穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

大江健三郎の「芽むしり仔撃ち」トリビア

2022-01-31 08:27:35 | 書評

 みなさん、クチビルと書くときにどう書きますか。くちびる?、唇?、(このワープロでは変換で出てこないが)唇の下が月の字、つまり辰の下に月?
普通は仮名か唇ですよね。ところが大江健三郎は漢字の下が月の字を使う。間違いじゃないがあまり見かけない。しかもめちゃくちゃに沢山出てくる。なぜかというと登場人物の感情、心理、意図、身体状況たとえばアドレナリンの噴出状況、などをえがくのにすべて、ほとんどクチビル辰の下に月を使う。
 私は大江作品は「芽むしり、」しか読んだことが無いからほかの作品でもそうなのかは知らない。この作品がデジタル化しているならクチビル(辰のしたに月)で検索するとこの中編でおそらく百回以上ヒットするだろう。
 普通感情を身体的に表現するときには目を使うのが一番多いと思うがそれでも頻出度は大江のクチビル(漢字変換できないのでカタカタでごめん)の頻出度にはおよばない。次は声かな。
 この字は小さい活字だと何の字か分からない。目をページに近づけるとクチビルだと分かる。大江健三郎はいまだ口唇性愛期を脱していなかったのかと思ってしまう。
 一応例示したほうがいいと思うが何しろ無数にあるので若干例を示しておこう。
*寒さに変色しているクチビル、まこれは普通のほうだが
*泣き出しそうにクチビルを歪めて
*僕は閉ざしたクチビルのなかでどなって歩いた
*少女の肉の薄いクチビル
*クチビルを引きつらせて歯ぐきをむき出しにした少女
  彼にはクチビルにつれて歯ぐきや唾の記述も多い
*しかし笑いを小さい気泡のように濡れたクチビルから吹き出して僕らのなかへ入った
*僕はクチビルをひくひくさせて黙っている李にいった
 ほんの数例である。

 


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