邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「破獄」(ドラマ)

2005年03月26日 | ★人生色々な映画
前代未聞。
青森、網走、秋田、札幌の刑務所で4回も脱獄を繰り返した男の物語。
NHKのドラマアーカイブ。吉村昭原作。

昭和11年、
佐久間清太郎(緒形拳)は質屋に盗みに入り、店の男を殺してしまう。

監獄に入れられた佐久間は看守への憎悪をむき出しにし、
暴れ、大声を出し懲罰房に入れられる。

当時の監獄がどんなものだったのか
極寒の刑務所がどんなに過酷を極めたものだったのか
真冬には見ないほうがいいです。

要注意人物として厳重な監視下におかれる佐久間。
だがこの男はいつのまにか手錠をはずし、
足かせをはずし、獣のように壁にはいのぼって脱獄してしまう。

はがねのような肉体、鬼のような風貌の
佐久間はレクター教授真っ青な凶暴さ!だった。

緒形拳の悪役は怖い!

脱獄して捕らえられ、半死半生にされてもまた脱獄を企てる。
その執念と強靭な精神力、生命力に遂には驚嘆。畏怖さえ覚えてくる。

佐久間と津川雅彦演じる看守との、素裸の(へんな意味ではないです)
人間と人間の付き合いが描かれて感動的だ。

この男をモデルにした小説では
他にも、船山馨『破獄者』、八木義徳『脱獄者』、
山谷一郎「脱獄魔白鳥由栄」などがある。

●第40回芸術祭大賞受賞

原作:吉村 昭、脚本:山内 久、演出:佐藤幹夫 
出演:緒形 拳、津川雅彦、中井貴恵、佐野浅夫、
織本順吉、なべおさみ、玉川良一、田武謙三、綿引勝彦、趙方豪 ほか

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「博奕打ち 総長賭博 」

2005年03月24日 | ★ハードボイルドな映画
昭和の始め。
親分が倒れ、跡目相続でもめる天竜一家。
中井組組長(鶴田浩二)が推されるが辞退。
仙波組長(金子信夫)は格下の石戸を推し、跡目とする。
そんな折、中井の兄弟分松田(若山富三郎)が出所するが、
松田は石戸の跡目襲名に激怒し・・

最初からすんなりと「その世界」に入っていけたのは
笠原和夫の脚本の巧みさと
主演鶴田浩二の抑えた演技にひっぱられていったから。

とにかく鶴田浩二が素晴らしい。

女房(桜町弘子)を愛し、妹(藤純子)の幸せを願い、
兄弟分の松田(若山富三郎)を想う。

困ったヤツが若山富三郎。
いのししのように突進していく無骨な男。
それもまたこの男の生き方なのであるが。

女たちはそんな男に黙ってついていき・・と思いきや、
任侠の女らしい、おとしまえのつけ方にも
驚く。

笠原和夫の脚本に
知らず知らずのうちにぐいぐい乗せられる。

鶴田浩二が「松田!」と呼び、
若山が「兄弟!」と答える。それだけでしびれる。

鶴田浩二の悲しみをたたえた瞳がいい。
我慢に我慢を重ねた挙句、男の意地が爆発!

やくざ映画の粋が結集された世界がある。
東映の岡田社長は
「なんだお前らはゲージツみたいなのを撮りやがって。」と怒り、
事実公開当時は興行成績も振るわなかった。
一年経ってから三島由紀夫によって大絶賛され、
マスコミに取り上げられるようになったとか。

こんな素晴らしい映画なのに、
笠原和夫は出来上がったラッシュを見て
「頭にきて」試写室を飛び出したそう。(「仁義なき戦い」の時もそうだったとか)

なんでも当時放送されていたテレビシリーズ「アンタッチャブル」をイメージして、
もっと切れのいいものを想定していたそうである。
そしてエンディングは映画と全然異なるアナーキーなものだったそうだ。

だが町の映画館でひとり見ているうちに引き込まれ、
「これはいけるよ」と納得したそうです。
(『映画はやくざなり』より)


1968年 山下耕作監督作品 脚本 笠原和夫

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「ジャズ大名」

2005年03月17日 | ★痛快!な映画
これほど笑った映画は初めてだ。

はっきりいってクレイジーです。狂っています。
そして素晴らしい!
めちゃめちゃ面白いわ~

物語はいたってシンプル。
南北戦争が終わって開放されたアメリカの黒人奴隷3人組が(最初は4人でした)
「オラたちのふるさとへ帰るべ~」(ほんとうにこんな言葉で吹き替え)と、
金を稼ぐためにバンドを組む。だまされて船に乗るも遭難。

半死半生で流れついたのが幕末の駿河、庵原藩。
処置に困った役人はとりあえず
牢に入れるが・・「黒いものどもをどういたしましょうか。」

大名の海郷亮勝(古谷一行)は好奇心旺盛。
「にゅうおりあんず(ニューオリンズ)から来たと申しておりまする・・」
側近財津一郎などが止めるのも聞かず面会し
彼らが奏でる音楽のとりこになる・・・イエ~イ!

藩をあげてのトランス状態の中を江戸に向かう薩摩の軍隊、
彼らと敵対する幕府の兵、ええじゃないかの団体・百姓一揆たちが駆けぬける。

荒唐無稽、抱腹絶倒などという四文字熟語もぶっ飛ぶ!
あははははははははは・・・

財津一郎、殿山泰司や、タモリなど
ナイスな面々が揃い、見ている、聞いているこちらも忘我の境地にいたりました。
こんな映画を見られて幸せだ。

原作は筒井康隆!
もはや岡本喜八監督のセンスに唸るしかない。

ナンセンスの影に反骨精神あり・・というようなことを
言うのも野暮なくらいに楽しい。ひたすら楽しい。

面白い作品残してくれてありがとう!感謝。

古谷一行、財津一郎、ミッキー・カーティス、本田博太郎、
唐十郎、山下洋輔、タモリなど

1986年 岡本喜八監督作品 脚本:岡本喜八 / 石堂淑朗
音楽: 筒井康隆 山下洋輔

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「にっぽん昆虫記」

2005年03月15日 | ★人生色々な映画
冒頭に昆虫のアップ。

東北の寒村に生まれ育ち、
世知辛い世の中を生き抜くパワフルな女の物語。
土着的なものがダメな人にはとてもうけつけられないかも。

だって土着どころか
父ちゃん、ボロを着て首まで田んぼにつかって働いているだ~~
娘:「父ちゃん、おらと夫婦だな」父:「んだ~」
「夫婦だな」「んだ~」

類まれな名優の演技に絶句

役者というものに空恐ろしさを覚え、戦慄してしまう。
大学教授から知的障害者まで演じ分けられる北村和夫。
この父親の口のあき具合。
見ているこちらもあんぐり口が開いた。

そして主役の天才女優、左幸子!
聖女にも売女にも見える表情の豊かさ、艶っぽさ。
この人はまさに不世出の女優だ。
どこを切っても素晴らしい。

東北弁も効果的に使われていて
ユーモアも効いている。

北林谷栄はここですでに90を過ぎた老婆役をやっているが
いったい今いくつなんだ!!
ば、ば、化け物のようだ。
二役で悪どい売春宿のおかみも演じているが
こちらは綺麗に化粧していて
美しい横顔にまた驚く!

春川ますみ、吉村実子、小沢昭一、
殿山泰司(ちらっと)、小池朝雄(ちらっと)、
佐々木すみ江、みな、皆、泣けるほどいいです。

主人公の変遷に昭和の世相が上手く絡められている。
随所に入るストップモーションに
左幸子が詠む素っ頓狂な歌が効いていて可笑しい。
そして表情のアップの場面は、息使いまで聞こえそうにリアル。

シリアスな物語なのに滑稽。見終わってどんよりしないのは
巧みな演出、脚本、そして名演技のなせる業だろう。

いやぁ~
びっくりしたなあ、もう!

1963年 今村昌平 監督作品 脚本 長谷部慶次 / 今村昌平
*「約束」「津軽じょんがら節」の斉藤耕一がスクリプタで
クレジットされている。

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「悪霊島」

2005年03月08日 | ★恐怖!な映画
鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい
隠されていた狂気が呼び覚まされる・・・

主題歌にビートルズのレット・イット・ビーを使っている、
横溝正史原作のミステリー。
この作品では鹿賀丈史が若々しい金田一耕助を演じていて爽やか。

篠田正浩監督はビートルズとヒッピー風の青年(古尾谷雅人)を登場させ、
時代を60年代に設定するなど斬新な試みに挑戦している。

だがなんといってもこの作品はヤッパリ岩下志麻でしょう。
登場した時点で尋常ではない雰囲気が漂う。

狂女と聖女の境目を演じて戦慄させ、天下一品。
普通の人間を超えた美しさ?であるがゆえに壊れた時の姿もまた凄まじい。

深い洞窟の中に隠されていたものは!
太郎丸次郎丸太郎丸じ・・!!!げげげ

横溝作品はいつも複雑な人間関係が描かれるため、
登場人物の名前を覚えるのに必死になる。
え?誰と誰が兄弟で誰が娘だったっけ?といった具合。
はい、私のもの覚えが悪いだけなんですけどね。

おどろおどろしい事件の裏に悲しい人間の業が隠されている。
女は、人間は、悲しい。

そんな我々のやりきれない気持ちを和らげてくれるのが、
名探偵金田一耕助の飄々とした持ち味なのだろう。
その絶妙なバランスに酔いたい。

出演者は鹿賀丈史 岩下志麻 石橋蓮司 室田日出男
古尾谷雅人 岸本加世子 中島ゆたか
大塚道子 二宮さよ子 宮下順子 原泉 根岸季衣
多々良純 中尾彬 佐分利信 伊丹十三 石橋蓮司 ・・など多彩な顔ぶれ。

だけどやっぱりダントツは岩下志麻!
岩下の前に岩下無し。岩下の後に岩下無し。(大げさ?)

1981年 篠田正浩監督作品

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