邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「おんな極悪帖」

2008年07月31日 | ★ぐっとくる時代劇
これは面白い~~~~~~~~~~
久々にどえらく面白い娯楽時代劇を見た。

その味わいは、
クリームあんみつに白玉をたっぷり乗せて
パッションフルーツをトッピングして
生クリームを絞りだしたような・・と言いましょうか。

安田(大楠)道代の美しき悪の華に
トンデモ・キ印ヘンタイ殿様(岸田森)、
悪の美剣士(田村正和)、
凄腕短刀使いの中老(小山明子)、
ずる賢い助平をやらせたら右に出るものはいない?小松方正の医者、
同じくむっつり助平をやらせたら天下一品、佐藤慶の家老などの
色と欲が絡みあい、
地獄のような戦いが繰り広げられる時代劇。

岸田森が幼い子供の前で
わははははは
わははははは
と笑いながら何かをアグっと食べてみせて
その口元が血で真っ赤!になるシーンがあるのだが
はっきり見えないので
それが何かが激しく知りたい!!

主役の安田道代の男をとりこにする手練手管は
悪女をめざしている女性必見!
ただし、「小悪魔」通り越して
「大悪魔」ですのでハンパではないです。

その凄腕女っぷりも見事だが
小山明子の、
敵には氷のように冷酷、
惚れた男(田村正和)にはメロメロ年上女に変身する女も
見もの。
田村正和も意外な役回りがグ~~・アイラインはすごく太いです。

全員悪人登場人物が、
騙し騙されて死ぬまで戦う、
地獄草紙さながらのデスバトル。
最後に残る幼い若君が
母の亡骸を前にして
キ印殿様そっくりに
わははははは
わはははは

と笑う、
ブラックなオチ付き。

原作は谷崎潤一郎の「恐怖時代」。
安田(大楠)道代の
妖艶な美しさは悪魔的だ!

歌舞伎で歌右衛門が演じたことがあるそうな。
タイムマシンで戻って観たい~~!!

監督は「眠狂四郎」などの池広一夫です。

時代劇専門チャンネル
「禁断の大映おんな映画」で観ました。

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「花いくさ」

2008年07月27日 | ★TV番組
女の喧嘩といえば
先日再放送された井上真央主演の
テレビドラマ「花いくさ」(フジテレビ)でも
派手なキャットファイトが繰り広げられていた。
井上扮する芸妓の卵が
祇園でサバイバルしていく成長物語。

井上ではなく
戸田菜穂と、葉月里緒奈のとっ組み合いは
すごい迫力で
五社英雄監督の「陽暉楼」での
池上季実子と浅野温子を思い起こさせた。
葉月があまりにも痩せてフラフラなだけに、
やけに生々しい迫力があった。

戸田菜穂は演技が達者でずっと見ていたい。
惚れ惚れする艶姿!美人過ぎて気の毒なほどであった。

素朴な芸妓の卵(井上真央)
が色々あって目がだんだんつりあがっていき、
愛くるしい顔が怖くなって
鉄のような祇園の女に変身していくのである。

迫真の演技だったが
贅沢を言えば踊りはもうちょっとなんとかして欲しかった。

一昔前なら主役は葉月里緒奈、
そしてもっと昔だったら
おかみ役にすっこんでいる
名取裕子が勤めた役であろうと
時の流れを感じた。

岩崎峰子さんという、
実在の元カリスマ芸者さんの半生を描いた作品。

彼女をモデルにした
●Memoirs of a Geisha
●SAYURI
も有名だ。

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「源氏物語・浮舟」

2008年07月16日 | ★愛!の映画
さんざんもったいをつけておいて
更新が遅れてすみませんでした!

奇しくも今年は源氏物語千年記念とか。

光源氏の子〔実は柏木の子なのですが〕、
薫の君(長谷川一夫)とその恋人浮舟(山本富士子)、
間に分け入る皇子匂宮(市川雷蔵)。

平たく言えば三角関係の物語。

平安京のセレブたちの口元に
先日盛り上がったお歯黒は男女を問わず
施されているのでありました。

昔の恋人に瓜二つの浮舟と相思相愛になりながらも
ガチガチ・プラトニックラブを貫いている間に
女に超手が早い、匂君(雷蔵)に先を越されてしまう薫。

強引な宮の激しい求愛を
拒みながらも受け入れてしまう浮舟・・・
大人の世界といえましょうか・・

う~~ん・・女からみても薫の異常なほどの頑固さ、
奥手ぶりはイライラする。
複雑な生い立ちが影響したのかしらん。
裏切られたと知って
女性にひどい言葉を投げつける。
「誠実」という名を借りた
ストイックで
潔癖症の嫌な面が出ていて面白い。

対する「凄腕」匂宮は
あっけらかんと屈託が無く、
悪魔のように魅力的。
雷蔵のフェロモン全開で
ひょっとしたら眠狂四郎よりもセクシーかもしれない。
夫がありながら匂宮に恋焦がれる人妻のエピソードも、
宮の魅力更にアップ!に一役買っている。

対照的な二人にはさまれる浮舟の複雑な
女心を山本富士子が可愛らしく色っぽく、儚く演じている。
浮世離れした長谷川一夫のまったり感と
ひな祭りの雛段から降りてきたような雷蔵の気品。

三人の魅力がムンムンと立ち昇りぶつかり合い、
得もいわれぬ味わいをかもし出しております・・・

ずっと酔っていたくなるような
本物よりも本物らしい、
人工の美の世界を衣笠監督は見事に作り上げたのでございます。

大映が誇る絢爛たる美術と衣裳も見所!
恋の駆け引き、難しさを勉強出来ます。

それにしてもこんな素晴らしい文化が千年前にあったなんて・・
進歩したのか後退したのかわからないわ、日本。

1957年
監督: 衣笠 貞之助
脚本: 八尋 不二/衣笠貞之助

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「みだれ髪」

2008年07月05日 | ★愛!の映画
明治30年、東京。

喧嘩に巻き込み怪我をさせてしまった娘を背負い、病院に駆け込む男あり。
気丈に痛みをこらえながら男(勝新太郎)をかばう心優しい娘
山本富士子
冒頭ですでに人物設定が出来ているのがスゴイ。

奥から「台詞平ら読み?」がいい味出してる
若先生登場(川崎敬三)。
見るからにイイおとこの若先生と
娘夏子(山本)はは見事恋に落ちるが(美男美女カップル)
家柄の壁が二人の前に立ちはだかるのであった。

その間をちょろちょろするのが
勘違い純情男、愛吉(勝新太郎)である。

洋服と和服がまざっている。
西洋文化と和文化の混ざり具合が興味深い。
上流の家は洋風建築を取り入れるなど
文明は開化したようにみえるが
社会は旧態依然。
身分制度は根強く残っていた。

良家の子女を相手に自宅でドイツ語を教えている北林谷栄
その夫で茶道、華道を教える中村伸郎
セレブ夫婦」
材木屋の娘であるお夏をイジメる。

北林の上流階級の奥様然とした、気取った態度と
カッコつけたドイツ語は必見の面白さで
ビルマの竪琴の婆さんとは天と地の差がある。

襟元から刺繍半襟をたっぷり覗かせ、しかも衿あわせはきっちり。
細かい柄行の丸帯に
三分紐を斜めに締めた真ん中には小ぶりの宝石の帯留め。
このイヤミながらも洗練された着こなしはぜひとも真似したいと思った。

衣笠監督の画面は構図が美しい。
スリガラスの間から
除く人物の顔、障子の使い方、日本家屋の直線的な美が強調され
小物ひとつひとつまでもが美しい。
あられ、雪、花など自然界の美しさも取り入れられているが
それは作りこまれた美しさ、本物より美しいのではと思わせる
人工美の極致なのだ。

後半になっても見所は満載だ。

実家が火事で焼け、莫大な借金を背負った夏子は
待ってました!の温泉芸者姿となるが
その後ろには
「お嬢さん、お嬢さん」と、
忠犬のようについていく愛吉の姿があった。

女形出身の衣笠監督は
理想の女性像を山本に重ねていたのに相違ないと思う。
鏑木清方も頷く美しさではなかろうか。

夏子をものにしようと
近づく客(西村晃)と、
ヤキモチを焼く女房(角梨枝子)の痴話喧嘩も最高だ。
角は
女郎上がりの鉄火肌という役どころで、
大胆な縞の着物に青に白い模様が入った半襟。
すらりと立った姿は胸がすくようなイイ女っぷり。
「ちくしょう!」と、
上から西村をひっぱたくシーンでは
客席からも「オオ!」と喜び?の声があがっていた。

人物描写、このようにかなり分かりやすいです。

夏子に優しくするエキゾチックな美貌の芸者は
誰かと思ったら、お茶のCMでもお馴染み市田ひろみ先生(!)で、
時の流れを感じた。

愛吉は無知で馬鹿なヤツ丸出しで
体中から日本犬のような愛くるしさを漂わせている。
ラストには
「大馬鹿」が爆発するが、さすが千両役者で
愛らしい目から涙がこぼれ落ちるや
思わずもらい泣きしそうになる人100万人!
と、思う表現力であった。
あんな哀しい目、
胸がしめつけられるような目は他に見たことが無い。。

愛吉、可哀相だよ、愛吉!!!

山本も負けてはいない。
「白鷺」同様、ここでも目が釘付けになる迫真の演技を見せる。

最もテンションが高まったその時、
川崎敬三がしゃしゃり出た挙句、
コテコテの
僕たちは姿も心も美しい人を不幸にしてしまった!」という台詞を
まっ平らの抑揚で吐くので
泣いていいのか笑っていいのかわからない状況に!

かなり困惑したが、結果的に大満足の一本!

余談:山本富士子は見た目に似合わず軍鶏を可愛がっているという設定だが
夏子と軍鶏が絡んでいる映像が無かったのが不思議。

昭和61年

監督 衣笠貞之助
原作 泉鏡花
脚本 衣笠貞之助
撮影 渡辺公夫
音楽 斎藤一郎

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