穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

赤と黒はなにか

2023-10-22 19:12:02 | 書評

題名の赤と黒が何を表すか。結論=不明

Wikipediaによると赤は軍人、黒は聖職者という説が紹介されているが、赤は軍服に多いというので分かるが、黒が聖職者というのは意味不明である。仏教なら墨染の衣と言われてわかるが、キリスト教では黒が聖職者を代表する色ではない。それに、ソレルがパリの有力政治家のひきでパリに出てきたが、その周りの人間がみんな黒い服を着ているという記述があり、作者が黒で聖職者を表してたというのはいただけない。むしろ作者の言うように黒は腹黒い王政復古派の政治家ととるのが自然だろう。

ソレルは出世の道として最初は、だれでもがそうであったようにナポレオン崇拝者でもあったが、パリに出てきて政治家としての野心が出てきたという王政復古後の若者の通弊ととるのが自然だろう。

大体、作者が題名を解題していない(下巻初めまで)のも妙だ。大体このくらいまで読むと題名が腑に落ちるのが普通なんだけどね。

むしろ赤は情欲(夫人との関係)で黒は主人公が失敗して最後は死刑になることを表しているのか知れない。


ナポレオン後のフランス政界

2023-10-22 08:59:07 | 書評

ポジション・リポート68ページ、新潮文庫下巻

さて、ジュリアンは神学校をやめてめでたくパリの政界の有力貴族のサロンで活躍し始める。

そこで当時の政界談義を長々と始める。ほとんど三人称の視点で(実際はジュリアンの観察ということになっている)。そんなことは日本の読者には無用のことである。フランスの作家ではバルザックもこの癖がある。もっともバルザックは実際に代議士としても活躍したそうだが、それにしてもフランスの政界工作なんかわれらには全く興味がない。それが小説全体の理解に不可欠ということは全くないようだ。スタンダールの場合も。