かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

松阪地区医師会館/旧松阪水力電気(株)本社(三重県松阪市)

2015-05-23 | 失われた建物の記憶

松阪工高から城下町の風情を残す町並みをさらに南へ向かい、今回の松阪近代建築探訪の大トリ、白粉町にある松阪地区医師会館を訪れました。古い町並みにひときわ輝きを放つこの建物は、大正初期に松阪水力電気(株)の本社として建設されました。典型的な初期の鉄筋コンクリート建築で、外壁や外周の柱は鉄筋コンクリート、2階床や屋根は木造になっています。

角地に建つ建物はコーナーを丸くし、そこに出入り口を設けたいわゆる隅丸(すみまる)建築で、玄関両脇に2階分の高さの古典様式のオーダーを配してファサードを強調しています。外壁はコンクリートと煉瓦タイルのコントラストが絶妙で、玄関上部のパラペットや2階窓下の逆三角形や方形の装飾、玄関庇の持送りなど細部に大正期ならではのアールデコの影響が感じられます。

江戸の風情が残る古い城下町の片隅に残る大正のアールデコ建築は、歴史を重ねながら今なお西洋館特有の妖しいオーラを放ち、その圧倒的な存在感でわたしたちを魅了してくれます。


■建物正面~隅丸の玄関まわりの装飾が見どころ



■建物側面


■細部に宿るアールデコの装飾


       


◆松阪地区医師会館/旧松阪水力電気(株)本社(三重県松阪市白粉町363)
 竣工:大正2年(1913)頃
 構造:RC造2階建
 撮影:2015/05/03 



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2 Comments

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取り壊されました! (甘い生活since2013)
2016-05-31 22:51:18
昨日、久しぶりに見に行こうと思って、歩いていくと、もう解体作業は完了していて、白い塀の向こうは見えなかったけれど、グラウンドゼロになっていました。

松阪はそういう町なのかと、今さらながら驚いています。何の論議もしないで、つまらない建物を造るようです。

財産を捨てておいて、新しいも何もないもんですが、だれのための新しい建物なのやら、残念でなりません。
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近代建築の生き残る道は? (shortwood)
2016-06-01 16:18:08
甘い生活since2013さん、こんにちわ。

築100年以上の近代建築が、なんで今になって・・・
最近は近代建築保存活用の機運が高まってきたと思っていたので、その流れに逆行するかのような今回の取り壊しは非常に残念です。
市に寄付して文化財指定を受け、地域の拠点として再活用するとか、保存の道はなかったものでしょうか。

またひとつその町の歴史を語る風景が消えてしまいましたね・・・

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