々な映画
松本清張原作。72年にNHKで放送された。
全5話。
森雅之が小娘に痛めつけられるドラマ。

柳田桐子(植木まりこ)が
徳島から上京してきたのは
高名な弁護士大塚(森雅之)に
強盗殺人の容疑で逮捕された、兄の弁護を頼むためだった。

大塚は、弁護料は高いし、忙しいしと慇懃にその願いをしりぞける。
あきらめきれずに引き返した桐子は、
ゴルフクラブを積んで愛人(岡田茉莉子)の元へ急ぐ大塚の姿を見てしまう。

大塚、間が悪いです。
さらに不幸なことに、桐子の兄は無実の罪をきせられたまま獄死する。
憎しみのベクトルはピンポイントに大塚に向かい
執拗なまでの復讐が始まるのだった!

人の怨みはどこへ向かうかわかりません。
真犯人探すほうが先だろとか、警察への怒りはどうしたとか、
つっこみどころは色々ありますが・・
思いつめた桐子のまなざしが恐ろしい。
いっちゃってます。

植木まりこという女優さんは知らなかったが、
名優を翻弄し愚弄し罵倒して
いささかもたじろぐところがないのはあっぱれだった。

森雅之がまんまと小娘の術にはまっていく姿を見るのは
つらいというか快感というか。(?)
細かい表情筋のひとつひとつまで丁寧にとらえるカメラがありがたかった。

桐子が勤めていた
場末のバーのマダムが言うことには、
「あの子なら、ひひじじいと一緒に合い合い傘で出て行ったわよ」

ひ、ひ、ひひじじい・・??

脚本家でてこ~~い!

夕暮れの窓辺で
物憂げに佇むデカダンな横顔は
私の目には「ミスター・浮雲」そのものであったのに!

(そういえば、「浮雲」での岡田茉莉子の
艶姿と混浴も懐かしく思い出したのであった!
あの二人がまた手を絡ませたりするのだった!く~)

山田洋次がメガホンをとった映画版(倍賞千恵子、滝沢修)も
ぜひみたいと思いました。

ちなみにこの放送の翌年、
日本映画に偉大な貢献を果たした
森雅之は永遠の眠りにつくのでした。合掌。

1972年 NHKドラマ

よろしかったらですけど
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「キクとイサム」

2006年04月17日 | ★人生色々な映画
動物と子供が主人公の映画が苦手。
極力見ないようにしていた。

涙腺が・・

「禁じられた遊び」「太陽の帝国」「ポネット」
「スタンド・バイ・ミー」「鉄道員」
「ミツバチのささやき」・・・

名作が多いのも困ったものだなあ・・

日本映画でも「二十四の瞳」や「泥の河」などありますねえ。
(結局見ていたりする)

このたびまた傑作を見た。

キク(高橋恵美子)は小学校高学年の女の子。
イサム(奥の山ジョージ)はその弟です。

母親は早くに亡くなり、
山奥の小さな村に祖母と暮らしている。
父親は・・・黒人兵だった。
貧しいながらも、
祖母(北林谷栄)の愛情に見守られ楽しく暮らすキクたち。
まだ幼い二人だから
自分たちの肌の色が他のひとたちと違うのはどうしてか・・
ということはわかっていない。

隣に住む清二郎さん夫婦(清村耕次 )など心優しい人にも囲まれている。

だが一旦町に出るとたちまち好奇な目で見られてしまう。
町の医者(宮口精二)の計らいで、
しかるべき団体に紹介された弟は、
アメリカの家庭へともらわれていくのだった。

体も大きくなり、女の子らしい気持ちが芽生えてきたキクは
世間の風当たりも徐々に感じるようになる。

水木洋子の脚本には何度も胸がぐっとつまった。
キクが言う。

「黒んぼ黒んぼ言わんでけろ、黄色んぼ!」

姉弟は公募で募ったそうだ。

キクを演じた高橋恵美子さんが
素晴らしく自然な演技。
自分の経験にもオーバーラップするものがあったと、のちに語ったそう。

北林谷栄 はその土地から沸いて出たようにしかみえません。
キクを取材に来るキザな都会のブン屋役で三国連太郎。
ちらっと出てきても印象に残りますね。

キクの明るさが胸を打ちます。
大人だけでなく子供たちにも見てもらいたい一本。

1959年 監督 : 今井正 
脚本 : 水木洋子 
撮影 : 中尾駿一郎 音楽 : 大木正夫
美術 : 江口準次

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