かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

若葉のころ

2014-04-29 | ありふれた日常

 日曜日の昼下がり、お気に入りのジャズを聴きながら部屋でごろごろしていたら、急に散歩がしたくなった。そう言えば最近は自転車ばかりで、散歩はとんとご無沙汰。早速愛用のウォークマンをポケットに入れ、近所の川沿いの小道をのんびり1時間ほど歩く。

 風薫る季節とはよく言ったもので、目に染みる新緑と頬をなでる風が気持ちいい。冬の間がまんしていた若葉もうれしそうだ。久しぶりの散歩で心身ともにリフレッシュ。これからの季節ちょっと散歩にハマりそうである。散歩のおともに忘れちゃならないのがBGM。今日はなにを聴きながら歩こうかと考えるひと時が、これまた楽しい。


■1か月前は桜が満開だった堤防も今は新緑が鮮やか





■里山も緑が濃い



■なぜか水門のある風景が好きだ...



■気の向くままに歩いていると、思いもかけない風景に出会えるのが散歩の醍醐味



■そろそろ日が陰りだし、足は我が家へ向かう



散歩にはちょっと軽めのピアノ・トリオがいい~本日のおともはスティーブ・キューン

 


柱/オーダー(9)~近代化遺産編

2014-04-27 | まちかどの20世紀遺産

 4月26日「富岡製糸場と絹産業遺産群」がユネスコの世界文化遺産に登録される見通しになりました。国内では「石見銀山」に続く産業遺産ですが、明治期以降では初めての登録になります。これをきっかけに、各地に現存する明治以降の日本の近代化を象徴する産業遺産や近代化遺産が再評価され、保存活用される機運が高まれば、こんな嬉しいことはありません。

 日本の近代化の過程で欧米からの技術を導入し、各地に様々な施設が建設されましたが、上下水道や発電所施設などもそのひとつです。東海地方にも木曽三川に代表されるダムや水力発電所、上水道施設などの近代化遺産が現存していますが、その建物のデザインには当時主流だった歴史様式を採用したものが多く、ここでもオーダーは重要なモティーフとして大きな役割を果たしています。


■旧稲葉地配水塔/昭和12年(名古屋市中村区)
円形の配水塔の周囲には16本の円柱がそびえ、古代ギリシャの神殿を思わせる外観は、どこか神聖な雰囲気が漂う。



■鍋屋上野浄水場旧第1ポンプ所/大正3年(名古屋市千種区)
正面出入り口上部の窓の両脇にイオニア式の円柱を立て、窓廻りも古典様式をモティーフにしたデザインで固める。



■中部電力 井ノ面水力発電所/大正10年(岐阜県美濃市)
発電所の百葉箱にもちゃんとオーダーの上に三角ペディメント風の屋根をのせ、外観はミニギリシャ神殿風。
あと数年後の建設ならモダニズムの影響で、ただの四角いコンクリートの箱になるところでした。


柱/オーダー(8)~医院建築編

2014-04-21 | まちかどの20世紀遺産

 昭和戦前期までは医院などの医療機関も西洋建築が好んで建てられました。特にオーダーとペディメント(三角形の破風)で神殿風の外観にして正面玄関を強調するポーティコは、医院の玄関ポーチや車寄のデザインにうってつけだったようです。ドクターと言えば今でも社会的ステータスの高い職業のひとつですが、当時のお医者さんはそれこそ町を代表する知識人であり名士でした。もちろん医院の建物にもそれにふさわしい威厳と品格が求められたので、オーダーを中心としたクラッシクで格調の高い雰囲気の西洋建築は、医院にはまさにうってつけだったようです。


■新川中央病院(旧私立新川中央病院本館)/大正3年(愛知県碧南市)
玄関ポーチの入り口に、6本のトスカナ式オーダーと5本の角柱が、これでもかとばかりに所狭しと乱立しています。
しかしこれでは患者さんも、さぞかし出入りがしにくかったに違いありません...(特にメタボなおじさん要注意!)



■旧山田歯科医院/昭和元年(岐阜県多治見市)
建物外壁がリュニューアルされたこともあり外観はごく普通ですが、
玄関のオーダーとペディメントは当時のままで、当時の洋風建築らしい雰囲気を残しています。



■竹内産婦人科/昭和3年(愛知県刈谷市)
こちらも玄関ポーチの屋根にオーダーに支えられた三角ペディメントを載せ小神殿風にしています。
ただしオーダーは角柱になり、柱頭も簡単な幾何学模様に変わっています。
 
 

■旧久保田外科/昭和初期(岐阜県岐阜市)
見事なねじれ具合の柱にサニーレタスの様なアカンサスの葉をあしらい、ちょっとおいしそうなオーダーです。



柱/オーダー(7)~オフィスビル編

2014-04-19 | まちかどの20世紀遺産

 大正~昭和戦前期の小規模なオフィスビルにもオーダーが見られます。もちろん大手銀行のような見事なジャイアントオーダーが並ぶことはありませんが、オーダーも時代の流れに合わせ、幾何学的なモダンなデザインを取り込んで、まだまだファサードを飾る主役として健在です。


■西大須ビル/大正10年(名古屋市中区)
フルーティング(溝)付きオーダーをデザイン化したピラスター(付け柱)と円柱がファサードを飾る。



■服部記念館(旧服部工業株式会社事務所)/大正15年(愛知県岡崎市)
壁面の付け柱はオーダーをモティーフにしていますが、柱頭のデザインは幾何学的にあっさり仕上げています。



■国際資源活用協会(旧熊沢ビル)/大正3年(三重県四日市市)
オーダーは完全に壁と一体化した二次元的な装飾と化しています。


■屋上にある塔屋の出入り口の壁には、しっかり4本の円柱が埋め込まれています。
しかし石膏か粘土で作ったようなこのゆるい造形は、なかなか味わい深いものがあります。


■旧知多白木綿組合会館/大正15年(愛知県半田市)
2階分をぶち抜くかなり立派なオーダーですが、柱頭のデザインは花びらのようでかなり独創的。



■伊勢久株式会社/昭和5年(名古屋市中区)
スパニッシュ風というのでしょうか?コリント風の螺旋状オーダーが見どころです。
ところでこんな風なネジネジのお菓子、ありませんでしたっけ?



柱/オーダー(6)~学校建築編

2014-04-13 | まちかどの20世紀遺産

 昭和に入ると表現主義などのモダンデザインの影響で、歴史様式は徐々に衰退して行きます。昭和戦前期の建築は、アメリカンボザールで盛り上がる一部の銀行建築などの例外を除き、より直線的で平面的なデザインへ(モダニズム)と変わっていきます。どんどん古典的な装飾は姿を消して行きますが、その中でもオーダーのモティーフは本来の形を変えながら、かろうじて最後までその姿を残すことになります。


■愛知学院大学楠元学舎第1号館(旧愛知中学校本館)/昭和3年(名古屋市千種区)
オーダーは壁と一体化しより平面的になり、柱頭には簡略化したアカンサスがデザインされています



■東海学園大講堂/昭和6年(名古屋市東区)
正面玄関の上にはオーダーらしきものが並んでいますが、窓枠と一体化し柱頭飾りもシンプルです



■玄関の柱は寺社を思わせるどこか日本風?のデザイン



■南山学園ライネルス館(旧南山学園本館)/昭和7年(名古屋市昭和区)
玄関のオーダーはシリンダーを思わせるモダンなデザインで、歴史様式の終焉を物語っているようです





■愛知大学記念館(旧陸軍第15師団司令部)/明治41年(愛知県豊橋市)
薄切りにスライスされたオーダーと三角ペディメントの神殿セットを、下見板の外壁にくっつけたという感じです



■滋賀大学経済学部講堂(旧彦根商業学校講堂)/大正13年(滋賀県彦根市)
玄関脇の溝付きオーダーとその上の妻壁をペディメントに見立て、全体的にはルネサンス風のクラッシクな外観を演出



NHK朝ドラ「花子とアン」ロケ地in明治村~修和女学校/北里研究所本館

2014-04-09 | 明治村散歩

 明治村(愛知県犬山市)の近所に住む明治村大好きの近代建築ファンなので、映画やドラマに明治村の洋館が登場するとついつい気になってしまいます。以前にもこのブログでNHK朝ドラ「ごちそうさん」のロケで使われた明治村の洋館を紹介しましたが、4月から始まった「花子とアン」も同じ時代設定(明治末~昭和)なので、ひょっとしたらと思って見ていたら、主人公が編入する女学校として北里研究所本館が登場しました。ドラマを見ている皆さんにも建物の由来を知ってもらえたら、よりドラマが楽しめるのではと思い、今回も明治村の洋館が登場しだい紹介していきますのでどうぞお楽しみに!

 物語は「赤毛のアン」を日本に紹介した翻訳家 村岡花子をモデルにしたもので、山梨の貧しい農家に生まれた主人公安東はなが、東京の女学校で学んだ英語をきっかけに、欧米文学の翻訳家としての夢を実現させ、やがて「赤毛のアン」との運命的な出会いを果たすまでを描きます。ドラマは第2週から、はなが編入した東京の修和女学校に舞台を移し、ヒロイン役も子役の山田望叶から吉高由里子にバトンタッチ、女学校での波乱万丈のストーリーが展開しそうで、これからの放送が楽しみです。


■北里研究所本館・医学館/大正4年(1915)
ヒロイン安東はなが入学した修和女学校の設定で建物外観が使われています。
建物は細菌学の権威として知られる北里柴三郎が研究所の本館として建てたもので、中央に塔を頂くドイツバロック風の西洋建築。
研究所としてはかなりおしゃれな外観で、女学校の設定にはぴったりだったようです。





■北里研究所本館内部~ドラマ本編では学校内部は別セットで撮影されていました。
 

  


■はなが父・吉平(伊原剛志)に連れられ上京、修和女学校へ行く途中の背景として使われたレンガ通り。
洋館が並ぶレンガ通りは、市電も走っていて「ごちそうさん」にも頻繁に登場した人気スポットです。
今回は一番手前の札幌電話交換局の並びに千早赤阪小学校講堂と京都七條巡査派出所をCG合成し、
その前に京都市電を走らせるという手の込みようで、よりリアルな明治の町並みを再現していました。
 


■京都七條巡査派出所/明治45年(1912)



■千早赤阪小学校講堂/明治30年(1897)
 


■実際に明治村内を走っている京都市電




柱/オーダー(5)~公共建築編

2014-04-07 | まちかどの20世紀遺産

 銀行建築と並んで役所、公会堂、郵便局などの建物もオーダーが好んで用いられました。明治以降に建てられた公共建築は、ほとんどが西洋建築のスタイルに移行したので、必然的に最も西洋建築らしいオーダーを中心とした歴史様式のデザインが主流になりました。建築家や設計事務所が設計したそれなりの建物はもちろん、地方の小さな町の役所や郵便局なども、まあとりあえずはギリシャ・ローマ建築風の柱を並べておけば、手っ取り早く西洋建築としての体裁が整うので、こぞってオーダー風の柱でファサードを飾ったのでした。


■豊橋市公会堂/昭和6年(愛知県豊橋市)
2階入口までの大階段、正面を飾る6本のオーダー、両脇に半球ドーム、まさに建築の様式美



■旧一宮市役所本庁舎/昭和5年(愛知県一宮市)
正面玄関の上の4本のオーダーはかなり簡略化され、平面的なシンプルなデザインになっています
(建物は残念ながら2013年取り壊されました)


■木曽川資料館(旧木曽川町会議事堂)/大正3年(愛知県一宮市)
玄関車寄のトスカナ風のオーダーは、建物の規模からすればかなり頑張った立派なもので、議事堂の威厳と重厚さを演出



■四郷郷土資料館(旧四郷村役場)/大正10年(三重県四日市市)
3本の細い木製の柱をワンセットにして、太いオーダーに見立てています



■米原市醒井宿資料館(旧醒井郵便局局舎)/大正4年(滋賀県米原市)
2階分の高さのあるアーカンサスの柱頭飾り付きの角柱を並べたファサードは、西洋建築らしさを強調しています
地方都市の郵便局としてはかなり立派なもので、当時の醒井宿の繁栄が偲ばれます



■名和昆虫博物館/大正8年(岐阜県岐阜市)
オーダーの上にはしっかり三角ペディメントが載る本格派で、ギリシャ神殿を思わせる風格



柱/オーダー(4)~銀行建築編/その2

2014-04-05 | まちかどの20世紀遺産

 大正~昭和戦前まで、銀行建築のファサードはオーダー(列柱)を中心としたデザインが隆盛を究めます。古代ギリシャ・ローマを起源とする古典主義建築は20世紀に再ブレイクを果たし、遠く日本でも銀行建築を中心に都市のメインストリートを飾りました。しかし「盛者必衰」とはよく言ったもので、すでにこの時日本でも表現主義に代表されるモダンデザインの流れがひたひたと押し寄せていました。オーダーが並ぶクラッシクな建築の横で、歴史様式の装飾を一切排除した、コンクリートとガラスの四角い箱のモダニズム建築が次の出番を待っているのでした。


■旧岡崎銀行本店/大正6年(愛知県岡崎市)
三河地方で最初の本格的な銀行建築。正面玄関廻りはお約束のクラッシクな円柱を配し、銀行らしい威厳を演出。



■旧名古屋銀行一宮支店/大正13年(愛知県一宮市)
ファサード全面の1階~3階までぶち抜きのドリス式オーダーは大迫力。アーケードで隠れて柱頭飾りなど全容が見られないのは残念。



■旧津島信用金庫本店/昭和4年(愛知県津島市)
アカンサスというよりは、サニーレタスが張り付いた様なコリント風のオーダーが並ぶ玄関。
昭和初期の地方銀行では、オーダーの扱いがかなり簡略化されているパターンが多い。



■旧岐阜貯蓄銀行本店/昭和12年(岐阜県岐阜市)
正面のオーダーは本来の円柱状ではなく、壁と一体化し付け柱状になっている。



■滋賀中央信用金庫銀座支店(旧明治銀行彦根支店)/大正13年(滋賀県彦根市)
オーダーは壁と一体化してかろうじて痕跡をとどめています。



■旧大垣共立銀行美濃加茂支店/昭和27年(岐阜県美濃加茂市)
戦後の竣工ながら、壁と一体化しデザイン化されたオーダーのモチーフを残しています