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min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

酔っ払いは二度ベルを鳴らす

2006-07-04 07:21:06 | ノンフィクション
東直己著『酔っ払いは二度ベルを鳴らす』光文社文庫 2005.6.20

本書は既に刊行された「すすきのバトルロイヤル」と「ススキノハードボイルドナイト」から特に“酔っ払い”にまつわる楽しくも哀しいエピソードを抜粋した作品である。

酒飲みであれば誰しも本書で語られるいくつかの酔っ払いの失態について思い当たるふしがあるだろう。巷でよく「酒は飲んでも飲まれるな」というがどうしてもこの教訓から逸脱してしまう。
前述の2作は既に読んだことがあるのだがこうして数々の“酔っ払い”たちの奇行、失態、を改めて読むとまた笑えてくる。笑ったあとにちょっぴり自省の念にかられる絶妙な東氏の筆力に感心するとともに彼の人間観察眼とセンスに喝采を送りたくなる。

だから山谷はやめられねぇ

2006-05-27 18:00:42 | ノンフィクション
塚田 努 (著)『だから山谷はやめられねぇ』―「僕」が日雇い労働者だった180日
幻冬舎・単行本 (2005/12) ¥1,470(税込)

著者は今時の多くの若者によく見られる何を学びたいか分からないままに入学した大学生で、気がつくと周囲の同級生は就職活動に忙しい。
何を学びたいのか分からないのと同様に何のために働くのかも分からない、結局全て分からないまま就職の道を選ばずに大学院へ進んだ著者。

そこで、かってボランティアとして山谷のドヤ街で仕事にあぶれた労務者に“炊き出し”の配給をしたことを思い出し、そこへボランティアではなく労務者の当事者として入ってみたい、山谷のドヤ街に住み同じ労務者の目線に立てば「働く事の意義」が分かるかも知れない、と彼は考えたわけだ。
大学院生という身分を隠し、いつでも自分のアパートに逃げ帰ることが可能な状況で、彼が望む「働くことの意義」が本当に分かるのだろうか?甘い考えでは?と当然思うのだが、実際に彼の行動そして考えは“甘々”であったわけだ。ま、このあたりはしょうがない、取りあえずこんな尋常ならざる世界に飛び込んだ勇気は認めよう。

さて、本書で面白いのは山谷のドヤや飯場の様子、それから“とび職”や普通の土工の作業服、靴、更には各現場で使われる道具・工具を著者の手書きによるイラストを載せている点。これは読者に確かに視覚的に訴えるものでありユニークだ。
もちろん山谷での仕事の手配の模様や建設業界での下請けの重層構造の説明など、こうした世界を全く知らない一般読者に対しては分かりやすい説明になっている。

尚、本の題名の通り『だから山谷はやめられねぇ』、と著者が思っているわけではなく、山谷に集る労務者の多くが陥る思考、行動のパターンとしてなかなか山谷から抜け出せないのを「乞食は3日したらやめられない」にもじってつけたもので、労務者が心底こんな境遇に満足しているわけではない。
山谷暮らしとホームレスの接点は限りなく近いのだ。

さてこの作者が180日間のドヤ、飯場暮らしで本当に「働く事の意義」を知ったのかどうかは読者の判断に委ねられるのであるが、少なくともなかなか外部からうかがい知れない世界をレポしたドキュメンタリーとしては面白いのではなかろうか。


ラティーノ・ラティーノ!

2006-04-30 17:54:15 | ノンフィクション
垣根涼介著『ラティーノ・ラティーノ!』幻冬舎文庫 2006/04/15 457+tax

2002年の後半から約2ヶ月に渡り、ブラジル及びコロンビアの二十数都市を取材したときの旅行記である。両国とも治安の悪さでは世界の中でも屈指であるのはご存知の通り。
だがそこに住む人々の貧しいながらも明るくしたたかな生き様を著者は垣間見る。
著者が現地を己の足で見て歩き、肌で感じたもの、また出合った人々、日系人から得た貴重な情報が後の『ワイルド・ソウル』と『ゆりかごで眠れ』に脈々と反映されているのが実感できる。両作品を読む上で興味深い取材旅行記である。
南米大陸の印象は僕がかって過ごしたアフリカの大地や人々とかなりの部分オーバーラップするものがあり、やはり一度訪れたい場所であることを痛感した次第。だがその機会は果たして残されているのだろうか?

国家の品格

2006-04-22 20:43:18 | ノンフィクション
藤原正彦著『国家の品格』新潮新書 2006/11/20 680+tax

今年の1月、書店でみかけた時にこの本の題名が気に入って手にした。山積みされた本のとなりには“ベストセラー”と大書された紹介文字が。
「ふ~ん」と思った。やはりこの時期みなさんが何となく感じていたのは、わが国並びにアメリカを筆頭とした「下品な国家」ばかり見せつけられてウンザリしていたようで、このような題名の本をみると注目してしまうのだろう。
さて、本書を読み出して西欧の論理、宗教更に文明が行き詰ってしまい、それに唯一対抗できるのはわが国固有の「武士道精神」である、と述べられたあたりで止まってしまった。なんとなく「武士道」かよ!ということで興味を失ってしまってしばらく放り投げておいた。
しかし我が読書仲間のディックさんが最近本書の感想を彼のブログで紹介されたのを機会に本日再び最初から読み直してみた。
先ず著者であるが有名な?数学者であることと、なんと僕がかってこよなく尊敬してやまなかった作家、故新田次郎氏の次男であることがわかってかなり興味が湧いてきた。
特に面白かった意見は数学の天才は必ず美しい環境の下に育ち、美的情緒を有する者に限られる、というくだりである。
僕は数学が大の苦手であったから天才的数学者と聞くとなにか奇人の類でことさらに美意識なんかと無関係なんだろな、などと勝手に思い込んでいたものだからちょっと驚いた。
著者は西欧型論理の無力を説き、対抗策」として日本文化の「情緒と形」をあげている。そして今後日本が国家としての品格を身に着けるためには武士道に示された慈愛、誠実、惻隠、名誉、卑怯を憎む心などが必要だと説く。
具体的にどうするか?という段になると首をかしげるのだが、これは何らかの形で学校教育の場で実現するしかないだろうが難しそうに思える。

あと特に興味深かったというか著者に激しく同意した箇所は真の国際人とは?について。著者自らが渡米した経験があり更に英国で教壇に立った経歴が示すように自らが国際人であるらしい。
彼が指摘するとおり英語をしゃべることが国際人ではけっしてなく、しっかりと自国の言葉を操り、自国の文化、歴史を理解しているものが国際的に尊敬される人物となり得る、と断言した点に同意する。
したがって昨今議論されている小学校からの英語教育なんぞ全く不要である、と断じる点も僕はまったく同じ考えである。
とまれ我が国も太平洋を隔てた“下品な国家”と袂を分かち、ちょっとは品格のある国家をつくりたいものだ。

標的は11人-モサド暗殺チームの記録-

2006-03-18 10:01:22 | ノンフィクション
ジョージ・ジョナス著『標的は11人-モサド暗殺チームの記録-』新潮文庫705+tax

先に公開された映画S.スピルバーグ監督の『ミュンヘン』の原作とのこと。いつものことながら映画を観る前に原作を読むという鉄則?にのっとり読んだ次第。
いやぁ、まさに「事実は小説より奇なり」の言葉通り(巻末でも著者が事実の信憑性について述べているがもし真実だとすれば)そんじょそこいらのスパイ小説が色褪せて思えるほど物語性に富んだ内容だ。
とは言いながらも思わずR.ラドラム著『暗殺者』を思い浮かべたが、内容はこちらのほうが上を行っているかも知れない。
先に述べたこの本の信憑性についてであるが、どんな国家であれもちろんイスラエルであれ公的に暗殺指令を出した、という事実は絶対に認めないであろうからこの本に描かれた事実が真実であるかどうかは永遠に謎であろう。
しかし「暗殺チーム」のリーダーが著者に語った内容の描写からして100%真実ではないにせよ相当の部分は真実であると信じられる。
1972年「黒い9月」が起こしたテロから既に30年以上経た今、イスラエルVSパレスチナという対立から今やイスラムVS西欧世界という対立構造までに深刻化した情勢にある。人類がいかにして「報復の連鎖」という頚木から逃れることができるかは永遠の課題か、と思われる状況が続いている。
本書は「報復の連鎖」の恐ろしさ、空しさをあますことなく読者に伝える秀作であることを最後に述べておきたい。

 

札幌刑務所4泊5日

2006-03-13 11:59:26 | ノンフィクション
東直己著『札幌刑務所4泊5日』光文社文庫 \495+tax

東氏がまだ作家として売り出す前、札幌でまだ売れないフリージャーナリストをしていた時代の作品らしい。将来ハードボイルド作家を目指す東氏はある時「ハードボイルド作家たるもの一度は刑務所の中を知ってみたい」と思い込み、原チャリで30kmのところを48kmで走り18kmのスピードオーバーの違反をする。
この反則金を払わず、督促も無視してなんとか念願のムショ入りを目論むのであるが敵(検察)もさるもの中々思い通りにはさせてくれない。この辺りの検察事務官との攻防?が一番面白く、実際に刑務所の中に入ってしまってからの内容は今時としては“陳腐”である。
無類のユーモア・センスだけから言うと『すすきのバトルロイヤル』を読んだほうがはるかに笑える。
長年未読の作品であるが故の義務感?を抱いての読書であった。

シャドウ・ダイバー

2005-11-25 08:51:30 | ノンフィクション
題名:「シャドウ・ダイバー」
副題:深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち

ロバート・カーソン著 早川書房 2005.6.30 初版 \2,200+tax


先ずレックダイバーとは深度70mを越えるダイビングを行う特殊なダイバーである。
珊瑚礁や熱帯魚を楽しむファン・ダイビングとは決定的に違う
全米で1000万人以上のスキューバ・ダイバーいるといわれる中、レックダイバーはせいぜい2,300人程度しかいない。
レックダイバーは常に“死”と背中合わせにいる。特に深海での窒素酔いの恐怖は凄まじい。血中に窒素が混入することによって時に幻覚症状をみることがあるという。その場合正常な判断を下すことが出来なくなりとんでもない事故を引き起こす可能性がある。ちょっとしたパニックに陥るともう直ぐ隣には“死”の世界が待っている。
自分はダイビングの経験は無いが筆者の卓越した描写によりレックダイビングの危険な世界が容易に想像でき、まるで彼らの脇に一緒に潜っているような気がするほどだ。

普通「沈船ダイビング」といえば大航海時代に存在した宝船の「トレジャー・ハンター」を想起させるが本編での沈船ダイブの対象はそうした金銀、財宝といった金目のものとはほど遠い、第二次世界大戦で沈没したUボートである。
本編に登場するチャタトンとコーラーはレックダイビング界でもその実力はトップクラスにあるふたりである。彼らは出来得る限りの私財と時間を費やしてUボートの謎を探るダイビングを行うほか米軍の資料室、図書館、関連雑誌などなど陸上での調査を徹底的かつ緻密に連綿と続ける。今や二人はこのUボートの謎解きをすることが生きる目的と化す。
そういう意味ではレックダイビングを通して二人の冒険者たちの壮絶な生き様を綴った物語ともいえ、並みの冒険小説・ミステリーを読むよりも臨場感、真実味にあふれ面白い。

最後に当該Uボートの謎解きを終え、ドイツに残された遺族を訪問して事実を伝えたい、とするコーラーの鎮魂への思いは読者に限りない感銘を与える。人種、時空を超えたふたりの冒険者たちの比類の無い「魂の旅」の物語ともいえる。

沖縄やぎ地獄

2005-10-17 10:55:31 | ノンフィクション
さとなお著 角川文庫 H17.9.20文庫化 \533+tax

「沖縄やぎ地獄」というタイトルだけみると、「おっ、あの臭いやぎ料理の本」か!と思うのだが、この「やぎ」編はほんのちょっとだけ紹介されている。
大半は沖縄料理全般に及ぶB級グルメ本と思えばよいのかも。作者がいわゆう「ヤマト」の読者に対し次の料理リストをみていくつ分かるか?と問うているのだが、みなさんはいかが?
・ゴーヤー・チャンプルー
・マーミナー・チャンプルー
・クーブ・イリチー
・ナーベラー・ンブシー
・フーチバ・ジューシー
・テビチ
・ラフテー
・ミミガー
・スクガラス
・イラブー汁
・アバサー汁
・イナムドゥチ
・スヌイ

これで半分以上食ったことがあればあなたは沖縄料理通?かも。沖縄はかって「琉球王国」を築いていたわけで当然中国との交易が盛んであった。よって食文化でも中国の影響はかなり濃い部分があり、この辺りは台湾と共通するところが多く個人的にはなんかしっくりしてくる。
作者は単なる沖縄フリークとしてではなく、食文化を通して沖縄のカルチャーをしっかり勉強、探求している姿が好ましい。

とまれ表題の地獄のような「山羊汁」、一度喰らってみたいものだ。


俺たちのマグロ

2005-07-23 13:54:35 | ノンフィクション
『俺たちのマグロ』<ノンフィクション>(斉藤健次)小学館 2005.7.1 \1400+tax

著者はマグロ船を降りた後、千葉県の船橋でマグロ料理の居酒屋を開いて20年になる。
この間マグロを仕入れる機会を通じマグロをめぐる種々の問題が見えてきて、「マグロが危ない、海が危ない!」という重大な危機感を抱くに至った。そこで著者斉藤氏は北の大間から駿河湾焼津、那智勝浦等の漁港を巡り現場の漁師や漁業関係者から話を聞く。そして懐かしき高知は室戸の安芸を訪ねる。
著者にとっては各地のマグロ漁の最前線基地を訪れ実態を把握するにつれ、マグロの将来が本当に危ういことを確信する辛い旅となってゆく。
最大の問題は「大型巻き網漁法」で小さなマグロの果てまで獲りつくす外国船、なかでも台湾船の跳梁であるという。
日本を始め国際資源管理機構は再三に渡り台湾に注意、警告を重ねてきたが国際ルールを無視し続けているという。だがこの違法な漁獲を買い取るのは日本の商社である。
こうした違法な魚を買わない、売らないという毅然たる態度を日本、日本人が持たない限り違法な操業を続ける外国船を駆逐することはできない。
根本的な問題は実は日本人のマグロに対する飽食こそが問題なのではなかろうかと著者は喝破する。問題意識を持たない日本人がマグロ資源を枯渇させるのでは、と危惧する。
そのほか知られざる世界規模で行われているマグロの養殖(正確には蓄養)の実態にも驚かされる。
なんでここまでマグロに固執するのだろう?日本人!

昨年暮れに斉藤健次氏の前作「まぐろ土佐船」を読んで次のような感想を記している。
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『まぐろ土佐船』<ノンフィクション>(斉藤健次)小学館文庫 オススメ度:★4

現代の「マグロ遠洋漁船」を“コック長”としての内なる目線から描いた感動的なドキュメンタリー。500トンに満たない小さな漁船は途中獲物を専用運搬船に移しかえ2年にも及ぶ連続操業を行なう。生死をかけた海の男達の濃密な人間関係と想像を絶する自然の猛威にただただ魅入られるように読んだ。ゆめゆめマグロを粗末に食せなくなる一篇。
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先住民アイヌ民族

2005-05-02 14:42:55 | ノンフィクション
別冊太陽
久しぶりに故郷北海道に戻ってみると「アイヌ」に再び目がいってしまう。東北の安東一族が南部藩」との抗争に破れた結果、北海道に逃れ「松前藩」をつくった。彼らは時の江戸幕府に北方の蝦夷地を治める認可を得たのだが、彼らは米の代わりに毛皮や魚介類・海藻などを年貢として収めた。
その影に幾多のアイヌの奴隷的労働があったか我々は知らない。驚くべきことにこうした和人が入ってくる以前、アイヌ民族は“交易の民”であったという。オホーツク海をぐるりと回り、間宮海峡を渡って、アムール川流域に住む山丹人を中継して中国とも交易していたという。それが和人に侵略されたのち、こうした交易が制限されたことによって「自然と共生した生活」を余儀なくされたという。この本の中で紹介されているアイヌの衣装のデザインの素晴らしさに改めて感動する。