min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

カオス

2008-04-21 16:37:25 | 「ヤ行」の作家
梁石日著『カオス』幻冬舎文庫 2008.4.10初版 648円+tax

オススメ度★★☆☆☆

新宿歌舞伎町で何やら怪しげな商売でそこそこ稼いでいる二人の在日朝鮮人、ガクとテツ。
本名は李学英と金鉄治といい、作中で二人とも「民族学校」時代の事が記されているので「北」の在日らしい。
知り合いの台湾系華僑から儲け話をもちかけられるのだが、どうもこれがきな臭い。背後に大陸の蛇頭がいて麻薬がからんでいるらしい。
ひょんな成り行きで台湾人から歌舞伎町の一流中華レストランを格安(と言っても5億!どこから二人は稼いだのか?)に譲り受けるのだが、麻薬が関係して蛇頭に狙われる。
この中華レストランとは別にガクの企画で新大久保に高級ナイトクラブを開こうとするのだが、果たして両方の経営はうまくゆくのか?
というのも、このナイトクラブのママにテツの愛人タマゴ(美貌のニューハーフ、タマゴは渾名)を起用しようとするのだが、このタマゴが一筋縄ではいかない女(男?)でガクとテツを振り回す。
更にガクは他のクラブのジャズシンガーに惚れ込み、自分のお店のシンガーに引き抜こうとするのだが彼女には紐のような男がいる。
金がらみ、女がらみでガムシャラに突き進む二人の前に、いよいよマフィアの影らしきものがちらつく。

新宿歌舞伎町を舞台にした在日朝鮮人(同じく二人の民族学校出)のハチャメチャナな生き様を描いた作品に同著者の『夜の河を渡れ』があったことを思い出した。
ストーリーはかなり忘れてしまったのだが、時代は90年頃だったと思う。
当時の歌舞伎町は黒社会の勢力が群雄割拠しており、より危険な臭いが充満していたのではなかろうか。
ふたりの商売は相当際どいやり口なのだが周囲の巨悪に比べるとその稚拙さが故に「青春の葛藤」と「青春の蹉跌」を描いた何やら「青春もの」に写るのだから不思議だ。

今回の二人はもう一段階進んだような状況にあり、とても「青春もの」といった代物ではない。新宿歌舞伎町の熱気と狂気を双方とも描いているが、やはり読後は虚無感しか残らない。