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min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

池上 永一著『テンペスト(上・下)』

2009-04-22 10:44:15 | 時代小説
池上 永一著『テンペスト(上・下)』 角川書店 2008.8.31第1刷 各1,600円+tax

オススメ度★★☆☆☆

琉球王国の末期を舞台に、滅び行く清国と幕末の薩摩藩の二重支配の中で何とか生き延びようとする王朝。その真っ只中に飛び込んでいく一人の美少女。
初代尚氏国王の末裔であることを隠し、更に女性であることをも隠して超難関な菅史登用試験を突破。正統王族の復権を望む父親の意思により、琉球王国の政権中枢に入り込んだ孫寧温の、波乱万丈の生き様を描く大河ドラマである。
この小説を読み始めて多くの読者が気がついたことと思うのだが、これは琉球版「蒼穹の昴」ではないか!?と。
あるいは、僕は仔細はよく判らないのだが、男装の麗人が、あるいは女装の美少年がふんだんに登場する「ベルサイユの薔薇」琉球版ではないか?
はたまた、この物語は宝塚歌劇団の演目にふさわしいのでは!?などなど余計なことをつい考え出してしまう内容なのだ。

ストーリーの詳細紹介は割愛するとして、この作品は恐らく賛否両論が極端に分かれるものと思われる。
物語を構成する上で、普通は“あり得ない!”と思われる設定がいくつか出てくる。例えば代表的な例として、主人公の少女が女性と男性の一人二役をこなす、という点。
これは作者がどんなにヘリクツをこねても無理があり、読者を納得させるものではない。
この小説のコンセプトがどこにあるのか知る上で、重要な手掛かりとなるのでは?と思われることがある。それは表紙の「みかえし部分」にあった。
僕なんか表紙のみかえし部分に描かれた“画”なるものを見つけた時に、口をあんぐりと空けてしまったのだが、どうもこりゃいつもの読書とは勝手が違うぞい!とちょっと引いてしまったことを正直に申し上げる。

ま、骨太な歴史小説を期待するむきにははなはだ戸惑う展開となろうが、世にも珍しい琉球王国を舞台にした絢爛豪華な御伽噺?を単純に楽しむというのであれば、それはそれ、楽しいではござらんか。

和田 竜著『のぼうの城』

2009-04-13 07:00:48 | 時代小説
和田 竜著『のぼうの城』 小学館 2007.12.3第1刷1,500円+tax

オススメ度★★★☆☆

この本を札幌図書館に予約したのが昨年8月の下旬であった。あれから約7ヶ月半ぶりにやっと自分の番になり読むことが出来た。これほど長きに渡り待たねばならないほど本編は世間で人気があるらしい。

一読してみて確かに時代小説としては風変わりというか、ある種斬新な嗜好で書かれていると思われるし、読んでいて楽しい作品である。
天下人、秀吉の懐刀である石田三成率いる2万強の軍勢を向うに回し、その10分の一にも満たない軍勢で忍城を守る坂東武者の戦いの様は胸のすく一面がある。
この忍城が実在の城であったとは意外であるが、城代の“のぼう様”こと成田長親を初め登場する家臣の尋常ならざるキャラを見せ付けられると、一体どこまで史実に忠実に描かれているのであろうか、いやいや、こんなキャラが揃いも揃っていた訳が無いと、途中で突っ込みを入れながら読んだものだ。
のぼう様が本当のところバカなのか利口なのか自分には最後の最後まで判断がつかなかった・・・・

これほどまでに平成の今にヒットした要因とは一体何であろうか?と最後までそんなことを考えながら読み終えた。


乾 浩著『北夷の海』

2009-04-04 10:34:21 | 時代小説
乾 浩著『北夷の海』 新人物往来社 2002.1.31第1刷1,900円+tax

オススメ度★★★☆☆

なかなかマニアックな内容の本だ。北海道がまだ蝦夷地と呼ばれた時代の、北海道そのものではなく更に北に位置する樺太の探検と、そして東に位置する択捉島の探検を扱った書物なのだから。
本書は次の三篇から構成されている。

1. 北夷の海
2. 東韃靼への海路
3. 遥かなる氷雪の島

1.2.にて樺太そして今のロシアと中国の国境、黒竜江の付近への探検が描かれ、3.にて択捉島への航路の開拓と島の探検が描かれている。
1.2.での主人公は歴史的にも有名な間宮林蔵と、いまひとりやはり実在した人物松田伝十郎で、3.の択捉探検は近藤重蔵と高田屋嘉兵衛が主人公だ。
全編を通じ一番印象に残ったのは間宮林蔵である。身分の低い武士(出自は百姓であった)で、幕府の命令とは言いながら、北方にかける情熱はなみなみならぬものが伺われ、特に探検行を通じたアイヌの人々との交情は大和民族としての誇りとも言える希少な人物であった。
間宮林蔵のアイヌ民族への理解、敬愛の情は本編ばかりではなく他の歴史作品でも重ね重ね取り上げられているが、もしこれが彼の本当の姿であったならば嬉しい限りである。
また、樺太西海岸を北に向け遡行するくだりの情景描写は過去ほとんど描かれたことがないだけに極めて興味深いものがあった。

作者、乾 浩氏は本書を上梓した当時は現役の教職につかれており、『北夷の海』で「第25回歴史文学賞」を受賞されたとあるが、どうも万人の耳目を集める賞ではないようで、世間に広く読まれる機会がないであろうことが想像され残念である。

佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙 Vol.4~Vol.14』

2009-02-23 12:59:15 | 時代小説
佐伯泰英著『居眠り磐音江戸双紙 Vol.4~Vol.14』双葉文庫 各648円+tax

オススメ度★★★★★

いつの間にやらシリーズの半分(現在28巻まで出ている)を読んでしまった。13巻目あたりで僕がTVドラマ化されたものを観だした内容にやっとダブり始めた。
14巻では幕府の日光社参のクライマックスを迎え、ここで一段落したのでこのシリーズの魅力について述べてみたい。
まず言いたいのは、このシリーズはナントまた欲深い構成になっているか!という点である。
この作品は主人公坂崎磐音という侍を中心とした“江戸人情もの”であり、“剣豪小説”でもあり、時に“捕り物帖”ともなり、更に“江戸経済小説”にもなったりする。
これは坂崎磐音という浪々の身でありながら、類稀な剣の腕前と抜群のキャラクターの良さのおかげで、貧乏長屋に棲みながらも住む世界がどんどん広がっていくせいである。
もう少し具体的に記すと、まず“江戸人情もの”であるが、住むところが深川の貧乏長屋で、そこの大家や住民を介し鰻の蒲焼屋で鰻割きの仕事にありついたり、江戸深川の市井の人々との交流がこと細やかに綴られ気持ちがほんわりと和らぐ。
“剣豪小説”となる理由は坂崎磐音がまだ旧藩の江戸在勤時代に神田の直心陰流の佐々木玲圓の道場に通い免許皆伝に近いものまで修行に励んだことと、その後旧藩の騒動に巻き込まれ実戦さながらの修羅場を潜り抜けるうちに稀代の剣客に育っていった。強くなればなるほど新たな強敵が磐音の前に現れるのだ。
“捕り物帖”とは、ひょんなことから磐音は南町奉行所の年番方与力笹塚孫市と知り合い、えらく気に入られ何度も江戸市中でおきる事件を解決してゆく。
このお役人のキャラがまた面白く他に類を見ない人物造形となっており楽しませてくれる。
さて最後の“江戸経済小説”であるが、これは長屋の大家の娘おこんが勤める江戸随一の両替商今津屋の用心棒をするうちに懇意になり、後にその才能をかわれ“後見”を請われることになる。
江戸の両替商を束ねる役の今津屋であるから、その経済活動も大きなもので、時に山本一力ばりの江戸時代の経済状況が反映された物語が進行することになる。
このように多様な構成、内容をもった作品世界で、主人公坂崎磐音を初めとして抜群に面白い個性を持った脇役陣が多数登場し、存分に活躍してくれる様は読者をけっして厭きさせない。
これからもこのシリーズに大いに期待する。


和田竜著『忍びの国』

2009-01-19 08:01:54 | 時代小説
和田竜著『忍びの国』新潮社 2008.5.30 1,500円+tax

オススメ度★★★★☆

昨年随分と話題になった『のぼうの城』を世間の風評は当てにならないとは思いつつも読もうと決心し、図書簡に予約を申し込んだのが昨年8月の末。
その時の予約者数が250人を越えていた。
「こりゃ、相当待たされるなぁ」と覚悟し、「その前にもう一作あるみたい」
と同時に予約したのが本書であった。これも作者の人気を反映してか先日まで実に半年弱待たされた。
まぁそんなわけで特に本作に期待をせずに読み始めたのだが、やはりなんか読みづらい。なんでだろ?とおもうのだが理由はわからない。単にこの作者の書き方になじまないせいだろうと思いつつ前半を読んだわけだが、理由がおぼろげに分かったのは半分ほど読んでからだ。
「こりゃ一体誰が主人公なんじゃ?」という単純な理由でくすぶって読んでいたのだが、徐々に“無門”という伊賀の下忍が主人公であることに気がついた時は物語が大きく動き出した。

本編の物語の主題は織田信長勢の伊賀征伐なのである。だが、信長自身が攻めたわけではなく、彼の次男坊信雄が大将として攻め入った。
実はこの伊賀征伐そのものが伊賀の謀略であった、という意外な側面を持つのであるがそのわけは是非本編を読んで知っていただきたい。
さて、主人公と思しき“無門”なのであるが、こいつがなかなか面白い。
恐らく伊賀忍者の最高峰の技を持ち、カネにめっぽう執着する。権力に対しては徹底的に反抗するのだが、西国で盗むように連れて来た女には頭があがらない、という情けない一面も持つ。
だが、一朝事が起きてからの無門はまるでハードボイルドのスターに変身する。
というか、この時代小説そのものが「時代小説」という名を借りたハードボイルド小説と言っても良い。丁々発止の謀略戦と大活劇がてんこ盛りなのだ。
『のぼうの城』が俄然楽しみになってきた。


山本一力著『かんじき飛脚』

2009-01-13 08:38:51 | 時代小説
山本一力著『かんじき飛脚』新潮文庫 2008.10.1 743円+tax

オススメ度★★★★☆

加賀百万石、前田家の江戸詰藩主に対し幕府の家老から内室同伴で宴に出るよう指示がなされた。これは極めて異例の招待であり、内室が病に臥せっているのを察知した上でこのことを理由に前田藩を意のままにしようという幕府の企みであろうことが考えられた。
同時期、同じ招待が土佐藩にもなされていることを知った前田藩江戸詰め用人は懇意にしている土佐藩の用」人に探りをいれたところ土佐藩も同じく江戸の内室が病に罹っていることを知る。
幕府によるあからさまな外様大名に対する牽制策であった。
唯一の解決策は加賀藩内で作られている秘中の秘である万能薬“密丸”を早急に取り寄せることであった。
ここで登場するのが加賀の“三度飛脚”である。この名の由来は月に3度加賀と江戸の間約145里(約570km)を夏場では5日、冬場で7日間で行き来することからきている。
“三度飛脚”は加賀藩国許と加賀藩江戸上屋敷を結ぶ公用文書や小包を専門に運ぶ特急便であり、夏場には加賀の氷室から“献上氷”を運ぶ任務が与えられている。
今回、加賀藩存亡にかかわる窮地を救うのは江戸班8名加賀班8名計16名の飛脚の足にかかっていた。
ただでさえ難儀を極める道中は折悪しくも厳冬期を向かえ、親知らず子知らずの大波や碓氷峠の大雪が彼らの行く手を阻もうとする。
一方この飛脚の運行を阻止すべく幕府のお庭番が暗躍し彼ら飛脚の内部に密通者を放ち(数年がかり)、そして直接阻止行動に出るべくお庭番の手練れの者たちが放たれた。
果たして三度飛脚たちは無事に特効薬“密丸”を江戸まで運ぶことができるのであろうか!というとてもスリリングでスピーディな物語が展開される。
特に最後のクライマックスである冬の山中の死闘は飛脚たち、暗殺者どもに更に猟師たちが加わり読むものを興奮させる。
本編は山本一力さんの作品系列(主に江戸人情を描く)とは趣を異にしているが、飛脚たちの“おとこ気”を描く一方、個々に登場する人物を丁寧に描くことによって単なる活劇に留まらず作品に厚みを増しており、さすが山本さん!とその手腕に感服した。

佐伯泰英著『陽炎ノ辻』(居眠り磐音 江戸双紙)

2008-12-11 17:22:42 | 時代小説
佐伯泰英著『陽炎ノ辻』(居眠り磐音 江戸双紙) 2008.8.30 第48刷 648円+tax

オススメ度★★★★☆+α

原作を読む前にNHKの時代劇として放送されているのを観て興味を抱いた作品である。ドラマのほうは先月11月に終わってしまったのだが、何しろ途中から観たものだから主人公坂崎磐音が何故浪人になってしまったかが分からない。
これはもう原作を読むしか方法はない、ということで本編第一作のほか3作目まで買って読み出した。いや、これがなかなか面白いではないか!
佐伯泰英という作家の存在は存じ上げていたもののこれが初めての作品。

まだ三作目までなので断言はできないものの、このシリーズは全編読む価値有りとみた。
国表(くにおもて)での惨劇の裏に隠された陰謀を暴くために、ひとりの青年剣士が歩む難関辛苦の道を、周囲の江戸深川の庶民の人情味あふれるエピソードを織り交ぜながら描く長編時代劇である。

何故に主人公坂崎磐音が故郷を離れ江戸深川の貧乏長屋に住まねばならなくなったかは以下の理由。ネタバレがあるのでご注意を!

★☆ネタバレ警報☆★





関前藩の坂崎磐音、河出慎之助そして小林琴平の3人は幼なじみであり揃って国表より江戸参勤に就いていた。
江戸で3人は関前藩の藩政と財政を立て直すために修学会という集まりを催し、新しい考えを導入しようと張り切って帰国の途に着いた。だが、小林琴平の妹、舞(河出慎之助に嫁入り)の不義騒動で一気にその目論見は瓦解してしまった。
妻の舞を錯乱して殺してしまった河出慎之助を、今度は小林琴平が慎之助を討ち取り更に妹の不義の噂を流した山尻頼貞をも惨殺した。
そんな小林琴平を討ち取れという藩からの“上意討ち”を命じられた坂崎磐音は小林琴平と対峙せねばならなくなった。
壮絶な斬り合いの後小林琴平を討ち取った磐音は失意と傷心を抱いたまま国表を出て江戸へ向かった。
江戸に出た磐音は持ち金を使い果たした後、深川の「金兵衛長屋」というボロ長屋に住まい、用心棒からウナギ捌きまでどんな仕事にも分け隔て無く就き糊口をしのいでいた。
そんなとき、江戸時代同じ関前藩で勘定方を勤めていた上野伊織に再会し、磐音たちが遭遇した国表の事件には実は裏で糸を引く黒幕がいたのではないか?と伊織に示唆される。(この辺りまで来ると2,3巻の内容になってしまうが)
その黒幕は誰かを突き止めるため磐音は静かなる闘志を燃やすのであった。


宇江佐真理著『我、言挙げす』

2008-10-04 08:33:40 | 時代小説
宇江佐真理著『我、言挙げす』文藝春秋 2008.7.10一刷 1,524円+tax

オススメ度★★★☆☆

御馴染の「髪結い伊三次捕物余話」シリーズの最新刊である。
本編は
・粉雪
・委細かまわず
・明烏(あけがらす)
・黒い振袖
・雨後の月
・我、言挙げす
の六編からなる。
このうち、「粉雪」「明烏」「雨後の月」が伊三次とお文を軸とした物語であり残りの3編はいずれも今は見習いから“番方若同心”となった不破の長男、龍之進の物語となっている。
この不破龍之進はけっこう気まぐれな性癖を持つ一方、妙に純真で生真面目な
性格の持ち主である。私はこの若者が嫌いというわけではないがどうも感情移入できない。
したがって前作の感想でも書いたがこの若者が本シリーズを乗っ取るかたちで頻繁に登場するのは面白くない。
もっともっと伊三次とお文を、そして不破やその他の取り巻き連中を描いて欲しいのだ。
これは時空を越えた、例えれば架空ではあるが親戚の動向を知りたい“親族の情”みたいな思いを持つにいたった読者のささやかな願い事と言ってもよい。

ネタバレを記すわけにはいかないので詳細は書けないが「我、言挙げす」の最後の最後の場面は非常に気になる。
もし更にこのシリーズが続くのであれば、もう一度原点に戻って伊三次とお文の生き様を思う存分書いて欲しいものだ、宇江佐真理さん!

死地―南稜七ツ家秘録

2008-06-30 16:38:24 | 時代小説
長谷川卓著『死地―南稜七ツ家秘録』ハルキ文庫 2002.9.18 第一刷 760円+tax

オススメ度★★★★☆

前作から時は移ろい30年以上経ってしまった。二ツ(幼名喜久丸)は七ツ家の小頭には就かなかったものの、一族の重鎮として尊敬を集め皆からは“叔父貴”と呼ばれていた。
二ツは七ツ家の者2名とで柴田勝家の要請で秀吉軍に包囲された城から勝家の妻、お市の方を“落とす”べく任務についていた。
勝家の要請が時機を逸したため、結果、勝家とお市の方は自害して果てたのだが、二ツらももはや脱出できぬ状況下にあった。
そこで二ツが取った行動は「秀吉に会わせろ、儂は秀吉の叔父だ!」という意表をつくものであった。
実は二ツが二十歳の頃よく遊びに行った里で秀吉が幼少の頃の日吉と何度も会っていたのだ。日吉もまた二ツのことを“叔父貴”と呼んで慕っていた。
そんな因縁で二ツはその場は命を取られず逃してもらったのであるが、秀吉は「こんど戦場で見舞うことがあれば命は保証しない」と言いはなったのであった。

やがて秀吉は北条家を攻略しようと画策した。それを察知した北条家に仕える風魔一族は秀吉暗殺を決意し、精鋭の忍者部隊を大阪城に送り込んだ。
秀吉の周辺を警護していたのは“錣一族”という飛騨の森の民・忍者集団であった。
だが風魔の精鋭部隊は錣一族によって返り討ちにあい、風魔の頭領は七ツ家に助力を頼んだのであった。ここに七ツ家と錣一族による死闘の火蓋が切って落とされた。

一方、錣一族には正体不明の老婆がおり、彼女は毒草に造詣が深く恐るべき毒を製造したのであった。やがてこの毒による攻撃が七ツ家に向けられることを二ツらは知る由もなかった。
本編では“錣一族”という謎の忍者部隊との戦いが大いなる見せ場となるが、一方秀吉の出自の謎解きにも関心が寄せられる。
“山の民”VS“森の民”という通常の忍者同士の戦いぶりとはやや違った戦いぶりはなかなか面白く、「戦国ジェットコースター・ノベル」といっても良いスピード感溢れる時代小説となっている。

血路―南稜七ツ家秘録

2008-06-24 19:01:26 | 時代小説
長谷川卓著『血路―南稜七ツ家秘録』ハルキ文庫 2005.4.18 発行 780円+tax

オススメ度★★★★☆+α

武田晴信(後の信玄)が諏訪を攻略するためには途中の要害にある芦田満輝が持つ龍神岳城がどうしても邪魔であった。
その龍神岳城の芦田一族内で謀反が起きた。芦田満輝の弟が兄の住む館を包囲し、満輝を始め妻子をも皆殺しにしようとしたのだ。襲撃からからくも逃れることが出来たのは満輝の長男、喜久丸と傷を負った従者ただ二人であった。やがて二人も追っ手に追いつかれ絶体絶命になったところを救ったのは山の民(南稜七ツ家という集団)のひとり市蔵であった。

やがて龍神岳城を手に入れようとする甲斐の武田晴信と喜久丸の仇討ちを手助けしようとする「七ツ家」の間で火花が散らされることになる。
武田晴信には「かまきり」と称する強力な忍者集団がいるのだが、この「かまきり」と「七ツ家」との激闘がこの小説の売りである。

あとがきにも書かれているのであるが、この「七ツ家」とはどうも山窩(サンカ)の流れをくむ山の民の集団で、戦国の世を渡り歩くうちに乞われれば「落とし」(落城寸前の城から城主の妻子を逃す)や物資の密かな運び入れなどを請け負う生業についていた集団であった。
もちろん歴史上そのような集団は存在せず作者の創造した集団ではあるのだが、自由な流浪の民として、誰とも主従関係をもたない独立した集団として極めて特異ではあるが魅力的な集団として描かれている。
武田方の「かまきり」の中にも「七ツ家」の中にも異能を持つ手練れがおり、彼らの織りなす戦いの様はつい山田風太郎の忍法を想起させるが、あそこまで荒唐無稽ではない。

この作家は始めての作家であるが、多少、小説としては荒削りな部分があるものの、戦国時代モノをこのような角度から切り取る手法、発想にはかなり惹かれるものを感じた。
この小説は上記の助けられた喜久丸のある意味成長譚でもあり、つづく「七ツ家」シリーズ第2弾『死地』においても更なる活躍をするようなので是非次作も読んでみたい。