「恋する日本語」小山薫堂著より。
いったいどんな大冒険だったのか気になるところだが、「昨日、久しぶりに髪を切った」ということだった。たったそれだけでもかなりの本人には冒険だったのだろう。
だから当然、彼は気づいてくれるはずと思っていたのだ。でも、まったくその様子はなかった。それらしいサインとして髪を触っても気づかない。
しかも、「寝癖なら、心配ないよ」とまでいったのだ。彼女はかなりガッカリしている様子だ。まあ、こんなことはしばしばだろう。
人は自分が気にしているほど、しっかりと観察しているわけではない。一番気にしているのは自分だけだったりすることがほとんどだろうな。いいことも悪いことも。
彼女は心の中で「さて、今日は何をご馳走してもらおう・・・」と思っていた。ここでのタイトルにあった日本語は「一曲」と書いて「ひとひねり」と読ませている。意味は「ちょっとすねること」だった。