穴村久の書評ブログ

漫才哲学師(非国家資格)による小説と哲学書の書評ならびに試小説。新連載「失われし時を求めて」

印象の訂正

2023-10-27 17:12:31 | 書評

誤った印象を与えたかもしれないので補足します。10月14日の「荷風の読書日記」で当時アメリカで流行りだしたハードボイルどタッチの作品があると書きました。その後気になったのでその作品を探したところ、昭和六年の作品「つゆのあとさき」に今でいうホステス(女給)とタクシー運転手のいざこざの記述がまあ、ハードボイルド風でした。運転手と言い合いになり、降りるときに運転手がわざと急発進して3,4日のけがを女給に負わせた叙述があります。ハードボイルド風というのも大げさだが、いずれにせよ、荷風のタッチではないので記憶していた。

この小説はかなり長編で問題の個所は2,3ページだけなので作品全体をハードボイルド風というのは言い過ぎでした。

この作品は出だしもちょっと変わっていて最近いろいろいたずらをされるので占い師に女給が相談に行くところから始まっています。これなんかもクライエントが私立探偵に相談に行く雰囲気で荷風としては変わっています。チャンドラーなんかこのパターンですよね。相談に行くところが私立探偵か占い師かの違いですが。やはり当時のアメリカの小説なんかに触発されたという気がしますね。