min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

新・マフィアの棲む街

2007-01-06 22:54:09 | ノンフィクション
吾妻博勝著『新・マフィアの棲む街』文春文庫 2006+.12.10 600円+tax

1990年代の初め、著者は『マフィアの棲む街』で余すことなく新宿歌舞伎町における外国人マフィア、なかんずく中国マフィアの実態にせまる優れたレポートを上梓した。
あれから10年、著者は再び新宿歌舞伎町を主体にその後の外国マフィア組織の変遷と実態を取材し週刊誌で連載、このほど本編を文庫化した。

僕が1992年当時の新宿歌舞伎町、特に区役所通りの風林会館やLee3ビル界隈の中国サロンに出入りしていた時には確かに上海勢が多くの店を牛耳っていた。
そこには北京や東北地方から出てきたホステスがポツリポツリ混じっていた。
しかし、上海人であらずんば人でなし、といった風潮があり上海出身ママはこれら上海人以外の中国小姐をまるで奴隷のように扱っていた。

それが今はどうなっているのか。上海も福建も北京もほとんどが東北マフィアに駆逐されてしまったという。10年前には一番田舎者として牛馬の如くあしらわれていた東北人(吉林省や黒龍江省など旧満州の地域)によって歌舞伎町はおろか都内及び周辺の中国マフィアの勢力図が書き換えられたという。
この背景には延辺と呼ばれる地域に住む中国系朝鮮族の台頭があり、彼等独特の結束力と中国語、朝鮮語双方を話せるという言語的な優位性が特記される。
他の中国マフィアや北朝鮮、韓国の犯罪組織とも意思疎通ができるわけだ。したがって組織犯罪がより国際化され分業化されることになった。
更にこの裏には中国からの残留孤児の2世、3世の犯罪社会への参入が大きな問題となっている。国籍を日本に移した残留孤児たちはけっして日本社会では浮上できない運命を悟り、流暢な中国語に日本語をいう武器を使い中国マフィアと日本のやくざの橋渡し役を行うようになったという。

一方福建省を主な根拠地とする蛇頭の動きも上述の状況の変化につれより活動が広域化しているという。以前は福建人を主に密航させていたものが今や中国東北部出身の中国人をも顧客にしている。
彼等は密航に際し日本円で300万円近くの金を蛇頭に支払い命がけで日本に向かってくる。そのほとんどが借金とのこと。日本に上陸した後その返済にせまられるわけだが、まともな家業では返済できるわけもなく厳しい取立てにたまらず犯罪に走るケースが目立つ。
金のためなら何でもするという彼等の犯行は今や首都圏に留まらず地方の資産家を狙うなど広域化している。その背後には上述のような犯罪の多国籍化、分業化が特徴となっている。つまり実行犯は各地出身の中国人に朝鮮人であり情報提供は日本人やくざがあたり盗品のさばきも坦務するという具合だ。
とにかく窃盗や強盗程度で捕まっても強制送還されるか刑に服すとしても死刑になるわけでもないので彼等はタカをくくっている。日本の法、刑罰をなめきっていると言える。

こうした状況を打開するにはどうすれば良いのか?
とにかく彼等の「日本神話」を打ち砕くしか方法がない。密航者は単に強制送還に留まらず厳罰主義で臨むしかないだろう。巨額な対価を払って日本に来てもけっして報われないのだ、ということを骨身に染みるほど分からせるしか方法はないのだ。
一時期彼等密航者の船は台湾に向かった。だが台湾当局の対処は極めて厳しく徹底的に取り締まった。結果彼等は更に北上して長崎へ向かった。台湾よりも日本は甘いと判断したわけだ。
まっとうに勉強するために来日し合法的に真面目に働く中国人には気の毒としかいいようがないがここまで中国人による犯罪が増えると座して眺めるわけにはいかない。
本書を読むと馳星周著『長恨歌―不夜城完結編』や大沢在昌著『狼花』の背景が鮮明になってくる。

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