かつて西尾の町の中心街に大正期に建てられた井桁屋百貨店がありました。
西尾では唯一の本格的な百貨店建築で、外観はルネサンス様式を基調とし、地上3階、地下1階の鉄筋コンクリート造、屋上には高さ5mの塔屋もありました。
玄関の両脇にはショーウインドを設置、1階~3階は陳列場(売場)、3階には展望レストランと児童室、屋上には催事場があり、小規模ながら百貨店建築としての機能を備えていました。
特筆すべきは屋上の催事場の周囲に庭園が設けられたことで、当時地方の百貨店としては流行の最先端を行くモダンな屋上庭園でした。
2005年10月幸いにもに西尾市を訪れる機会があり、取り壊し前の最後の姿をこの目で見てカメラに収めることができました。
建物は長年使われていない様子で老朽化が進み、外壁のモルタル崩落防止用のネットに覆われた姿は、大正生まれの老建築の最後の姿といった風情で、これでまた一つ西尾の近代の街角の原風景が消えてしまうと思うと残念でたまりませんでした。
かつては多くの老若男女でにぎわった大正生まれの西尾唯一の百貨店も 、道路の拡張工事に伴い2006年3月完全に解体撤去され、大正モダンな百貨店と屋上庭園は姿を消しました。
◆井桁屋百貨店/愛知県西尾市幸町19
竣工:大正13年(1924)
構造:RC造3階建、地下1階
撮影:2005/10/09
※2006年取り壊し
大正モダンの夢のあと~ 塔屋の周りには屋上庭園の名残の草木が顔をのぞかせ、廃墟のような雰囲気が漂う
大正時代から80年以上親しまれてきた井桁屋百貨店のある風景
現在百貨店の跡地は「井桁屋公園」として整備され、かろうじてその名前だけが残されている
私も最近町を歩いていると、こういう建築物に足を止めるようになりました。
この建物は何かなぁって検索すると、貴解説記事を拝読することも多々あります。
西尾の旧城下町界隈は、まだまだ古い建物やレトロな個人商店が残っていて、町角散歩がたのしめます。
三河地区は歴史のある町が多く奥が深いので、なかなかディープな散策が楽しめます。