あらためて中山道 妻籠宿についてガイドブックを読むと、
日本で最初に江戸時代末期の宿場町の復元と保存を行った場所。
国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
とある。
午前10時に店々がオープンし、まずはみんなでコーヒー、コーヒーが苦手なMさんは大好きな紅茶を飲むことからスタート。
町の中心部に街道をはさんで本陣、脇本陣がある。
本陣・脇本陣が何たるか、恥ずかしながらこれまでよく知らなかった。
妻籠宿本陣は藤村の母の実家でもある。
幕末に馬籠の島崎正樹(「夜明け前」の主人公のモデル)に嫁ぎ七人の子をもうけ、その末っ子が春樹(藤村)。
後に藤村の次兄広助(ひろすけ)が母の実家で伯父のこの家の養子となり、最後の当主になった。
当時の家は明治時代に取り壊されたが、平成7年に江戸時代後期の間取り図を元に忠実に復元されている。
ところがなぜか内部の写真を一枚も撮っていない! 見学に夢中になっていたのか?門は早朝の散歩で撮ったもの。なので内部の様子はこちらを。
本陣の斜向かいに脇本陣奥谷と同家の蔵を利用した歴史資料館がある。
「林」が姓、「奥谷(おくや)」は屋号らしい。
藤村の母は妻籠から馬籠へ、初恋の人ゆふさんは馬籠から妻籠のこの旧家に嫁いでいる。
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
「初恋」(若菜集)
こちらにはガイドの方がいて、他の観光客に説明されている途中から加わって聞いた。
この屋内もあまり撮影してなくて悔やまれる。
隠し階段、隠し部屋、2階から来客を確認するための隠し窓、各部屋で異なる鴨居など凝りに凝っている。
居間の囲炉裏の座り方には厳然とした家父長制度が守られていたようだ。
(前述「脇本陣奥谷」サイトの画像を参照あれ。)
土間を向いた上座に当主。その左隣に後継者の長男が座って父の振る舞いから日々学んでいく。
当主の右側に姑・嫁と並ぶ。姑のやり方を見ながら、嫁は家のしきたりを覚える。
その前の囲炉裏には食事の配膳をするための細長い板が渡っている。
「これを見てください」とガイドさんがゴザをめくると、姑の席は畳、嫁の席は板の間だった。
半畳足らずのスペース、かえって手間も工費もかかりそうだがそこは徹底している。
長男とその他の子どもにも格段の差がある。
父親と長男の向かい側、土間を背にして他の子どもたちが座る。
薪は土間の方からくべ、暖かい炎は父と長男に、燃えてない薪の尻尾と煙は弟妹側に。背後につい立てこそあれ寒かったに違いない。
名字の「林」をデザインした瓦。
部屋の戸板の煤を洗い流したら浮かび上がってきたという絵。
琵琶を持っているから、龍に乗った弁財天か?
浴室の天井。デザインに凝ったのではない。細木をこうすることによって(しかも微妙な角度があるらしい)、水滴が一切落ちなくなるそうだ。名工の技に感心するばかり。
資料館になっている林家の蔵 / 明治天皇小休所に決定した際作られたテーブル / 障子に嵌められた当時のままの硝子。微妙に波打っている / 庭の一部
地酒、お菓子、ヒノキ細工etc. お土産も買った。
さあ、そろそろ駅に向かわねば…。
路線バスに乗って地元の方と交流するのも楽しいが、「4人ならタクシーの方が安いですよ。」という旅館のご主人のアドバイスでタクシーにした。
……to be continued.