sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて
冷たいシャンパンとチーズと生ハム、
届いた本と手紙に気持ちが緩む、
感じ。

映画:私の男

2014-07-06 | 映画


俳優はいいけど、結構タブーに挑んでるわりには表現がおとなしい。
もっと何かやったら~?とか思う自分は、いろいろと麻痺してる気もするけど。
つい数日前に、ごちゃごちゃと忙しい映画「渇き」を見たせいかもしれません。
監督は、去年見た、かなり好みの映画「夏の終わり」を撮った人。
ああ、そう言われればねっとり具合が同じ感じだなぁと思う。

ストーリーは何を書いてもネタバレになりそうで、
震災で家族を失ってひとり生き残った娘を
その娘の親戚だと言う、家族心中の生き残りの過去を持つ男がひきとる。
そして・・・
と、この辺くらいまでしか書けませんね。これ以上は
予告編見て想像して下さい。

浅野忠信はファンも多いし、こういうだらしなくやさぐれて
孤独で陰のある男の役は確かに似合ってるしうまいと思うけど
個人的に彼の顔がどうにも好きになれないのです、わたし。好みでない。
でも目の前にいたら、ちょっとくらっとするかもしれないなぁとは思う。
モテるのはわかる。白いシャツが異常に似合うよね。笑

でもなぁ、結構なタブーに挑んだ映画なのにこの男のダメさがユルいんだよね。
お酒飲まないし飲まれてないし暴力も振るわないし、何だか茫洋とした男。
途中で、そこにいたるまでにどんな葛藤があったのか、
なかったなら狂気がどこかにあるはずなのに、
最後の方まで狂気みたいなのが感じられない。
なんかぼーっとしてるんですよね。
わざと何かそういう演出意図があるのかもしれないけど。

娘役の二階堂ふみはすごくいい、彼女の心情はよく描かれてると思う。
でもまだ物足りない、見足りない感じ、もっとじっくり見たい気がする。
この子は子どもっぽいんですよね、顔も体型も。
もう一人の女性役の河井青葉と比べると、全体的に丸くて洗練されてない。
でも、生き生きとして河井青葉がすごく老けてみじめに見える。
血の問題だけでなく、若さの勝利の部分もあるかもなと思うと
父の恋人であった大人の女性に対して、勝ち誇った顔の娘役には
ちょっと嫌悪感を感じたりしました。えへへ。

娘が大人になって、合コンしたイケメン金持ち男子に送ってもらったシーン、
そこで、迎えに出たよれよれの父親の腕の中にすっぽりと収まるシーンは、
いいなぁと思ったりした。あの迷いのないすっぽり感。
あそこでふたりの、どんなに爛れても暗く沈んでも
離れられない関係がずっと続くことがわかります。

愛情にはいくつかの種類があることを認められずに、
何もかもごっちゃに求めあいすぎた人たちの絶望と悲劇、かな。
タブー破りに対して、生理的に受け入れられないと怒るレビューも多いけど
それはまあ映画だし、小説だし、案外なんとも思わないわたしです。
まあ愛というのは、どんなものより、何でもありの世界かなと思ったりもする。
でもふたりの身勝手さには少し呆れますよ。
自分たちの愛が他の人の生や愛より上位にある、というか
何をしても許される唯一大事なものであると思う傲慢さには
自分に酔うものの浅はかさがあります。
だから彼らの絶望も、浅い気がしてしまう。

しかし
この手のセンセーショナルな物語の、どこをどう驚けばいいのか、
なんかもう、わかんないんだよなぁ、
エグい映画見慣れてくると。(すれてます。笑)
もっと、こっちが油断してるとこを、はっと驚かしてほしい。
芸術でも文学でもなんでもいいから、驚きたいの。