min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

葬列

2008-04-08 08:41:41 | 「ア行」の作家
小川勝己著『葬列』角川書店 H12.5.10初版 

オススメ度★★★★☆

かってマルチ商法で明日美を誘ったしのぶは、今度はなんと銀行強盗をやろうとしつこく明日美につきまとう。明日美は心底しのぶを忌み嫌ったのであるが、明日美とて喉から手が出るほどカネが欲しい状況下にあった。
そんな中年女性二人がある日銀行で挙動不審な若い女と出会う。その名を渚という悲惨な過去を持つ孤独な女であった。
一方、中学の先輩からヤクザ組織に半ば強引に勧誘され構成員になったものの、何時までも使い走りをさせられる気弱な史朗。女房にも逃げられ幼い女の子を育てながらのヤクザ稼業で浮かばれない。浮かばれないどころか、突然ヒットマンを命ぜられ絶体絶命の窮地に立たされることに。
そんな四人がひょんなことから出合い、そしてつるんで計画したのは街金の金庫を襲撃し強奪することであった。更には史朗の属するヤクザ組織の大金庫をも狙うに至る。
冴えない中年女性二人に若い女の子、そして気弱なヤクザにそんな大胆な犯罪が出来るのか?
物語は急転直下、驚天動地の展開を見せ始めるのだが・・・

この小川勝己という作家は始めての作家であるが、一種独特なテンポと雰囲気を持ったクライム・ノベルの世界を展開してくれる。
登場人物のキャラが突然変異の如く急変する下りはちょっと突っ込みたくなるところがあるのだが、疾走するストーリーの中で何となく納得させられそうになりながら驚愕のエンディングを迎える。面白さはダントツだが、恐らくこの作家に対する読者の反応は見事に二極分解するだろう。僕としてはけっして嫌いではない。