邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

怪談「牡丹灯篭」

2004年10月22日 | ★恐怖!な映画
カラ~ン、コロ~ン・・・しんざぶろうさま~~

日本の怪談の三大古典といえば
「四谷怪談」「番町皿屋敷」そしてこの「牡丹灯篭」。

「華麗なる一族」そして「忍びの者」など沢山の大作を手がけてきた
山本薩夫監督のメガホンによる怪談映画の傑作だ。

登場人物の肉付けが秀逸。

赤座美代子のお露は夜の闇にそのまま消えてしまいそうに儚げで美しい。
亡霊になってもなお新三郎(本郷功次郎)を恋い慕い、哀れだ。

そしてなんといってもお露に殉死したお付きの女中、
大塚道子の存在感がすごい。
欲に目がくらんだ夫婦と取引して、
なんとかお露の恋を成就させようとする辣腕のマネージャーです。
幽霊だからパワーもあるし。
美しいお露に比べ、顔に凄みがあるし!

小川真由美と西村晃の小悪党夫婦も憎めません。
幽霊との取引のユーモラスなやりとりが笑える。
姑息に立ち回った結果、墓穴を掘ってしまうのだが。

笑いと恐怖のバランスが巧み。

幽霊であることがバレても、
「死んでいて何が悪い」というお露の主張は
あっぱれ!だ。ごもっとも!と膝を打ちました。

愛し合う二人は一緒になったほうが幸せなのではと
思ったのは私だけか。

「東海道四谷怪談」と同じく「長屋」が舞台。
同じ屋根の下に軒を連ね、隣の家とは薄い壁を隔てただけ。
じめじめと蒸し暑い夏。夏の夕暮れ。静まり返った夜。
江戸の庶民の生活・匂い・空気が漂ってくるようで素晴らしく
最後には深い余韻が残る。
怪談映画の中でも珠玉の作品だと思う。

とっても季節外れですが、見てみて!!

*1968年 大映作品
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「ニッポン無責任時代」

2004年10月21日 | ★痛快!な映画
無責任一代男、スーダラ節、やせがまん節、ドント節、五万節、ハイそれまでョ・

これらの劇中歌を聞くと、作詞の青島幸男は天才か?と思わざるを得ない。
昭和の歴史に輝く名曲ぞろいです。

手拍子を叩き大声で歌い馬鹿笑いする!
今こんな大人の歌ないですよね。
この映画が大当たりして、クレージーキャッツシリーズの映画が作られるようになった。

「“平均”と書いて、”タイラ・ヒトシ”と言います。」
と、いう植木等が演じる調子のいい男が
あれよあれよという間に周囲を手玉に取り、
世の中をすいすいすいとミズスマシのように渡っていく。
無責任と言うけど、なかなかどうしてやることはやる男なのです。

それに女にももてる!黄色いスーツに蝶ネクタイ。
ポマードでセットした髪。お金がなくても身だしなみは一流。

機関銃のようにテンポがいい台詞のやりとり。
場面が変わる寸前にも笑えるジョークが入ります。楽しいですよ~!

脚本はクレージーの一連の映画、加山雄三の若大将シリーズなどを手がけている田波靖男と、
池中玄太80キロ、ドリフターズの映画などを後に手がける松木ひろしが共同でやってます。

クレージーって、都会的でお洒落なんですよね。
忘れちゃいけないのは彼らはれっきとしたジャズミュージシャンでもあること。

ドラム:ハナ 肇 ギター:植木 等
トロンボーン:谷 啓 ウッドベース:犬塚 弘 サックス:安田 伸
ピアノ:石橋エータロー、桜井センリ


音楽プラス笑い。誰にも真似できない洗練された味。

みんな個性があって芝居も上手いけど、
この映画では石橋エータロー女言葉を駆使していて可笑しい。
脇は由利徹、松村達雄、田崎潤などのベテランが固めています。

不景気で殺伐とした世の中、
こんな時代にこそ、クレージーの破天荒な映画を見て元気を出したい!!

五万節?ドント節ってどんな歌だっけ?という方に・・・
今年の忘年会にいかが??

**********************

*無責任一代男♪

おれはこの世で一番
無責任と言われた男
ガキの頃から調子よく
楽してもうけるスタイル

*五万節♪

学校出てから十余年
今じゃしがねえサラリーマン、
部長に課長にぺこぺこと~~下げた頭が五万回~~!

*ドント節♪

サラリーマンは~
気楽な稼業と~来たもんだ!!
二日酔いでも 寝ぼけていても~タイムレコーダ、ガチャンと押せばぁ・・
・・どんがらがった、どんとどんと行きましょう~

************

これらの歌を劇中で植木がミュージカルのように唄い踊る。
植木等の笑顔は天下一品。
見ているだけで気分が明るくなります。
クレージー知らない世代も見てみて。
*1962年東宝映画

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「細雪」

2004年10月21日 | ★人生色々な映画
この映画、実は何度みたかわからないほど見ている。
谷崎潤一郎の原作を市川崑監督が映画化。

戦前の関西・芦屋の旧家を舞台に、
美しい4人姉妹のそれぞれの運命を描く。

姉妹と四季の風景を映し出す画面が美しい。

吉永小百合は「なかなかやり手」の
三女雪子を演じてピカイチだ。

吉永小百合はきっと役を「解釈する」能力に長けている女優さんなのだと思う。

岸恵子がしっかり者の長女、蒔岡鶴子。
貫禄があり抜群に美しい。

次女幸子には佐久間良子。
夫(石坂浩二)が三女の雪子(吉永)に気があることに気づき、
やけ食いする場面では可愛らしさを出している。
帝国劇場の舞台では長女鶴子を演じていたが
そちらも良かった。

現代的で活発な四女妙子(こいさん)には古手川裕子。
入浴シーンで抜けるような白い肌を披露していてびっくり!

岸恵子の夫伊丹十三が
あまり出番は多くないが、現実的な銀行員を演じていて
とても存在感があった。
私は個人的には
監督よりも役者としての伊丹さんの方が好きだったので
長生きして色んな役を演じてもらいたかった。

姉妹そろっての嵐山のお花見のシーン、
出かけるときに袋帯をとっかえひっかえ締める様子、
キュ~~っと鳴る帯に笑い転げる姉妹。
豪華な着物をありったけ出して虫干しするシーンなどは
着物好き、よだれがでること間違いなし。

作品の持つ
どっしりとした厚みと全編に溢れる日本情緒に、
見た後も深い満足を覚える傑作です。
登場人物の微妙な心理が上手く表現されていた。

日本人に生まれてよかったなあ!と、
喜劇「サラリーマン忠臣蔵」を見た後に続き、そう思った。

*1983年度 東宝映画 市川崑 監督作品

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森繁の「サラリーマン忠臣蔵」

2004年10月20日 | ★痛快!な映画
切腹抜きの、わははははは・・・・と笑える忠臣蔵です。
森繁の「サラリーマン忠臣蔵」と「続サラリーマン忠臣蔵」。

筋も登場人物の名前も全部パロディ。
赤穂産業の「浅野」社長に池辺良、「大石」専務に森繁久彌、
卑劣な「吉良」銀行頭取に東野英次郎等。

思わず大笑いしたのは松の廊下ならぬ、
「松の壁画が描かれているレセプション会場の廊下」での
浅野社長VS吉良頭取の刃傷(暴力)沙汰の場面。

ねちねちいびる吉良に思わず手を上げる浅野の殿さまじゃなくて社長。
止めに入る部下の様子はカメラアングルまで本家とそっくり。

現代劇にもかかわらず、バックに時代劇そのものの音楽が使われているのも笑えます。

乱暴を働いた浅野社長は蟄居を命じられ失意のうちに自動車事故で命を落とす。
そして吉良は赤穂産業の新社長に就任する。
社員は大石専務の元、主君の無念をはらすために立ち上がるのだった!!!

続編は同じ監督による続き。2本でワンセットの感。
ラブロマンスのエピソードも散りばめながら、
大石以下腹心の部下47人が力を合わせて
吉良を失脚させるまでを描く。

東宝映画黄金期の楽しいメンツが揃っています。

森繁久彌、夏木陽介、池部良、新珠三千代、東野英治郎、
加東大介、有島一郎、三橋達也、団令子、小林桂樹、司葉子、
宝田明、山茶花究、三船敏郎、草笛光子、柳家金語楼、志村喬など 

例によって喫茶店のシーンや部屋のセットを穴があくほどみる。
アメリカ映画の影響か、台所がカウンター式。幾何学模様のカーテン。
今巷で流行っている「カフェ」は、この時代のインテリアの模倣が多いことがわかる。
ヴォーグ誌から抜け出したような女性のファッションやメイク。都会的で華やかです。
カフェ好き/洋服好きの人もこの時代の映画をチェックすることをおすすめ。

エンディングテーマは歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」にも使われている下座唄、
「花に遊ばヾ」が流れて心憎い選曲。洒落ている。

*1960年 東宝映画

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「D坂の殺人事件」

2004年10月20日 | ★妖しい映画
真田広之っていい役者さんだと思う。

彼が出てくるだけで画面に真実味が出てくる。
現代劇はもちろんのことアクションもの、そして時代劇、
と、なんでも来いの演技力。

この「D坂の殺人事件」ではあっと驚く
役柄に挑戦しています。
冒頭から息を呑むこと間違いありません。

贋物作りに執念を燃やす絵師・・・なんですけど・・・
原作が江戸川乱歩なので推して知るべしなんですが、
・・・!!!びっくり!
「たそがれ清兵衛」
イメージして見ると、5mはぶっ飛びますから気をつけて。

他の俳優さんだったらいやらしくなるだけだったかもしれない。
これが 三上博史だったら引いてしまうかもしれない。(スミマセン)

しかし!真田広之だから引き込まれてしまう。
まさに「あっぱれ役者魂」

D坂とは東京文京区千駄木にある団子坂のこと。
有名なこの作品の他、漱石や二葉亭四迷、
森鴎外の作品にもたびたび登場し、
老舗のお菓子屋や骨董やなどが点在する、
今も明治、昭和の雰囲気が残る場所。

あの『帝都物語』の実相寺昭雄監督が
美しい昭和初期の町並み、セットを緻密に再現。
セピア色の画面がスタイリッシュ。

明智小五郎に嶋田久作。
この明智が意外にさらりとしていてよい。
「帝都物語」の怨念の権化「加藤」のイメージ払拭しています。
存在自体も「レトロ」?な雰囲気出してます。

でもね、真田、真田、この映画は真田広之。

深夜灯りを落としてひとりお酒でも飲みながらその時代に浸り、
謎解きを楽しむ。
そんな作品です。

ただし、
注意:お子様は見てはいけませんヨ。大人、大人だけ。

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