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min-minの読書メモ

冒険小説を主体に読書してますがその他ジャンルでも読んだ本を紹介します。最近、気に入った映画やDVDの感想も載せてます。

国家と犯罪

2005-03-30 12:54:11 | ノンフィクション
船戸与一の世界の辺境を巡るルポルタージュ。私にとっては再読。古本屋でみかけ懐かしさを覚え購入した。かって豊浦志郎のペンネームで上梓した「硬派と宿命」、「叛アメリカ史」というルポルタージュに続く作品。
キューバ、メキシコ、中国、クルディスタンなどの世界の辺境を旅した船戸の眼に映ったものは?肌で感じたものは?一体なんであったのか。その答えは彼の作品郡の中に如実に見出すことができる。
船戸はつぶやく「世界の矛盾は就中、辺境にこそ集約されるのである。しかし、それは真正面からの照り返しとはならない。屈折に屈折を重ねた乱反射となる。複雑な光を交錯させるこの鏡には世界が隠しおおそうとしたいくつもの実像が蜃気楼のごとく映しだされるのだ」。
船戸は彼のエンターテイメント的作品世界で、我々にその隠された“国家による犯罪”と“国家に対する犯罪”を冷めた目線で語る現代の伝道師となる。
本書の冒頭の「序にかえて」の中で引用されるドイツの詩人H.M.エンツェンスベルガーの次の言葉が象徴的である。
『国家は暴力の独占体という性格を持つ。犯罪とは何か?それはその独占状態を食い破ろうとする存在である。』