min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

四十七人目の男 下

2008-07-19 08:50:22 | 「ハ行」の作家
スティーヴン・ハンター著『四十七人目の男 下』扶桑社ミステリー 2008.6.30  819円+tax

オススメ度 ★★☆☆☆
注)この評価は同シリーズ未読の方向け。シリーズ追っかけ組には★4つ!


本編はボブの父、アール・スワガーが太平洋戦争の硫黄島での日本軍との戦いの中で、ある日本の将校から受けた“恩”をその息子と家族に対しお返しする、という物語である。
アール・スワガーは戦後帰還して故郷で保安官になったのであるが、太平洋での戦いの模様については一切周囲に語ることはなかった。この辺りの状況はアール・スワガーを描いた『悪徳の都』をご一読願いたい。
著者がこの作品を書いた当時、今日の『47人目の男』を書こう、その時に太平洋の地獄硫黄島で何があったのかを記そう、などと思っていたであろうか?答えは否だと思う。
だが、本編で明かされる内容は極めて感動的ですらある。まるで著者はこの時のためにストーリー構想を寝かせて持っていたのではと思わせるほどのものだ。
先に父アール・スワガーが受けた“恩”を返す物語と述べたが、その返すべき相手の日本人矢野とその家族が惨殺されたことによってボブ・リー・スワガーは急遽“仇討ち”に向かうのである。
原題は「The 47th Samurai」であることから忠臣蔵の47士を想定してのこと。
吉良邸討ち入りを模して、都内東部に三菱財閥が所有する広大な日本庭園と別邸を現代の吉良邸として設定している。季節は12月、雪までちらつかせる念の入れようだ。
ただし、吉良と想定する相手が日本の右翼の黒幕でありポルノ業界のドンという設定はちといただけない。
ボブは陸自の習志野空挺部隊の有志、更に在日CIAのキャリア・ウーマンの助力を得ながら自ら47人目のサムライとしてこの“仇討ち”を遂行するわけだ。

この作品を映画化した場合は間違いなく『キルビル』のタッチと同じになるのではないだろうか!?
女の子の恐怖の幼児体験(両親がヤクザに惨殺される)、雪降る夜のチャンバラ決闘、日本刀への異常な執着心などなど。
ということはハンター氏はタランティーノ監督の『キルビル』の影響を大いに受けたのであろうか、あるいは米国のサムライ・オタクが考えることは似通うということであろうか。

日本人読者からするといわゆる“つっこみどころ”をあげれば枚挙にいとまがないであろう。先にも述べたように、著者ハンター氏は強引に“チャンバラ小説”を書きたかったわけであるから種々の齟齬を気にしていたら本編は成り立たないのである。
単純かつ素直にボブ・リー・スワガーのサムライぶりを楽しめば良い。終わりは“お約束”の通りになるのであるが、もし将来ハンター氏が元気であり続けたらスワガー・サーガは「彼女」に受け継がれるかも知れない。

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