●本来なら今日で緊急事態宣言が解除されるのですが、21日迄の2週間延長になりました。このことに変異株の広がりへの懸念もあり異論はありませんが、これまでの「飲食業の時短」と自粛の掛け声だけでは、いわゆる自粛慣れで「緊張感」が薄れ、大きな効果は期待できないようで心配です。今は、いつだれが感染しても不思議でない状況です。まさに明日は我が身です。日本は、感染者数から見て本来医療危機が起こるわけではないし、きっちと検査と調査(スクリーニング)をすれば緊急事態を避けられると思っていました。しかし、政府(政治と衛生行政)の後手後手対策と非化学判断で、国民が大きな犠牲を強いられているように感じています。
●失敗の本質という著書があります。1984年に刊行された「日本軍の組織的敗因を分析」した著書です。難解な本で一度や二度読んでもいまだ理解できていませんが、日本の伝統的な組織運営(特に行政)の脆弱者に対する忠告は的を射ています。「いかなる軍事上の作戦においても、そこには明確な戦略ないし作戦目的が存在しなければならない。目的のあいまいな作戦は、必ず失敗する(中略)。本来、明確な統一的目的なくして作戦はないはずである。ところが、日本軍では、こうしたありうべからざることがしばしば起こった」と述べています。
●コロナ対策の一年を見ると、失敗の本質そのものと言えます。今回のコロナパンデミックでは、「経済」と「感染抑制」は両立しないことは、すでにアメリカ等の経済学者が表明しています。それを無視したのはトランプとイギリス、ブラジル大統領。イギリスはいち早く気が付き方向転換しました。しかし、イギリスは変異株が新たに発症しています。そして、この3国はいまだ感染収束に向かっていません。安倍総理はいち早く体調不調を理由に敵前逃亡(と思う)、それを引き継いだ菅総理は科学的知見に疎く(と思う)、経済と抑制を比較検討することもできずに、いまだ、国民の自粛要請しかできていません。
●少なくとも、今回の緊急事態宣言の2週間で政府は、これまでできていなかった「医療体制の整備」の具体策と市中感染状況のモニタリングで、明快な戦略とオペレーション確立すると明言すれば、国民は安心してこの緊急事態を乗り越えるのではないでしょうか。科学的知見に疎い政治では、国民の安全は保証できない。主語を持たない総理の発言は、国民の信頼を得ることはない。「信無くば立たない」と多くの政治家が口にするが、言葉の真意と覚悟をしっかり吟味していただきたいものです。
●ワクチンの接種も、当初の予定が遅れ自治体の準備を混乱させています。個別接種を認めることはいいでしょうが、まちのクリニック等で一日何名可能であるのか。医療者が動員できないということのようですが、ここは休業補償で、例えば一日クリニックを一日休業していただき医師と看護師を動員、一日3クリニックぐらいを1チーム編成で集団接種を行えば、一日数百人ぐらいはできるのではないでしょうか。