新潮文庫の該書はサルトル(および彼の子分)とカミユの喧嘩文である。おそろしく内容が低級でこんなものを出版した新潮社の見識を疑う。
本書は四つの文章からなっている。
ア: フランシス・ジャンソンがカミユの大ベストセラー「反抗的人間」を揶揄攻撃したもの、これが『論争』の口火を切った。
イ:カミユのそれに対する反論
ウ:サルトルが子分(私の寄稿家)の一大事にジャンソンを援護するために書いたものでカミユに対する絶交宣言
エ:再びジャンセン登場
それぞれの論文をABCDEの五段階で評価すれば、
ジャンソン E
カミユ BないしC
サルトル D
ようするにこれはローカルな罵り合いであり、作家という仲間うちギルド内での口汚い罵り合いである。これを平気で公衆(一般読者)の目にさらす執筆者、出版社の神経が理解出来ない。カミユは公の出版物で低級な揶揄に晒されたから反論はやむを得ないかもしれないが。
すくなくとも、喧嘩の発端となったカミユの「反抗的人間」に新潮社の読者はアクセス出来なければならないが、新潮文庫には入っていない。「反抗的人間」の解説の一つとしてこれをくっつけるなら多少興味をそそられるかも知れない。
「反抗的人間」の内容の是非は読んでいないから評価のしようがないが、この本は出版後大変な反響を巻き起こしたらしい。だからジャンソンがやっかみで噛みついたのだろう。