かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

武藤外科(桑名市)

2010-04-26 | 三重の近代建築

桑名建築散歩~その7

松岡産業からさらに四日市方面へ向かい国道258号の高架をくぐると左手に木造校舎のような建物があります。
昭和初期に建てられた古い病院の建物ですが、下見板はきれいに塗り直され、瓦も葺き替えられたばかりのようで、現在も非常に良い状態で保存されています。
現在は門柱の表札が取り外されているので病院施設としては使われていないようです。

■武藤外科/桑名市安永1877
 竣工:昭和初
 構造:木造2階
 撮影:2010/3/21



■建物の規模や構造から入院施設として使われていたと思われます



■国道1号線側の玄関



■以前の訪問時は壁のペンキも色あせた状態でした。(撮影:2006/11/3)


 


松岡産業(株)桑名支店

2010-04-25 | 三重の近代建築

桑名建築散歩~その6

石取会館から旧東海道を南へ向かいます。
国道1号線に並行して四日市方面へ続く旧東海道は、道幅も狭く古い町家などもちらほら残り、いかにも旧街道と言った風情が感じられます。

そんな街道筋に建つ松岡産業(株)名古屋支店は、昭和の初に建てられたちょっとモダンな建物で、白の外壁に茶のスクラッチタイルの腰壁、玄関のコーナーには丸みをつけ軒のラインには段差をつけ外観に変化を持たせています。

4年前に訪れた時は道を挟んで向かい側に松岡工業と言う工場があったのですが、すっかり取り壊され敷地全部が分譲住宅になっていて驚きました。松岡産業の建物も営業している様子がなく寂れた感じで、現在は使われていないのかもしれません。

■松岡産業(株)桑名支店/桑名市安永1145
 竣工:昭和初
 撮影:2010/3/21


■玄関周りのアールとスクラッチタイルが見所



■木立に隠れた昭和モダンな丸窓を発見。


 


石取会館(旧四日市銀行桑名支店)

2010-04-21 | 三重の近代建築

桑名の建築散歩~その5

九華公園から桑名駅方面に向かうと、旧東海道沿いの昔ながらの街並みに石取会館があります。
大正14年に四日市銀行桑名支店として建てられ、現在は石取祭車を展示し、桑名の石取祭を紹介する石取会館として再活用されています。
このあたりは大正から昭和にかけて、銀行や役場、警察署などが建ち並ぶ旧東海道筋の古い町並で、桑名の中心地として栄えました。
現在はその頃の面影を残す建物は石取会館だけになってしまいましたが、そのクラッシクな外観は、桑名の在りし日の街角を今に伝えています。


■石取会館(旧四日市銀行桑名支店)/桑名市京町16
 竣工:大正14年(1925)
 構造:RC造2階
 撮影:2010/3/21



■建物正面~角にアールをつけ2階分の縦長の窓を設ける



■建物裏側~いたってシンプルな外観



■外壁の柱と窓上部のデザインに簡略化された古典様式のデザインが見られる



 


楽翁公百年祭記念宝物館(桑名市)

2010-04-19 | 三重の近代建築

桑名建築散歩~その4

六華苑から揖斐・長良川沿いに下ると「七里の渡跡」、「九華公園」があります。
九華公園はかつて桑名城があった場所で、公園の北側にある鎮国守国神社の境内の片隅に楽翁公百年祭記念宝物館が建っています。
この建物は松平定信(楽翁)を顕彰する記念宝物館で、松平家の遺品を数千点にわたり収蔵、展示しています。

構造は鉄筋コンクリート造2階建ですが、1階は大きな玄関を設け石積風、2階の壁面にはコンクリートで柱を表現し、屋根は瓦葺きで正面に小さな切妻破風といった構成で、鉄筋コンクリート造に和風を加味した「近代和風」と呼ばれるスタイルです。

このスタイルは鉄筋コンクリート造の近代建築に、瓦屋根や破風を載せて和風の雰囲気を演出するもので、この地方では愛知県庁や名古屋市役所は近代和風の建物として有名です。
現在も身近なところでは、和食系の飲食店などでよく見かけられ、私の地元では「初寿司」と言うお寿司屋さんが、鉄筋のビルに大きな破風のある瓦屋根をのせています。

■楽翁公百年祭記念宝物館
 竣工:昭和9年(1934)
 設計:野田新作
 施工:伊藤庄太郎
 構造:RC造2階
 撮影:2010/3/21
※国登録有形文化財
  










 


 


蔵前祭車庫(桑名市)

2010-04-18 | 三重の近代建築

桑名建築散歩~その3

諸戸家の煉瓦蔵のすぐ西隣に大正時代に建てられた石取祭の祭車を保管する倉庫があります。
桑名市内には40数台の石取祭車があり、各町の石取庫に収められています。
蔵前祭車庫は、洋風意匠を採用した県内でも初期の鉄筋コンクリート造の貴重な建築で、国の登録有形文化財に指定されています。

■蔵前祭車庫/桑名市船場町7
 竣工:大正15年(1926)
 構造:鉄筋コンクリート造平屋
 撮影:2010.3.14
※国登録有形文化財

 




諸戸家煉瓦蔵(桑名市)

2010-04-17 | 三重の近代建築
桑名建築散歩~その2

六華苑の西側に諸戸家の煉瓦蔵が残っています。
三棟つながった大きな赤煉瓦の蔵は、当時の諸戸家の財力を物語っているようです。

■諸戸家煉瓦蔵/桑名市太一丸
 竣工:明治期
 構造:煉瓦造
 撮影:2010/3/21






■蔵の近くに残る煉瓦塀

旧諸戸清六邸(六華苑)

2010-04-14 | 三重の近代建築

桑名建築散歩~その1


今回から三重県桑名市の近代建築をご紹介します。
桑名といえば旧東海道桑名宿、七里の渡しで有名ですが、近代建築ファンならずとも見逃せないすごい西洋館があります。
かの有名な鹿鳴館を設計したジョサイア・コンドルの手による、旧諸戸清六の洋館が当時のまま現存しているのです。

山林王として名を馳せた二代目諸戸清六は自宅を建てる際、当時お雇い外国人の建築家で人気ナンバーワンのコンドルに依頼、明治末~大正にかけて流行した洋館の隣に和館が併設された和洋合体タイプの豪邸が誕生しました。
これだけの規模の洋館と和館、庭園がそろって当時のまま保存されている例は珍しく、コンドルが手がけた地方に残る唯一の作品として特筆に価します。

現在諸戸邸は桑名市に移管されて六華苑として整備され、西洋館、和館、日本庭園などが入園料300円で自由に見学できます。
今回は2回目の訪問でしたが、昨年公開された映画「人間失格」の舞台に使われた時のロケの様子が写真展示してあり、楽しめました。

■旧諸戸清六邸(六華苑)/桑名市大字桑名鷹場663-5
 竣工:大正2年(1913)
 設計:ジョサイア・コンドル/桜井小太郎
 施工:伊藤松次郎
 構造:木造2階
 
撮影:2010/3/21
国指定重要文化財

諸戸清六邸の詳細は、前回訪問時の様子をHPにアップしてあります。
                ↓
http://www.me.ccnw.ne.jp/machikin/morototei-1.html


■洋館、和館全景(芝生広場から望む)



■洋館玄関側と塔屋



■庭園側バルコニーとサンルーム



■塔屋の曲面ガラス



■日本庭園(池泉回遊式)



■日本庭園から洋館を望む(2006/9/24撮影)


 


名古屋銀行協会会館のかけら(名古屋市中区)

2010-04-11 | 失われた建物の記憶

丸の内建築散歩~おまけ

今回の丸の内建築ウォッチングの最後は名古屋銀行協会会館です。
とはいっても、名古屋銀行協会の建物は建て替えられたバリバリの現代建築で、残念ながら以前の建物は写真もありません。

そこで下の写真ですが、協会の玄関前に以前の建物のほんの一部分が保存されてオブジェと化していました。
まさしく建物のかけらと呼ぶにふさわしい物体ですが、何の説明パネルもないので一般の人には「なにこれ?」のトマソン状態で、ぽつねんと広い玄関にたたずんでおります。
せめて以前の建物の全景写真と、説明パネルを脇に設置して欲しいものです。

ちなみに同じような形で保存された旧大和生命ビルの装飾には、簡単ながら「旧大和生命ビル外壁材」のキャプションがつけられていました。


 

※建て替え前の旧銀行協会のデータ

■旧名古屋銀行協会会館/名古屋市中区丸の内2-4-24
 竣工:昭和6年(1931)
 設計:星野保則
 施工:大林組
 構造:RC造2階建
 


坂文種報徳会貸ビル(中区丸の内)

2010-04-10 | 名古屋の近代建築

丸の内建築散歩~その5

中北薬品から京町通を西に向かうと本町通の交差点のビルの谷間に、一目で戦前の建物と分かる超レトロなビルが奇跡的に残っています。
良い具合に古びた3階建てのこじんまりとしたビルで、1階が店舗、2階以上を住居として使用する洋風の長屋形式の店舗住宅です。ビルには4店舗入居可能で、各店舗に階段を設け、2階は台所や居間として使われているようです。
ファサードは2~3階の壁面をアーチ状にへこませてあるのが特徴で、当時流行した表現主義の影響がうかがえます。
軒先のロンバルジアバンドや装飾タイル、鋳鉄製の装飾など歴史様式のデザインも見られ、機能主義建築の中北薬品と比べると「古き良き昭和」を感じさせるデザインで、個人的にはこちらのほうが好みです。


■坂文種報徳会貸ビル/名古屋市中区丸の内3-1
 竣工:昭和6年(1931)
 設計:広瀬商会
 構造:RC造3階建
 撮影:2010/3/14





■向かって一番左の店舗は靴屋さんですが、あとは・・・不明です



■アーチの部分は凹、凸の部分が柱になってファサードを立体的に見せています


 
■さりげなくつけられた小さな装飾がオシャレです







中北薬品(株)京町支店(中区丸の内)

2010-04-07 | 名古屋の近代建築
丸の内建築散歩~その4

日本郵政グループ名古屋ビルの南、京町通と呉服町の交わる交差点に中北薬品の京町支店があります。
ちょっと見は現代のビルと見分けがつきませんが、縦長の窓や、水平線と垂直線で構成された外観は、近所の日本郵政名古屋ビルと同様、戦前に建てられた当時としては最新のモダニズム建築です。
それまでの様式建築を脱却し、装飾を一切排除したデザインは、やがて戦後の現代建築へとつながっていきます。

■中北薬品(株)京町支店/名古屋市中区丸の内3-11-9
 竣工:昭和11年(1936)
 設計:城戸武男
 構造:RC造地上3階、地下1階
 撮影:2010/3/14




■3階の連続窓や水平に伸びた庇、1~2階分の長さのスリット状の窓が特徴。
 現代建築には無い昭和初期のモダニズムの香りが漂います。

日本郵政グループ名古屋ビル(中区丸の内)

2010-04-01 | 名古屋の近代建築
丸の内建築散歩~その3

ビルディングと言えば誰もがまず四角い白い箱に四角い窓が並ぶ建物を想像します。
そんなイメージにぴったりのビルが、愛知県庁分室、伊勢久の西、外堀通に面して建っています。

日本郵政グループ名古屋ビルは、機能主義に徹し装飾を廃した外観で、モダニズム建築(インターナショナルスタイル)と呼ばれ、その無国籍な白い箱を思わせるまるで豆腐のような建築は、戦後から現在まで世界中を席巻します。
昭和30年代末頃から全国で建てられ団地や校舎も、まさに鉄筋コンクリートのトーフ建築で、無国籍な白い箱の中で人々は生活し、子どもたちは勉強したのでした。

しかし最近は、極端な機能合理主義への反動か、外観に歴史様式を取り入れたビルや、木造校舎の復権も見られるようになり、人間はやはり四角いコンクリートだけでは生きられない動物なのだとあらためて思う今日この頃です。

ともあれ日本郵政グループ名古屋ビルは、戦後のビルデザインの先駆けであり、一切の装飾を廃したシンプルな外観はデザインが行き着くひとつの方向を示してくれます。

■日本郵政グループ名古屋ビル/名古屋市中区丸の内3-2-5
 竣工:昭和13年(1938)
 設計:逓信省営繕課(中山広吉)
 構造:RC造6階
 撮影:2010/3/14





■後から取り付けた耐震補強用のトラスが何の違和感もなく一体化した外観
 
※戦後、空軍の病院として使われた接収期間に、米兵が描いた漫画風の壁画が今も地下倉庫に残っているそうです。