Sightsong

自縄自縛日記

渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』

2016-08-07 11:23:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(Carco、2015年)を聴く。

Takeshi Shibuya 渋谷毅 (p)
Motohiko Ichino 市野元彦 (g)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)

いやこれは、何て魅力的な音楽なんだろう。渋谷さんも市野さんも、淡々と自分自身の音という味わいを追い求めて形にしているようでいて、他者が発するサウンドのなかに、ふわっと絶妙に入ってくる。

ライナーノートでは、池上比沙之さんが、故・浅川マキさんの言葉を紹介している。「渋谷さんはね、こちらが歌ってて、ああ、こんな音が欲しいなと思う音をドンピシャのタイミングで出してくれるのよ。それがめちゃめちゃに美しくて、こちらの次の展開を開いてくれるのね。気持ちいいなんてもんじゃないわよ」と。黒田京子さんも、以前に、なぜ歌手がみんな渋谷さんの歌伴を求め、なぜそれがあれほど良いのだろう、といったようなことをブログに書いていた記憶がある。これはたぶん渋谷毅オーケストラでも同じことであって、個性集団のサックスが吹いている横の渋谷さんのピアノやオルガンにいったん注意すると、そこから耳が剥がせなくなる。そしてこのトリオでも。

ほとんどは市野さんのオリジナルだが、面白いことに、リー・コニッツの「Subconscious-Lee」も演奏している。どうしても、高柳昌行『Cool Jojo』を思い出してしまうのだが、研ぎ澄まされたクールジャズの美学が花開いたそれとは違い、ここでの演奏はまるで異なる。相互に大きく開かれたスペースにおいて、驚くほど優しい相互干渉を聴くことができる。

渋谷さんのデュオのシリーズといいながら全面的に入っている外山明さんの、自由度が異様に高いドラムスもいい。背後から演奏者たちを煽るでもかき乱すでもなく、ひたすら皆の自遊空間を拡張する面白さである。故・古澤良治郎さんのあとを継いで渋谷毅オーケストラのドラマーをずっと務めているのも、強靭にして自由なる松風鉱一カルテットで叩いているのも、きっとそういうことである(もっとも、松風さん曰く、最初のギグ直後には「ああこのグループは解散だ」と思ったそうだが)。

●渋谷毅
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅@裏窓(2016年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
渋谷毅+川端民生『蝶々在中』
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
渋谷毅のソロピアノ2枚
見上げてごらん夜の星を
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年)

●市野元彦
rabbitoo@フクモリ(2016年)
rabbitoo『the torch』(2015年)

●外山明
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)


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