邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「早射ち犬」

2006年02月18日 | ★イカス!映画たち
64年「宿無し犬」から始まった
【犬シリーズ】は10作まで作られた。この作品で8本目。

シリーズを通して
藤本義一が脚本を手がけている。
ゆえに関西弁の台詞がたってます。

主人公鴨井大介のハジキさばきは回を追うごとに
磨きがかかり、ここでは
ほとんど曲射ち状態。マニアックな兵器も登場する。

テンポのいい台詞の応酬とユーモア、
キレのいいアクションで
田宮二郎「陽」の魅力が炸裂している。
女にモテて情も厚い、
拳銃を持たせたら天下無敵の鴨井ちゃんは
どういうわけかいつも犯罪に巻き込まれてしまう。
そしてどういうわけかデカも一緒にくっついてくる。

イイ感じにくたびれていて、
どこかフランス映画の中の刑事を思わせる天知茂
二枚目田宮二郎のからみ((漫才のよう)がなかなか。

作品によって色んな役を演じている
坂本スミ子も準レギュラーといっていいだろう。
ふくよかなからだ(はっきり言っておデブちゃん)と、
ふんわかムードが
ドンパチ路線を和らげるクッション的役割。

人情ハジキアクションとでもいいたい娯楽作。
この作品では
財津一郎、藤岡琢也、小沢昭一がお笑いを飛ばし、
成田三樹夫がびしっと締めてくれる。

財前もいいけど、犬シリーズの鴨井は超人的にカッコイイので、
全部見てしまいたくなる。

  1967年 村野鉄太郎 監督作品
脚本  藤本義一 撮影 上原明 音楽   山内正 美術   渡辺竹三郎

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「危し!伊達六十二万石」

2006年02月16日 | ★ぐっとくる時代劇
嵐寛寿郎が悪役を演じる。

伊達六十二万石のお世継ぎをめぐっての争い。
世に言うところの「伊達騒動」がテーマ。

歴史ものは描く角度によって解釈が違ってくる。

ドラマ化もされた山本周五郎の「樅の木は残った」での
伊達藩江戸家老、原田甲斐(嵐寛寿郎)は
仙台藩の存続の危機を救った英雄として描かれている。

だがこの作品では
謀略を巡らせ幼い若君を毒殺しようとしたり、
だまし討ちを指示したり、
大嘘をついたり、
女中の折檻を悠々と見物する仰天映像もあったりと、
正義の味方、「鞍馬天狗」のイメージからは及びもつかぬ極悪ぶりで
実に新鮮。(メイクもダーティ)

「伽羅先代萩」(めいぼくせんだいはぎ)のエピソードも
差し込まれていて歌舞伎ファンも楽しめる。

大黒幕としての威厳を見せ
悪事が露見してもそう易々とは殺られはしない。

ラストはひっぱってひっぱって大見せ場を作る。

アラカンは顔もでっかいが、悪の華もあった。

中山昭二や沼田曜一(あっけなくやられる)も出演していて
新東宝娯楽時代劇気分を盛り上げます。

1957年 監督 : 山田達雄監督 脚本 : 三村伸太郎
撮影 : 河崎喜久三  音楽 : 米山正夫 美術 : 黒沢治安


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「アカルイミライ」

2006年02月14日 | ★恐怖!な映画
黒沢清監督が描くアカルイミライとは?

都会に住む若者の今の気分を切り取る。

他人とはわかりあえるわけがないという
前提を踏まえたうえでの
世代間のギャップが大きな軸となっている。

守(浅野忠信)と雄二(オダギリ・ジョー)は
おしぼり工場で働いている。
会話は最小限だけど、なんとなくウマが合う二人。

雄二は他人とコミュニケーションがうまく出来ない。
というか、しない。

仕事が終わるとゲームセンターで
黙々とシューティングゲームに興じる。

というか、ただ、する。

守は他人の生死どころか、
自分の生死にすら関心がなさそうに見える。
唯一こだわるのは、飼っているクラゲの生長だった。

ゆらゆら漂いながら
近寄るものを毒の針で刺すクラゲ。

ずけずけと他人の領域に踏み込んでくる工場長と
押し付けがましいその妻、あまりにもくだらない日常・・
憎しみは突然爆発する。

守の父親(藤竜也)と雄二の奇妙な関わり合いは
我々をちょっとだけほっとさせる。
だがそれもつかの間だ。

起承転結で構成されるストーリーではない。
すべての事柄に理由があるわけはないのだから。
主人公の行動は唐突ゆえにリアルで、だから共感してしまう。

真水に慣らされたクラゲは
増殖して美しい光を放ったまま
生まれ育った海へと向かっていくのだ。

イメージの映像表現が強烈だ。

エンディングは黒沢監督が好きな人ならにやりとするだろう。
ラスト、表参道を歩く高校生の足元は
ふざけながら、徐々に前へ進んでいく。

この映画のウィークポイントをあげるとすると、
登場人物がかっこよすぎることかな。
だけどそれもひっくるめて黒沢映画なのかな。

藤竜也はガラクタ修理屋にはとても見えないし
オダギリ・ジョー、浅野忠信は洋服が似合いすぎる。
りょうもモードなファッションの弁護士だ。

衣装に強烈な主張があるので、なんなんだこれはと
思ったらクレジットに北村道子さんの名前があった。
黒沢北村コンビは今後も続くのだろうか。
セッションのようで刺激があった。

浅野忠信もよかったけど、
オダギリ・ジョーの今後が特に楽しみです。

カテゴライズ出来ないけど
「人間ドラマ」ではない。やはり「恐怖」に入れちゃいます。

2002年 黒沢清 監督作品 脚本 黒沢清 撮影: 柴主高秀
美術: 原田恭明 衣装: 北村道子 音楽:パシフィック231

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「大阪物語」

2006年02月08日 | ★人生色々な映画
溝口健二が井原西鶴の
「日本永代蔵」、「当世胸算用」、「萬の文反古」から
原作を書き映画化を計画するも果たせなかった作品を、吉村公三郎が撮った。

貧しい百姓仁兵衛(中村鴈治郎)一家は
年貢を納めることが出来ず
縛り首を覚悟で夜逃げする。

乞食同然の姿で大阪にたどり着くが
大店の番頭に足蹴にされて途方に暮れる。

もう死ぬしかありまへんという女房(浪花千栄子)を
叱り飛ばすものの、お先真っ暗な仁兵衛だった。

そんな時、米の荷から米粒がこぼれているのを
子供が見つけてきて、一同大喜び!

さっそく箒を持って一家総出で落ちている米を拾いにいく。
拾い集めた米は売って、拾っては売り、
売っては拾う毎日が過ぎ、
10年たつとあらあら!
使用人もいる立派な店を構えるまでになっていた。

娘(香川京子)と恋仲になる番頭に市川雷蔵。
主人の理不尽な命令にも口答えせず真面目に働く。
親の非人情ぶりにあきれて家を出て行く息子役に林成年。

仁兵衛の、家族も見放す
けちのエキスパートぶりが面白可笑しく描かれる。
が、さんざん苦労を共にした女房が寝込んだあたりから
物語はブラックな方向へ。

金がもったいないといって医者を呼ばないんですから~

だが上には上がいる。
ふとしたことで知り合うケチのうわて
大店のおかみ(三益愛子)とのバトル・ケチ自慢が最高に可笑しい。
勝新太郎、中村玉緒、山茶花究もちょろっと出ている。

一文無しの時は家族を愛しみ、
人の心を持っていた仁兵衛が
ハングリー精神を発揮しまくって
財を成した途端に
守銭奴と化して人間性を失っていくという皮肉。

餓鬼のようになった仁兵衛を哀れな末路が待っている。

溝口版も見たかった。
鴈治郎がなんたってすごいです。

1957年吉村公三郎監督作品
原作 溝口健二 脚色: 依田義賢 
撮影: 杉山公平 音楽: 伊福部昭 美術: 水谷浩

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「誰よりも金を愛す」

2006年02月06日 | ★痛快!な映画
会津の小原庄助さんを主人公にした
立身出世コメディ。

「誰よりも君を愛す」の
パロディタイトルがすでに可笑しい。

朝寝朝酒朝湯が大好きでそれで身上つぶした小原庄助の子孫、
18代目庄助(三木のり平)は
一億円貯めるまでは故郷に帰らない決心で
東京兜町の億万証券に就職する。

ぼろぼろの家に間借りして(縄はしごをかけて登る天井裏)、
食堂での注文は最小限(ライスのみ)、
隣の客が残したおかずを新聞紙に包んで
持ち帰るなど徹底した節約生活で金をためる毎日だった。

一向にぱっとしない庄助の元に
ご先祖様の亡霊が出てきてはハッパをかける。

トニー谷、榎本健一、益田キートン、
柳家金語楼、花菱アチャコ、関敬六、佐山俊二、
谷幹一、八波むと志、清川虹子など
一流の喜劇人が勢ぞろいしてお祭り騒ぎ。

三木のり平は顔を見ているだけでも可笑しいけど
体をはった演技には大爆笑してしまう。

コンピューターで取引される現代とは違い
「現ナマ」という言葉が
まだ生きてる時代の証券業界の有りようも興味深かった。

山田五十鈴が「新東宝」の株をどかんと買うマダムに扮するなど
シャレも効いている。

1961年 斎藤寅次郎 監督作品 脚本 : 笠原良三
企画 : 柴田万三 撮影 : 平野好美 音楽 : 宅孝二
美術 : 朝生治男

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