邦画ブラボー

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「遠まわりの雨」 感想

2010年03月28日 | ●面白かったTVドラマ
「霧の旗」「書道教授」
そして「遠まわりの雨」を録画。

三週続けてドラマを見たことになりました。

最初は、
世界のケン ワタナベが
ホームセンターのエプロンかけてる姿なんて~~と
思っていたけど、違和感はすぐに吹き飛ばされた。

舞台は頭上を飛行機が飛ぶ、蒲田の町工場。
という思いっきり庶民的な設定で気取りを排除したドラマだった。

昔ながらの商店街も残っている。
うらぶれたスナックとか安ホテルとか、
あざといくらい居心地の良い庶民性がうまいと思った。

夏川結衣が安っぽい洋服に無造作なたばね髪で
自転車をすっ飛ばし
衣料量販店でワゴンのセーターを買ったりすると思えば
渡辺の妻役の田中美佐子も
「ノーメイク・メイク」で生活感ありあり。

山田太一による
特徴のある台詞回しが少し気になったけど、
次第に慣れてきて
テンポの良さと
主役の渡辺謙と夏川結衣の上手さに引き込まれた。

夏川結衣は、戸田菜穂と共に 
以前NHK大河ドラマでたおやかな平家の女を演じていて
誠に素晴らしかったが
このたびのようなぽんぽん台詞を飛ばす
イキのいい役もこなせる万能の女優さんだということがわかった。

岸谷五朗もいい味だしてましたね。YOUはちょっと出てくるだけで
可笑しかった。

「大人のラブ・ストーリー」と言われて
果たして「ハイハイと酔えるか?」なんて
思っていたけど

すっかりいい気分に。

生活に縛られた男のやるせなさも伝わってきて
切なくなり・・

気分が高まってきて
さあこれから!というところで

なんと!

切れてしまったあ~~~

野球の延長で~~!

怨!!

一番いいところが見られなかった!!

これではなんにもなりませんわ。

ここはなんとかひとつ、再放送お願いします。

脚本:山田太一

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「書道教授」見たよ

2010年03月24日 | ●面白かったTVドラマ
荻野目慶子が濃すぎて
濃いはずの杉本彩がパステルカラーに見えた!

色んな持ち味が混ざり合うブイヤベースみたいなドラマだった。

ミス肉体の門・野川由美子、
ひと昔前ならアイドルだった大場久美子、
すっかり落ち着いた風情の手塚里美、賀来千香子
毛皮のショールだけ見せて台詞無かった岡本麗、
同じく台詞無しの嶋田久作
と、
贅沢な俳優の使い方に驚いたが
一番びっくりしたのはホラー映画も顔負けの荻野目慶子の死体
(その横の船越英一郎の顔も傑作!)
これほどまでに恐ろしい死に顔は見たこと無い。
ドラマ史上ピカイチだったのではないでしょうか。
深作欣二が監督した「忠臣蔵外伝 四谷怪談」を思わせる怪演で
期待通りの悪魔ぶりだった。
凶暴な女をやらせたら右に出るものいないかも。

同じく悪魔役だと思っていた
杉本彩は天使的な役で拍子抜け。
だけどやっぱり
じ~~っと見ていたくなるカリスマ性を持っていらっしゃいますね。

今回、
杉本がなら荻野目は 蛇! といったところでしょうか。

船越英一郎
お父様の船越英二とはまた全然異なった魅力だけど
確かに名優のDNAを受け継いでいる。
出ずっぱりで
力強い芝居を堪能出来た。
悪党、善人、時代劇、なんでもこなせそうだ。
小林桂樹がやった「女の中にいる他人」のような役も良さそう。

京都情緒も散りばめられ、かなりおなか一杯になった!

松本清張生誕100年で
色んな映像作品が見られるのが嬉しいところ。
出来るだけ見ていきたい。

原  作       松本 清張(『書道教授』)
チーフプロデューサー  前田伸一郎
脚  本        ジェームス三木
音  楽         吉川 清之
監  督        山田 大樹

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「地下鉄サリン事件 15年目の真相」

2010年03月21日 | ★TV番組
 -あの日霞ヶ関で何が起こったのか-
原田三枝子の確かで、抑えた演技が光っていた。

犯人たちに有名な俳優を使わないなど
エンターテイメント性を排除した番組作りに
フジテレビの本気を感じ、
好感を持った。

ドラマと当時の映像の
バランスがうまく取れており、優れた番組に仕上がっていたと思う。

実際に作業にあたった自衛隊、
被害者の方々の勇気ある証言も聞けて
記憶が薄れかけていた事件をまざまざと思い出してしまった。
理不尽な被害を受け、さらに心無い仕打ちにあって
日々を送ってこられた人たち。

なんと恐ろしいことがこの日本で起こったのだろうか。

そういえばあれから
公共の場からごみ箱が姿を消し
不審なものをみつけたら触らないことも徹底されたのだけど
正直言ってこのごろはうっかり忘れそうになっていたのだ。

なぜこのような事件が起こったのか、
そこまで突っ込むことは今回は無かった。

まだまだ解明されていないことが多い。
事件を風化させず繰り返し思い出すことが我々も必要だと思った。

ひとつだけ不満を言うと、
ドラマが挿入されているから
ある程度はしょうがないかもしれないが、音楽が少し多いと思った。
事件報道のバックに音楽は似合わない。

被害者の方々のご冥福をあらためて心よりお祈り申し上げます

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海老蔵版「霧の旗」感想

2010年03月18日 | ●面白かったTVドラマ
海老蔵は

でっかい!

顔がじゃなくて

声じゃなくて

芝居が!

そして

特異!

いい意味で!

ブラウン管 いや液晶画面から飛び出してくるような
スケールで唖然。
その存在ゆえか、見終わるまで
ピリピリとした緊張が続いた。

海老蔵流表現の特異性:
まず表情から入っていく歌舞伎の「型」みたいな独特の芝居。
その後ついてくる鍛え抜かれた声は、
まるで天上から降ってくるような響きで
一瞬にしてあたりとはまったく別世界を構築するのだった。

昭和の森雅之版はベテラン弁護士と貧しい小娘・柳田桐子との落差が
強調されていたが
海老版は桐子(相武紗季)との
年齢差と貧富の差はそれほどまでには感じられない。
その分逆恨み的な印象が強まった感は否めないが、
柔らかな締めくくりで帳尻を合わせていた。

ストーリーの現代風なアレンジにもムリが無く、
久々に楽しんでみたドラマだった。

海老蔵の愛人役
戸田菜穂は文句無く美しいし上手いので、二人の恋愛に十分酔えた。

海老様は緊急時非常時になるとその威力を発揮!

特に拘置所で戸田菜穂と面会するシーンは
愛が迸ってキラキラと輝きながら画面から飛び散り
夢のように甘く、
初めて海老蔵を見た「天守物語」で、
魔性の女に恋をする若侍のひたむきな愛の姿に
が~んと殴られたような衝撃を受けたのを思い出した!

ラブシーンに酔える役者ってあんまりいませんが。
水ぶっかけ、額の泥シーンにも
「はっ!」といたしました。

スリリング!

ドラマに華やかな賑わいをかもし出す
若手の花形タレントさんたちに混ざって
地味だけどプロの芝居を見せてきらりと光っていたのは
野球部の監督役をやっていた山下真司

溝口健二風に言うと、「こんな人、いる!」
と思わせる人物像を作っていた。
アクが強い津川雅彦も芝居を締めていた。

もし、
長谷川一夫がスーツを着て
雨の舗道で土下座したら同じような感慨を持つかもしれないが
観客を異次元に運んでくれ、
夢を見させてくれる市川海老蔵は
やっぱり平成の千両役者だと思った。

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「女の中にいる他人」再見

2010年03月16日 | ★人生色々な映画
再見。

何度見てもついつい引き込まれてしまう。
成瀬巳喜男作品の中では異色のサスペンスもの。

ごくごくありふれた妻子持ちのサラリーマン
(小林桂樹)が誤って浮気相手を殺してしまう。
何食わぬ顔で優しい妻(新珠三千代)や
子供たちに囲まれた生活を続けるが、
徐々に
良心の呵責に追い詰められていくというストーリー。

こういっちゃなんですが、
色っぽい話とは無縁のような小林桂樹が
身体中からS●Xアピールを発散している若林映子を相手に
マジで浮気というのが逆にリアルだ。

そして殺人の動機がまた似合わなくてビックリ。
これが仲代達矢とかだったら
全然変わったものになるのだろうな。

さりげなく振舞おうとすればするほど
一挙一動があやしくなるさまを小林桂樹が達者な演技で魅せ、
(むっつり顔・シブいお茶を飲んでるようなしかめっ面も良い)
ハラハラさせられる。

新珠三千代がこれまた絶妙なんだわ。

長岡輝子が演じるものわかりのいい姑
(胸元ゆったりのくつろいだ着物の着付けがナイス)、
しっかり者の妻、無邪気な子供たち、
人の良さまるだしのバーのマスター(加東大介)、上司の十朱久雄
小林の友人で浮気相手の夫(三橋達也)、
主人公をはじめ、善人ばかりが登場する。

間にはさまれる
同僚の横領事件もスパイスになっている。
中北千栄子が生活感ある主婦役で出ているが、
出来すぎで思わずクスリと笑ってしまう。

上手い俳優たちのちょっとした言葉や仕草、
目の使い方などで見事にそれぞれの心情が表現されている。

新珠三千代が一瞬にしてハラをくくる場面は
さすがの名演だ。

成瀬作品では男は情けなくて小心で
女は肝が据わっている物語が多いがこれは典型。

しかしまあ
女は子供を守るためには何でもするのが、
ライオン・鳥・猿・人間も含めて生物のサガではある。

応接セットが収まった木造家屋の洋間、
こんな行きつけの店持っていたいなあ
と思わせるこじんまりしたバーなど、
成瀬組ではお馴染み、
中古智による美術がすごく心地良く、
なんとも言えない温かみを感じさせる。

そういえば「ノイローゼ」と言う言葉も久しぶりに聴いた。
今で言うところの「うつ」ですね。
「神経衰弱」って言葉も最近使われなくなりましたね。

しっとり濡れた雨のシーンも多いのが印象に残った。

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