邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「青葉繁れる」

2009年12月23日 | ★痛快!な映画
東北の名門高校に通う
稔(丹波義隆 )、デコ(伊藤敏孝 )、ジャナリ(粕谷正治) は
勉強そっちのけで女の子のことばかり考えている。
頭の中は「あの事」ばっかりだ。そこへ
東京の日比谷高校から転校してきた俊介(草刈正雄)が仲間に加わり
4人は彼らのマドンナ ひろ子(秋吉久美子)に近づくために
演劇部に入るのだが・・

井上ひさしの同名小説。監督はコメディもすごい、岡本喜八

主人公の稔を演じているのは丹波哲郎の息子さん、義隆で
度の強い眼鏡をかけた顔は井上ひさしにそっくり。
ちょっとやりすぎくらいに身体を張って熱演している。

草刈正雄はモデルから俳優に転向した直後で
初々しく、まだ何にも染まっていない感じ。
突出したルックスがゴージャス過ぎて
日比谷高校にも
田舎の風景にもマッチしない・・
こんな高校生がいたら目立って目立って
近隣三県から見物人が来るでしょう。
大人っぽいなと思ったらこの時すでに22!
う~ん・・小池徹平みたいに小柄じゃないから
ちょっとキツイ。

マドンナ役の秋吉久美子は役とほぼ同年齢
18歳の可愛らしさで
ほとんど台詞が無いにもかかわらず、さすがのオーラを放っております。

東北の言葉を聞いているだけでも
ほんわか、暖かい気分になってくる。

進学校といえどものびのびした校風、
仙台の美しい自然(カメラは木村大作だあ)と
素朴な方言で癒されるぅ~~と
思いきや、
若さ爆発のノンストップ・ギャグに圧倒された。

最近、地方の高校生を主人公にした青春ものが何本か作られたけど
何か物足りなさを感じたのは
この時期特有の
ストレートな欲望が描かれていないためだったのか
と 煩悩だらけの三人を見ていて気づいた!

日本映画専門チャンネルにて
「娯楽のアルチザン:岡本喜八特集より」

1974年
監督 岡本喜八

原作 井上ひさし
脚本 小林俊一岡本喜八
撮影 木村大作
音楽 佐藤勝

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「女の歴史」

2009年12月21日 | ★人生色々な映画
成瀬巳喜男監督 高峰秀子主演、
題名ずばりの女一代記もの。

しっかり者の信子(高峰)は夫(宝田明)を戦争で亡くし、
女手ひとつで姑(賀原夏子)、ひとり息子を養っていた。

構成が面白い。
回想形式で筋が展開し、時間が交錯していくのだ。

この時代の女性の多くがそうだったように
信子の運命も散々だ。

空襲で肉親(藤原釜足・菅井きん)が
一夜にして死んでしまったり
信じていた夫に実は裏切られていたのを
戦死した後知ったり
必死に育てた息子(山崎努)は
好きな女(星由里子)と暮らすからとあっさり家を出て行ったり、

やってられな~~い!

くらいに踏んだり蹴ったり。

真面目な性格ゆえに
好意を寄せる男性(仲代達矢)の元へも飛び込んでいけない。
もちろん生活力のない姑を見捨てることも出来ない女性なのである。

面白いのは、
真正直な信子と、
いい加減だけどどこか憎めない姑(よく言えばプラス思考)の対照。
この姑の夫も、好きなことをした挙句芸者と心中してしまったのだが。

脚本は笠原良三。

男はジタバタした後
すぐ死んでしまい
女性は子を育てたくましく生きていく。

女は強い。
人生は皮肉だらけだ~~~!
何がいいか悪いか最後までわからない~~~~!

やってられないけどやっていくしかな~~い!

というようなメッセージを受け取りました。

このように妙味溢れる一代記を堪能できるのも大人の特権。

他に淡路恵子 加東大介、草笛光子、中北千枝子など豪華。

監督 成瀬巳喜男
脚本 笠原良三
撮影   安本淳
音楽  斎藤一郎
美術  中古智

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「新選組」鶴田浩二局長版

2009年12月14日 | ●面白かったTVドラマ
「燃えよ剣」の熱狂が醒めないうちに
「時代劇専門チャンネル」では
「新選組」が始まった。

同じく結束信二が脚本を書いているが
一番の特徴は土方歳三が主役だった「燃えよ・・」とは異なり
鶴田浩二が演じる近藤勇が完全無欠のヒーローとして
大々的に前に前に出ていること。

大スター鶴田浩二が
あからさまに
美味しいところを全部もっていっている。

例えば血気はやった
土方(栗塚旭)が

「・・クンを処分しよう」と言えば

スッパリと

「いやその必要は無い」と言い、

「今すぐ・・を斬ろう」(土方)と意気込めば

厳かに
「いや私は反対だ」・・と反論し、

土方が「みんなで斬りこむ!」と目を剥けば

「私ひとりで十分だ」と静かに諭すという具合に

栗塚土方、形無し!
無残!

土方歳三は面目丸つぶれで、
剥いた目のやり場に困り、
あらぬ方向を睨むか
むっつりと目を閉じて横を向くかどっちかである。
ひど~い。
心なしかメイクも冴えないし。

そして当然のことながら、結果的に近藤の判断はいつも正しい。

さらにチャンバラの見せ場も毎回あって
必ず近藤自らが剣を振るい、バッタバッタと敵を斬り倒すのだ。

このシリーズは、
隊士として日下武史待田京介! 河原崎長一郎、伊吹吾郎、
沖田総司には有川博。さらに左右田一平、「明治一代女」の田崎潤、
密偵山崎に山城新伍 

ゲストには成田三樹夫、村井国男、
などが登場するなど、キャストが超豪華。
見るからにお金かかってるぅ~~なのである。

一話完結のドラマも、
ほろっとするエピソードがはさまれていて毎回見ごたえがある。
屯所の前に店を開いている
新選組嫌いのうどん屋のがんこ親父など、
キャラ設定も巧みでいいアクセント。

「燃えよ・・」を頭から切り離して、
鶴田局長に身をゆだねれば
最高に心地よく酔えるかもしれない!栗ちゃん、ごめんね!

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こたつがある風景・「毛糸の指輪」

2009年12月08日 | ●面白かったTVドラマ
子供がいないシニア夫婦(森繁久弥:乙羽信子)の前に
身寄りの無い少女(大竹しのぶ)が現れる。

夫婦は少女を実の子供のように可愛がり
少女も素直にその愛を受けて
三人は実の親子のように仲睦まじく接し合っていた。

向田邦子脚本、当代きっての名優揃いとあって
メルヘンのようなストーリーもリアリティを帯びて胸に迫ってくる。

舞台は冬。

木造家屋の居間の真ん中には
デンと、こたつが置かれている。
外は冷たい木枯らしでもその中はぽかぽかと暖かそう。

このごろあまりみられなくなってしまったけど
ついこのあいだまでお茶の間の主役だった
「こたつ」
ドラマの中に頻繁に登場。

来客とのおしゃべり、娘と一緒の楽しい夕餉、
老夫婦二人だけのささやかな酒盛りもこたつの上で行われる。
乙羽が、向かい合った客と話しながら縫い物の手を動かしている
さりげないけどいいシーンがあった。

こたつって
人との距離を縮めてくれる
最良のコミュニケーションツールかもしれない。

と、やたら
こたつこたつと言っていますが
三人の名優の味が絡み合い
身も心もほっこり温まる、
激旨「鍋物」のようなドラマは大いに楽しめる。

私が物心ついた頃に見ていた乙羽さんは、
このドラマのように
ひっつめ髪、ウールの着物にうわっぱり
というようないでたちの役ばかりだったので、
昔の新藤兼人作品の中の
ど根性生一本・パンクな乙羽さんを最近になって見て仰天した。

一見地味な役をやってもびし~~っと一本太い筋が通っている。
役に徹するすごい女優さんなのだ。森繁さんとも
まるで40年連れ添った夫婦のよう。

森繁さんの上手さは言うに及ばずで、
台詞を台詞と思わせないところがいつもながらすごくて
目配せひとつ、言いよどみひとつで
その人となり、
夫婦の情愛をじわ~~っと感じさせる演技がなんとも言えない。

そんな大俳優たちを相手に
堂々と渡り合っている大竹しのぶ
この時ハタチそこそこだって言うんだから、どうでしょう。
毛糸で編んだ野暮ったいマフラーがとても似合う。
この天才女優をリアルタイムで今現在も見られる幸せを
私たちはもっとかみしめてもいいと思う。

1977年の1月3日に放送されたそうだ。
まさに
こたつに入って
おせちの残りやみかんを食べながら見るのにふさわしいドラマ。

そんなお正月が懐かしくなるドラマ。

そして
こたつが恋しくなる(しつこい?)ドラマ!

追記:NHKさんはお蔵にたんまりしまってある
アーカイブスをどんどん放送してください!!


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