かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

愛知県庁本庁舎(中区三の丸)

2010-07-19 | 名古屋の近代建築

大津通建築散歩~その4

 大津通の近代建築もいよいよ最後の大物、愛知県庁と名古屋市役所の登場です。本来なら最初に紹介すべきですが、近代建築の東西両横綱と言うことでトリを飾ってもらいましょう。
 旧名古屋城内の三の丸の大津通に面して、北から名古屋市庁舎、愛知県庁舎が並んでいます。これだけの規模の近代建築が並ぶ姿は壮観で、名古屋の昭和はじめの官庁街の風景を、平成の現在も体験することができる貴重な空間です。

 名古屋市役所(昭和8年)と愛知県庁(昭和13年)が建てられた当時、日本では国威発揚のために日本の伝統様式を取り入れた「帝冠様式」と呼ばれる一連の建築が建てられました。
 これらの建物の特徴は、洋風のデザインの壁面の上に日本式の瓦屋根を載せるというかなり違和感のあるものでしたが、西欧の上に大日本帝国の冠を載せた「帝冠様式」は国粋主義的要素が強く反映され、軍部が台頭し始めた当時の時代にマッチしていました。
 この「国威発揚建築」は、愛知県庁、名古屋市役所をはじめ、神奈川県庁(S3)、京都市立美術館(S8)、九段会館(S9)など多数の公共建築に採用されました。

 戦後も65年を経過した平成の現在、帝冠様式の建物を見てそこに軍国主義の影を感じる人はまずいないでしょう。それどころかビルの上にお城の天守閣を載せたような愛知県庁は、「尾張名古屋は城でもつ」の名古屋にぴったりの、まさに大名古屋的県庁舎と言えるのではないでしょうか。


■愛知県庁舎/名古屋市中区三の丸3-1-2
 竣工:昭和13年(1938)
 設計:愛知県建築部営繕課
 施工:戸田組
 構造:RC造7階、地下1階
 撮影:2010/5/5
 ※国登録有形文化財



■全国でも珍しい帝冠式の市庁舎と県庁舎が並ぶ名古屋ならではの風景




■茶褐色の陶製タイルと白壁の上には立派な瓦屋根が載ります





■名古屋城の天守閣にはシャチですが、県庁の屋根の上には鴟尾(シビ)が鎮座します