かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

名古屋明治屋栄ビル年内解体へ

2019-02-23 | 名古屋の近代建築

朝日新聞名古屋版2月21日朝刊の記事によりますと、年内にも明治屋栄ビル(昭和13年/1938)が解体される見通しのようです。
2014年までは明治屋名古屋栄ストアーが営業していましたが、閉店後はテナントも入らずついに取り壊しが決まりました。
隣の丸善も今は無く(跡地は駐車場)、村野藤吾の丸栄百貨店の解体工事も進行中で、ここにきて昭和の広小路通の面影を今に伝える近代建築の取り壊しが続くのは寂しいかぎりです。

■営業中の明治屋名古屋栄ストアー(2010年3月14日撮影)


鶴舞公園の近代建築(8)~ヌンクヌスク(名古屋市昭和区)

2016-06-05 | 名古屋の近代建築

今回は平安通駅から鶴舞公園までの建築散歩でしたが、最後に最近リニューアルされた鶴間公園内にある明治の建物を紹介します。
緑化センターのすぐ東にある古い和風の建物ですが、外観が改装されちょっとお洒落な古民家風カフェに変身していました。
建物は明治42年築のまさに古民家なのですが、立派に生まれ変わりこの日もお客さんで一杯でした。

■古い建物がそのまま再利用され、幸せな余生を送る姿を見ると本当に嬉しくなります
 

◆nunc nusq(ヌンクヌスク)/昭和区鶴舞一丁目1-168(鶴舞公園内)
 竣工:明治42年(1909)
 構造:木造
 撮影:2016/05/01 

 


名古屋工業大学三協会館(名古屋市昭和区)

2016-06-01 | 名古屋の近代建築

名工大構内には昭和初期に建てられたRC造のモダニズム建築が現存しています。
正門を入ってすぐ右手奥にある三協会館で、訪れた日は建物の手前に工事用のフェンスが建てられ近寄れず、西側の道から建物の見える範囲での撮影になりました。
工事の内容は分かりませんが、三協会館の取り壊しでないことを祈るばかりです。


■建物西面
昭和初期のモダニズム建築ですが、ちょっと見はどこにでもある古いビルです。
縦長の窓が並ぶ外観は、ほとんど現代建築に近いデザイン。

◆名古屋工業大学三協会館/名古屋市昭和区御器所町
 竣工:昭和6年(1931)
 構造:RC造2階建
 撮影:2016/05/01 


今池中学周辺の洋風住宅(名古屋市千種区)

2016-05-18 | 名古屋の近代建築

今は亡き(訪問後すぐに取り壊しが判明)豊年町のタイガー商会の南、桜通~広小路通を超えた千種、今池界隈には戦前からの住宅地が拡がります。
古くからの住宅地ですが、さすがに戦前物件と思われる住宅は少なく、まして洋風住宅となるとなかなか希少です。
それでも今池中学周辺で、戦前の洋風住宅と思しき物件を数邸発見できました。


■今池中学の校門~築年は不明ですが、柱頭の幾何学デザインに昭和モダンが薫ります。



■今池中学のすぐ南側に残る一部洋風住宅~木造住宅の一部にモルタル塗りの洋風意匠が見受けられます。



■戦前に流行った玄関脇に一部洋室が付属した、洋風長屋形式の文化住宅。



■半切妻屋根の2連換気ガラリが良い味で、当時のままの木製窓枠が昭和の雰囲気を醸し出しています。
門柱のデザインも昭和モダン。



■屋根は大幅にリニューアルされていますが、ドイツ壁に木枠を見せるハーフティンバー風外観は戦前の洋風住宅の定番。
半切妻の大屋根の横に多角形のサンルームを設けた、かなり本格的な洋館住宅とお見受けいたしました。
大きく育ったソテツの木が当時の南洋趣味を物語り、もう文句なしの☆みっつ!です。

撮影:2016/05/01


徳川園周辺の洋風住宅(名古屋市東区)

2016-05-11 | 名古屋の近代建築

徳川園界隈は戦前からの古い住宅地で、数年前に歩いた時には古い洋風住宅がまだ残っていました。
今回確認できたのは3軒のみで、この辺りも住宅の建て替えや、新築マンションが目立つようになりました。


■戦前の住宅はたいてい高い塀と木立に囲まれ、なかなか全体を見ることができません
屋根や外壁、窓などは改修を受けていますが、随所に戦前の洋風建築ならではの意匠が残っています





撮影:2016/05/01


徳川美術館本館(名古屋市東区)

2016-05-09 | 名古屋の近代建築

徳川園西側の黒門を入るとすぐ正面に徳川美術館の玄関が見えます。白壁の近代和風の建物ですが、これは昭和62年(1987)に増築された部分で、南側には昭和10年(1935)開館当時の本館建物が現存しています。

本館の建物は現在も企画展示室(第7・8・9展示室)と南収蔵庫として使われており、外観は当時流行した帝冠様式のデザインです。徳川園の南側の道路から、その特徴的なデザインの旧玄関部分を見ることができます。


■現在の玄関がある徳川美術館新館~本館は向かって右手奥にあります


■徳川園の南側にある本館の門



■本館玄関





◆徳川美術館本館/名古屋市東区徳川町1017
 竣工:昭和10年(1935)
 設計: 吉本与志雄/案:佐野時平
 施工:竹中工務店
 構造:鉄骨鉄筋コンクリート造地上1階地下1階建
 撮影2016/05/01
 ※国登録有形文化財 


蓬左文庫旧書庫(名古屋市東区)

2016-05-07 | 名古屋の近代建築

徳川園は尾張藩二代藩主光友が隠居所として造った大曽根屋敷が起源で、昭和6年に十九代当主義親から邸宅と庭園の寄贈を受けた名古屋市が整備改修を行い、「徳川園」として公開しました。

徳川園の西にある黒門(国登録文化財)を入ると、右手に白く塗られた土蔵造りの建物があります。これは昭和58年まで蓬左文庫の書庫として使用されていた建物で、現在は移築されそのままエントランスホールに再利用されています。この旧書庫に続いて蓬左文庫の閲覧室と展示室があり、尾張徳川家の旧蔵書を中心に11万点に及ぶ和漢の古典の所蔵公開、また近世武家文化を紹介する展示も行っています。

入口が二つ並ぶ旧書庫の建物は、明治33年に完成した尾張徳川家名古屋大曽根邸内の9棟の土蔵のうちの2棟を、昭和10年に1棟に合体移築し再利用したものです。建物は伝統的な和風2階建の蔵造りですが、小屋組みは当時としては珍しい様式のキングポストトラスを採用した斬新な構造です。移築にあたり基礎や外壁は鉄筋コンクリートで補強されていますが、内部や軸組は当時の姿をそのままとどめています。


■徳川園の西側入口黒門(旧尾張徳川家大曽根別邸表門/明治32年築/国登録有形文化財)
門を入ると正面に徳川美術館、右手に蓬左文庫があります



■明治33年築の土蔵→書庫に改修(昭和10年)→エントランスホールに移築改修再利用(平成16年)
まさにリノベーションの先駆けであり、お手本といえるでしょう!それにしても残ってよかったですね




◆蓬左文庫旧書庫/名古屋市東区徳川町1001
 竣工:昭和10年(1935)~明治33年築の蔵を改修/平成16年(2004)移築改修
 設計:吉本与志雄
 構造:木造一部鉄筋コンクリート造2階建
 撮影2016/05/01
 ※国登録有形文化財
     


日本福音ルーテル復活教会(名古屋市東区)

2016-05-03 | 名古屋の近代建築

鈴蘭南座から名鉄瀬戸線森下駅のガード下を抜け徳川園へ。
徳川園のすぐ北には、戦後物件ながらヴォーリズ建築事務所が手がけた日本福音ルーテル復活教会があります。
小さな教会堂ですが、玄関部の尖頭と外壁にあしらわれた十字架型のガラス窓が目を引きます。
平成24年に登録有形文化財に指定されています。


■シンプルで明快な印象の外観は、年を重ねても色褪せることはありません



■白(モルタル)と茶(下見板)のツートンの外壁に赤のスレート屋根がのる外観は何とも愛らしい



■玄関部のグリーンの尖頭が赤い屋根に映えます


◆日本福音ルーテル復活教会/名古屋市東区徳川町2303
 竣工:昭和28年(1953)/昭和35年(1960)改修
 設計:ヴォーリズ建築事務所
 構造:木造平屋一部2階建
 撮影:2016/05/01
 ※国登録有形文化財


鈴蘭南座(名古屋市北区)

2016-05-01 | 名古屋の近代建築

今年に入って仕事が忙しく、なかなか休日に町歩きをする余力がありませんでした(そろそろトシかなあ~
そして気がつくと桜も散って、いつの間にか5月の連休に突入しているではありませんか。
これはいかんと、久しぶりに街歩きに出かけることにしました。

とりあえず足慣らしということで、地元犬山の羽黒駅から名鉄小牧線に乗り、終点の地下鉄名城線平安通駅で下車しました。
ここから徳川園を経由、鶴舞公園まで建築探訪をしながらの久しぶりの街歩きです。
まずは平安通駅から南へ、鈴蘭南座という昭和29年に移築された芝居小屋へ向かいました。


■閑静な住宅街に芝居小屋がポツンと建っています
大衆演劇、芝居小屋~昭和がにじみます・・・




◆鈴蘭南座/名古屋市北区大曽根1丁目15-3 
 竣工:不明
 移築:昭和29年(1954)
 構造:木造
 撮影:2016/05/01 

 


金時湯(名古屋市中村区)

2016-01-11 | 名古屋の近代建築

久しぶりに所用で名古屋へ出かけたついでにちょっと寄り道、新年最初の近代建築探訪となりました。
今回は時間の都合で名古屋駅すぐ西側の取りこぼし物件を中心に、1時間ほど周辺を散策しました。

まずは名駅の太閤口を出てビッグカメラの南側を通る駅西銀座商店街を西へ500mほどのところにある金時湯へ。
外観は白いタイルとトタン張りでそれほど昭和レトロな雰囲気はありませんが、名古屋では数少ない昭和3年築の戦前モノの銭湯です。
名古屋駅周辺には旧三越湯なども残っていますが、リニア新駅建設による周辺の再開発に伴い、これらの建物の行く末が案じられます。
 

■建物の後ろに煙突が顔を覗かせています




 

◆金時湯/名古屋市中村区竹橋町39-10
 竣工:昭和3年(1928)
 構造:木造2階建
 撮影:2016/01/10

 


鳴海の洋館(名古屋市緑区)

2015-11-15 | 名古屋の近代建築

今回の旧街道歩きで鳴海を訪れたついでに、2009年名鉄自動車学校(旧鳴海球場)訪問時に見つけた洋館住宅を再訪。
特に外観も変わりなく健在で、まずは一安心。
旧街道へ戻る途中新たな一部洋館住宅も見つけたので、今回は寄り道をしたかいがありました


◆名鉄自動車学校前の洋館/名古屋市緑区鳴海町白山
竣工:昭和5年頃(1930)
構造:木造2階建

■この周辺は名鉄が戦前に開発した住宅地で、なるみ荘と呼ばれました。
ファサードはドイツ壁に木骨の装飾を施し、半切妻屋根が左右非対称なのが面白いところ。





■同じ住宅地で偶然見つけた名鉄開発時の面影を残す一部洋館住宅。
 こちらは急勾配の切妻屋根にアールデコ風の窓割りが見どころ。





そら豆/旧三越湯(名古屋市中村区)

2015-05-04 | 名古屋の近代建築

名古屋駅の東側、名駅3丁目~那古野界隈は戦災を免れたため、木造2階~3階建の町屋や蔵造りの建物が残っていて、多くが飲食店などに改装され当時の姿をとどめています。そんな建物のひとつが、桜通のジュンク堂書店の角を北へ入り、名駅3丁目北の交差点東にある「そら豆」で、戦前の銭湯の外観(旧三越湯)を残したまま居酒屋として営業しています。

建物は昭和6年(1931)築の木造総2階建ですが、換気用の高窓の上に庇があるため軒が3重になり、ちょっと見は3階建です。外観は昔ながらの銭湯に良く見られる近代和風で、正面中央の入母屋造の立派な玄関(沓脱)と、西端に飛び出している洋風意匠の煙突の様な構造物(トイレ)が特徴的です。

昔ながらの銭湯の風情をそのまま残した外観や、銭湯特有の天井の高い広い空間は、まさに居酒屋にはうってつけ、これぞ近代建築再利用の最も幸せな形のひとつと言えるのではないでしょうか。
(なかなかの人気店なので、予約してからの来店がおすすめです。店舗情報はこちら→山海百味 そら豆


◆そら豆(旧三越湯)/名古屋市中村区名駅3
 竣工:昭和6年(1931)
 設計/施工:大工棟梁 繫野新七、鳶頭 井戸田重信
 構造:木造2階建、切妻造・桟瓦葺
 撮影:2015/04/26


■建物北側正面






■入母屋造の堂々たる玄関~腰のタイルがモダンで良い味です



■端のトイレはモルタル塗石張り風の目地切で、頂部に紋様を巡らす洋風意匠




 


そら豆のある界隈には戦前築と思しき町屋が点在しており、飲み屋などに改装されている建物が目につきます。
名駅の高層ビル群から徒歩5分の所に、こんな昭和の隠れ里的風景が・・・いつまでも残ってほしいなあ~
 









鶴舞公園の近代散歩(7)~鶴々亭(名古屋市昭和区)

2015-04-21 | 名古屋の近代建築

公園の西側木立が繁る一画に、木造平屋建の日本家屋が建っています。
この建物は天皇即位の大典を祝し、産業振興、文化の発展を願って、昭和3年9月に催された「御大典奉祝名古屋博覧会」の際、茶席の参考館として建てられたものです。
名古屋材木商組合によって木曽桧材の最高級品を以ってつくられ、同年10 月に名古屋市に寄附されました。
現在は一般の利用も可能で、この日もアニメなどのコスプレを行うコスプレーヤーの皆さんのが、撮影に興じていました。


■戦前の歴史的建造物とコスプレーヤーの取り合わせは、まさに時代を感じさせます。
鶴舞公園は和洋風の庭園と歴史的建造物が一か所に集まり、屋内外での撮影が可能なので、全国からコスプレーヤーが集まるメッカになっているそうです。






◆鶴々亭/名古屋市昭和区鶴舞1丁目
 竣工:昭和3年(1928)
 構造:木造平屋建・桟瓦葺
 撮影:2015/03/21


鶴舞公園の近代散歩(4)~名古屋市公会堂(名古屋市昭和区)

2015-04-15 | 名古屋の近代建築

噴水塔のすぐ北側、鶴舞公園の西北に名古屋市公会堂があります。
公会堂は昭和5年、昭和天皇の御成婚記念事業として建てられたものですが、大正~昭和にかけて大阪中之島公会堂(T7)や東京日比谷公会堂(S4)など、各地に大規模な公会堂が造られました。
3階までの吹き抜けの大ホールは2,700席、規模としては日比谷公会堂に肩を並べ、当時の名古屋市の意気込みがうかがえます。

建物全体を茶褐色のスクラッチタイルで覆い(1階部分は石張り)、玄関入口や最上階の窓にアーチを配した隅丸のデザインは、かたまり感のある彫塑的な当時流行の表現主義風です。
愛知県内では、現存する戦前の公会堂としては豊橋市公会堂(S7)がありますが、外観の印象は対照的です。
明るく軽やかな豊橋市公会堂に対し、名古屋市公会堂は重厚感あふれる落ち着いた雰囲気で、タイプの異なる二つの公会堂が残ったのは、近代建築ファンには嬉しいところです。

蛇足ながら名古屋市公会堂は、クラッシックからロックまで、数々の世界的アーティストの公演の舞台となりました。
ちなみに私も名古屋市公会堂へコンサートに行った思い出があります。「おくさまは18歳」でおなじみの岡崎友紀のコンサートだったのですが(友人が大ファンだった)、それが名古屋市公会堂では最初で最後のコンサートになりました。



■建物南側正面



■玄関廻りの造形は、昭和初期の近代建築特有の重厚感あふれたデザイン



■建築細部には昭和のモダニズムが宿る
     

       



■建物西側


    



■建物北側



■建物東側





■雪の日の公会堂(撮影:2008/02/10)



◆名古屋市公会堂/名古屋市昭和区鶴舞1丁目
 竣工:昭和5年(1930)
 設計:名古屋市建築課(建築顧問:武田五一、佐野利器、鈴木禎次)
 施工:大林組、清水組、大阪鉄工
 構造:SRC造地上4階、地下1階
 撮影:2015/03/21
 ※景観重要建築物等