邦画ブラボー

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「大阪物語」

2006年02月08日 | ★人生色々な映画
溝口健二が井原西鶴の
「日本永代蔵」、「当世胸算用」、「萬の文反古」から
原作を書き映画化を計画するも果たせなかった作品を、吉村公三郎が撮った。

貧しい百姓仁兵衛(中村鴈治郎)一家は
年貢を納めることが出来ず
縛り首を覚悟で夜逃げする。

乞食同然の姿で大阪にたどり着くが
大店の番頭に足蹴にされて途方に暮れる。

もう死ぬしかありまへんという女房(浪花千栄子)を
叱り飛ばすものの、お先真っ暗な仁兵衛だった。

そんな時、米の荷から米粒がこぼれているのを
子供が見つけてきて、一同大喜び!

さっそく箒を持って一家総出で落ちている米を拾いにいく。
拾い集めた米は売って、拾っては売り、
売っては拾う毎日が過ぎ、
10年たつとあらあら!
使用人もいる立派な店を構えるまでになっていた。

娘(香川京子)と恋仲になる番頭に市川雷蔵。
主人の理不尽な命令にも口答えせず真面目に働く。
親の非人情ぶりにあきれて家を出て行く息子役に林成年。

仁兵衛の、家族も見放す
けちのエキスパートぶりが面白可笑しく描かれる。
が、さんざん苦労を共にした女房が寝込んだあたりから
物語はブラックな方向へ。

金がもったいないといって医者を呼ばないんですから~

だが上には上がいる。
ふとしたことで知り合うケチのうわて
大店のおかみ(三益愛子)とのバトル・ケチ自慢が最高に可笑しい。
勝新太郎、中村玉緒、山茶花究もちょろっと出ている。

一文無しの時は家族を愛しみ、
人の心を持っていた仁兵衛が
ハングリー精神を発揮しまくって
財を成した途端に
守銭奴と化して人間性を失っていくという皮肉。

餓鬼のようになった仁兵衛を哀れな末路が待っている。

溝口版も見たかった。
鴈治郎がなんたってすごいです。

1957年吉村公三郎監督作品
原作 溝口健二 脚色: 依田義賢 
撮影: 杉山公平 音楽: 伊福部昭 美術: 水谷浩

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