かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

上野公園(6)国立国会図書館国際子ども図書館(旧帝国書館)/台東区

2018-01-28 | 東京の近代建築

明治に建てられた本格的なルネッサンス様式のわが国初の国立図書館。当初の計画では中庭を囲むロの字型の平面の壮大な規模の建物(建坪900坪)でしたが、日露戦争による財政難のため東面部分を完成しただけで中止となりました。現存する建物は当初計画の3分の1の規模に縮小された東面だけですが、華麗なフランス・アンピール様式の外観は、未完成に終わった壮大な図書館の片鱗をしのばせてくれます。
建物は2002年に安藤忠雄の手で増改築が施され、現在は「国立国会図書館国際子ども図書館」として保存再生され一般に開放されています。


■建物東面






■エントランスから大階段











■大階段と廊下~木製の建具や鋳鉄製の手摺、漆喰仕上げの壁や天井は創建時の姿に保存復元されています


       
    

3階ホール


 







■国立国会図書館国際子ども図書館(旧帝国図書館)/台東区上野公園12-49
 竣工:明治39年(1906)
 設計:久留正道+真水英夫+岡田時太郎
 施工:直営
 構造:鉄骨補強煉瓦造地上4階、地下1階
 撮影:2017/08/12
 ※東京都選定歴史的建造物




上野公園(5)東京文化財研究所 黒田記念館本館 ・書庫/台東区

2018-01-24 | 東京の近代建築

近代洋画家黒田清輝の遺言により美術研究所として建設されました。現在は東京国立博物館の一部として、館内2階に黒田記念室が設けられ、遺作の数々を展示公開しており無料で入場できます。
外観は昭和初期の復興建築に好んで使われたスクラッチタイル貼り(ライトの帝国ホテルの影響)で、2階正面にイオニア式列柱6本並べた端正なルネッサンス様式。なお向かい側には同じ岡田の設計した東京芸大の陳列館が現存しています。



■黒田記念館の建つ交差点周辺には、東京芸大の陳列館、正木記念館、奏楽堂、旧京成電鉄駅舎、国際子ども図書館など多くの近代建築が集まっています



■茶色のスクラッチタイルの外観は落ち着いた雰囲気



■イオニア式列柱が目を引く岡田が得意とする古典折衷様式の外観



■玄関上部のアールヌーボー調の装飾を施したファンライト(扇窓)



■本館の向かって右側の建物が書庫


     

 


東京文化財研究所 黒田記念館本館 ・書庫/台東区上野公園12-53
 竣工:昭和3年(1928)
 設計:岡田信一郎
 施工:竹中工務店
 構造:RC造2階
 撮影:2017/08/12
 ※国登録有形文化財

 


上野公園(4)旧京成博物館動物園駅/台東区

2018-01-21 | 東京の近代建築

地下鉄駅の上屋で、ここまで凝った意匠を施した様式建築は他には見当たりません。石貼りの外壁に国会議事堂を思わせるピラミッド風の段状屋根、軒廻りの古典系装飾、出入り口の両脇のオーダー(円柱)など、小さな駅舎ながら見どころいっぱいです。
たかが小さな地下鉄の駅舎にここまで入念なデザインが施されたのは、駅舎の敷地が当時宮内庁の管轄下にあったためで、御料地の下を通る地下鉄の駅舎には、それ相応の威厳と格式が求められたというわけです。
平成9年(1997)京成博物館動物園駅廃止にともない出入り口も閉鎖されたため、内部のパンテオン神殿風ドームが見られらないのは残念ですが、列車通過の際にはかつての駅の様子を垣間見ることができます。


■国会議事堂と並び、石造りの「東京二大墓石建築」と言われています






■旧京成博物館動物園駅/台東区上野公園13
 竣工:昭和8年(1933)
 設計:中川俊二
 施工:不詳
 構造:RC造平屋
 撮影:2017/08/12


上野公園(3)国立西洋美術館本館/台東区

2018-01-20 | 東京の近代建築

近代建築の巨匠、フランスの建築家ル・コルビュジエの我が国における唯一の作品が、2016年世界遺産にも登録された国立西洋美術館本館です。コルビュジエが基本設計、彼の弟子である坂倉準三、前川國男、吉阪隆正が実施・監理の協力のもと昭和34年(1959)に完成しました。
「無限成長美術館」のコンセプトで設計された美術館のひとつで、平面を螺旋形状にして外周部への増築を可能とし、収蔵品の増加にともなう展示空間の拡張に対応しています。
〈参考:江戸東京たてもの園特別展 世界遺産登録記念 ル・コルビュジエと前川國男〉


■淡緑色の外壁は緑色の玉砂利を全面に埋め込んだものですが、現在は改修済みでオリジナルではありません



■1階部分にはコルビュジエの建築の特徴であるピロティのコンクリートの円柱が見えます


■国立西洋美術館本館/台東区上野公園7-7
 竣工:昭和34年(1959)増築:昭和54年(1979)
 設計:ル・コルビュジエ 増築:前川國男建築設計事務所
 施工:清水建設
 構造:RC造地上2階、地下1階
 撮影:2017/08/12
 ※国指定重要文化財


上野公園(2)国立科学博物館/台東区

2018-01-17 | 東京の近代建築

国立としては唯一の科学博物館。歴史は古く創始は明治5年に湯島聖堂内に開設された文部省博物館までさかのぼります。現在の建物は震災復興期に建設されたもので、装飾を控えた重厚な外観は、当時の官庁建築に共通するものがあります。上空から見ると「飛行機型」というユニークな平面は、科学博物館を意識したデザインになっています。


■外装はスクラッチタイル貼り、3階までの吹き抜けの中央ホールのステンドグラスが見どころ








■国立科学博物館/台東区上野公園7-20
 竣工:昭和6年(1931)
 設計:小倉強(文部省)
 施工:大林組
 構造:RC造地上3階、地下1階
 撮影:2017/08/12


上野公園(1)東京国立博物館本館(旧帝室博物館)・表慶館/台東区

2018-01-14 | 東京の近代建築

上野の森は戦前築の博物館、美術館、図書館、東京芸大キャンパスの建物などが数多く残されていて、まさに近代建築の宝庫です。
今回は上野公園に現存する近代建築を巡ります。


■東京国立博物館本館(旧帝室博物館)/台東区上野公園13-9
 竣工:昭和12年(1937)
 設計:渡辺仁+宮内省
 施工:大林組
 構造:SRC造地上2階、地下2階
 撮影:2017/08/12
 ※国指定重要文化財



コンクリートの躯体に伝統的な瓦屋根をのせた、いわゆる「帝冠様式」の代表作。昭和6年に公募された設計競技(コンペ)の募集要項に「日本趣味を基調とする東洋式」という規定があったため、渡辺仁の当選案もそれに沿ったものですが、それに反発した日本インターナショナル建築会が不参加を声明しました。
そんななかで、近代建築の巨匠ル・コルビュジエの事務所で修業した前川國男は、落選覚悟でインターナショナル・スタイルの設計案で応募、自己のスタイルを貫いた建築家として有名になりました。
様式を自在に駆使し応募規定に沿って設計する渡辺と、あくまで自分のスタイルを曲げない前川。どちらもまさにプロフェッショナルと呼ぶにふさわしい建築家です。


■東京国立博物館表慶館/台東区上野公園13-9
 竣工:明治41年(1908)
 設計:片山東熊+高山幸次郎
 施工:新家孝正
 構造:煉瓦造2階石貼り
 撮影:2017/08/12
 ※国指定重要文化財



大正天皇の御成婚を記念して建てられた美術館。設計は赤坂離宮(迎賓館)を手がけた宮廷建築家片山東熊で、中央に巨大ドームを設け両翼にも小ドームをのせた典型的なネオバロック様式の建物。

 


善光寺界隈建築散歩~番外編(長野県長野市)

2018-01-13 | 長野の近代建築

善光寺周辺で見つけた戦前築?と思われる洋風建築ですが、文献等未掲載のため竣工年など詳細はまったく不明です(戦前築というのはあくまでわたしの推測です)


■フォトスタジオアオキ~仁王門の東側にある旧理髪店





■信州里の菓工房長野仲見世店~戦前築の洋風建築の転用と思われます





■唐辛子で有名な八幡屋礒五郎本店の煉瓦蔵~奥に八幡屋礒五郎横町カフェの入り口があります
イギリス積みの赤煉瓦や金属製の扉はかなりの年代物(明治~大正期)とお見受けします


善光寺周辺(8)~西町の看板建築/長野県長野市

2018-01-10 | 長野の近代建築

善光寺の参道から続く中央通りの西側の通り、西町交差点を南に入ったすぐのところに、なかなか良さげな洋風建築を偶然見つけました。通りに面したファサードだけが洋風の造りになった、いわゆる「看板建築」風の建物で、以前は商店として使われていたようです。2階部分の三連アーチ窓や、当時のままの木製玄関扉や窓枠、その上の狛犬の装飾など細部の見どころがいっぱいです。

善光寺界隈が近代化した大正末~昭和初頃に建てられた商店建築のひとつではないかと思われますが、観光客でにぎわう参道から一本入った裏通りで、ひっそりとたたずむその姿は誠に愛らしく、これからもずっとこのままで時を刻んでほしいものです。


■小さな商店建築ですが、細部意匠にこだわった造りは見どころ満載!





■木製のドア、ショーウィンドー、窓枠、照明など当時のままの姿なのが嬉しいところです



■縦長の窓の上部のアーチ部分はドイツ壁風



■玄関上部の木製の狛犬は見事な細工が施されています


善光寺周辺(7)~長野聖救主教会/長野県長野市

2018-01-08 | 長野の近代建築

信州大学長野キャンパスの向かい、406号線信大前交差点すぐに小さな煉瓦造の教会が建っています。建物は明治31年竣工の赤煉瓦造で、現在も美しいイギリス積みの外壁を見ることができます。尖頭アーチの玄関の上には大きな薔薇窓が設けられ、側壁と隅部にはバットレスをつけ、明治期によく建てらた西洋中世風のゴシック教会建築の様式を今もとどめています。







■長野聖救主教会/長野県長野市西長野6
 竣工:明治31年(1898)
   設計:J.G.ウォーラー
 施工:不詳
 構造:煉瓦造平屋建、鉄板葺
 撮影:2017/11/26
 ※国登録有形文化財

 


善光寺周辺(6)~中澤時計本店/長野県長野市

2018-01-07 | 長野の近代建築

藤屋旅館と同じく、善光寺前中央通りの拡幅に際して建設された建物。北西面の角を隅切りとしたファサードの上部をアーチ型に盛り上げ、当時流行のセセッション風の装飾を施しているのは、いかにも大正モダンなデザインです。
同時期に建てられた藤屋旅館と同様「鉄網コンクリート」構造の木造2階建で、外壁は洗出仕上げにして各所に幾何学模様の装飾を配しています。


■大正モダンなセセッションの流れを汲む細部意匠が見どころ







■中澤時計本店/長野県長野市大門町48-1
 竣工:大正13年(1924)
 設計:本田政蔵/長野市嘱託建築技師
 施工:池田市郎/大工棟梁
 構造:木造2階建
 撮影:2017/11/26
 ※国登録有形文化財


善光寺周辺(5)~八十二銀行大門町支店/長野県長野市

2018-01-06 | 長野の近代建築

大門交差点の角に建つ八十二銀行大門町支店は、戦前の近代建築と思いきや、大正時代に建てられた旧建物の外観をイメージ保存した現代建築です。善光寺参道の歴史的景観に配慮して、旧建物の外観を継承しつつ平成9年に建て替えられました。塔屋やセセッション風の装飾も忠実に再現されていて、他の近代建築とともに善光寺参道の景観保存に大きな役割を果たしています。








■八十二銀行大門町支店/長野県長野市大門町63-1
 竣工:平成9年(1997)/旧建物(大正13年築)のイメージ保存
 設計:清水建設/高橋俊太郎 
 施工:清水建設/清水組
 撮影:2017/11/26


善光寺周辺(4)~善光寺郵便局(旧五明館)/長野県長野市

2018-01-03 | 長野の近代建築

作家の池波正太郎が長野の定宿として愛した老舗旅館「五明館」の旧館の一部が、善光寺郵便局として保存活用されています。五明館は江戸時代から脇本陣を務めていた老舗で、1986年旅館休業後はレストランとして営業していました。そのレストランも2011年に閉店、残念ながら現在は善光寺郵便局の建物だけが、当時の面影を残すのみとなってしまいました。


楽茶れんが館(旧信濃中牛馬合資会社社屋)の向かいにある、善光寺郵便局(旧五明館)の建物






■善光寺郵便局(旧五明館)/長野県長野市大門町515
 竣工:昭和7年(1932)昭和62年改修、転用
 構造:木造2階建
 撮影:2017/11/26