かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

マッチ箱に見る昭和

2015-07-29 | 昭和マッチコレクション

最近日常で、マッチというものをあまり使わなくなった気がします。我が家でもマッチを使う機会は、仏壇のロウソクに火をつけるときくらいで、火を使う製品(コンロやストーブ)には着火装置が付き、電磁調理器の普及もあり、一般家庭ではマッチは影の薄い存在になってしまいました。

思えば私が子どもだった昭和40年代頃までは、大箱の徳用マッチはもちろん、家の至る所で飲食店などの店名が入ったマッチの小箱を見かけたものでした。当時マッチはあらゆる着火に広く用いられ、無料でもらえる銀行や喫茶店などの広告入りマッチはどこの家庭でも重宝したものです。

マッチがまだ生活に密着していた頃は、タダでもらえる店名入りのオリジナルマッチを蒐集するコレクターもたくさんいました。実は数年前に他界した私の父もマッチコレクターだったらしく、父の部屋の押入れにあった有田みかんの段ボール箱から、飲食店などで蒐集した大量のマッチを発見しました。

昭和50年代当時のマッチ箱を眺めていると、各店オリジナルの多種多様なデザインに思わず感心してしまいます。小さなマッチ箱には店名のロゴやイラストが描かれているのですが、まさにひとつの作品と呼ぶのにふさわしい出来栄えで、なかなか奥の深いものです。今はネットで店の情報がすぐ手に入る時代ですが、昭和の時代ならではの告媒体としてのマッチ箱は、レコードジャケットと同じように、今だからこそ面白いアナログ的アートな世界が楽しめます。

父が生前集めた「昭和のマッチコレクション」、このままお蔵入りするのはあまりに忍びないので、このブログでそのアートな世界を紹介することにしました。小さなマッチ箱に拡がる昭和な雰囲気を皆さんも楽しんでください。



■今では珍しい自治体がたばこ販売促進用に配布したマッチ。
「今日も元気だ たばこがうまい」は昭和世代の人にはおなじみのフレーズ。
しかし、たばこ離れが進む現代と比べると隔世の感が否めませんが、こんな時代もあったのです。

 

■たばこ購入時についてきた、たばこのパッケージをデザインしたマッチ。
ハイライトは昭和40年代、父に頼まれてよくたばこ屋にお使いに行ったものでした(当時確か80円)
ショートホープの中箱の裏側には謎の2桁の数字(製造番号か?)が印刷されていました。
大学生の頃、すべての数字を集め専売公社へ送ると粗品がもらえるという都市伝説を聞いたことがあります(笑)
  

  


■たばこ屋さんなどで購入するマッチには色々なシリーズがありました。
下は「世界の旅シリーズ」と「わらべ唄」シリーズ。
 

■たばこ屋のショーケースの変遷~左から順に戦前、昭和30~40年代
  


平成26年現在の成人男子喫煙率は30%ですが、私がたばこを吸い始めた大学生の頃(昭和50年代初め)の喫煙率は実に75%でした。当時は友人たちと喫茶店に入り、暇にまかせて灰皿が吸殻の山になるまでねばったものです。
どんな小さな喫茶店にも必ず店名入りのマッチが常備され、灰皿の横に置いてあったり、店の人に声をかけるとすぐに持ってきてくれました。その頃は100円ライターも普及し始めていましたが、喫茶店のマッチはなんとなく持ち帰り、気がつくといつの間にかマッチ箱がたまっていたものです。


■最近は現役で営業中の昭和のたたずまいを残すたばこ屋も少なくなりました。




70年代ステレオ事情Part2~蘇るサンスイ

2015-07-22 | 音楽・オーディオ

今年になって思いもかけずサンスイが復活、往年と変わらぬ音が帰ってきました。
だめもとでアンプ内をエレクトリッククリーナーで清掃したところ、ガサガサだった左チャンネルとセレクターが復活。
もう骨董品だからとあきらめていたのですが、ものは試しやってみるもんですねぇ~
やっぱりあの時代(昭和50年代)の電化製品は造りが違います。
とにかくアンプ、プレーヤー、スピーカー、すべてがでかくて重い!

シュワちゃんのターミネーターもおじいちゃんになって帰ってきましたが、わたしの昭和生まれのアンプも奇跡的によみがえりました。
大好きな50~60年代のジャズを70年代のオーディオで楽しむ毎日です。


■復活した「SANSUI AU-D707F」の雄姿
人間にたとえればまだまだ30代半ばの働き盛り。これからもがんばってもらいましょう。



■プレーヤー:YAMAHA GT-2000、スピーカー:NS-1000 MONITOR



プレーヤーのカートリッジがMCなので、オンキョーのアンプでは聴けなかったのですが、このたびMC対応のサンスイが復活。
久しぶりに学生時代の古いレコードを引っ張り出して聴いています。
レコードを聴くという行為自体が、音楽に夢中だった若いころを思い出させてくれて、この齢になるとなかなか新鮮です。
紙ジャケットから指紋が付かないように慎重にレコードを取り出し、プレーヤーにセット、そっと針を落として「さあこれから聴くぞ」と身構える。
CDや携帯プレーヤー、PCで聴くときには無い、音楽にしっかりと向き合う姿勢がやっぱりレコードは良いですね。
紙ジャケットもCDよりかなり大きいので見ごたえがあり、一つのアート作品として楽しめます。
そう言えばレコードの時は「ジャケ買い」のしがいもありました。 

こちらは大学の頃、美しいジャケットに惹かれて買った「ジャケ買い」の一枚。
70~80年代はフュージョン全盛期で、ジャズ界の大御所たちもこぞってフュージョンに流れていました。
 
■アート・ファーマーとジョー・ヘンダーソンの「YAMA」/1979 







ジャズ・オブ・パラダイス~中高年からのデジタルオーディオ入門

2015-07-19 | 

最近また昔聴いたジャズにハマっています。
きっかけは家内曰く、我が家の粗大ごみ(もちろん私も含めて?)~廃棄処分の危機を何度も乗り越えてきた年代物のオーディオ装置~にPCをつないで復活させたことです。PC作業のBGMとして気軽に高音質で音楽が楽しめる環境はまさに快適、またぞろ若いころに聴いレコードやCDを引っ張り出して聴いてみようかという気分にさせてくれます。

中学生でポップスやロックの洋楽に目覚め、大学生の時にジャズ好きの友人の影響でディープなオーディオの世界を知りました。そこで1年がかりで貯めたバイト代をつぎ込んで念願のオーディオ装置を購入。学生時代はロック、ジャズ、フュージョンと暇にまかせてレコードを聴きまくる毎日でした。

ところが就職するとすぐに東京に転勤、学生時代愛用のオーディオは自宅でほこりをかぶったまま、レコードに針を落とす回数も年に数えるほどなってしまいました。地元に帰り結婚後も仕事や子育てに追われる毎日。とてもじっくりオーディオで音楽を楽しむ心の余裕が無く、あれほど好きだった洋楽からも遠ざかってしまいました。

数年前にPCとオーディオをつなぎ高音質で音楽を楽しむ方法があるこを知り、D/Aコンバーター(DAC)なるものを購入。このDACは、PCからのデジタル音声信号をスピーカーで聴けるアナログ信号に変換してくれるもので、USBで手軽に接続できるのがミソ。

これで我が家の粗大ゴミも30数年ぶりに復活、現在は昔とかわらぬ音でオーディオの醍醐味をお手軽に満喫しています。ちなみにDACは2~3万円くらいのものでも十分で、それなりのアンプとスピーカーをつなげば、CDに遜色ない音質でデジタルオーディオライフが楽しめます。まあとことんアナログにこだわるハイエンドのオーディオマニアから見れば邪道かもしれませんが、大音量で聴ける環境にないわたし的には十分満足のいく音質でオーディオライフを楽しんでいます。

というわけで、最近は予定のない休日は部屋でジャズを聴きながらのんびりするのが恒例になり、ご近所に散歩に出かける時もお気に入りのジャズが入った携帯音楽プレーヤーは今や必須アイテムです。




■ジャズとデジタルオーディオの入門書(税込108円)
ジャズの入門書というのを初めて買ってみましたが、これがなかなか面白い。
好きというだけで聴いていた頃には分からなかったミュージシャンやアルバムについて知るのは、さらに聴く楽しみが深まります。
まだまだ未開拓の名盤の数々があるのがあらためて分かり、老後の楽しみがまた一つ増えました。
  


■手持ちの古いアナログ機器と最新のデジタルの融合で新しいオーディの世界が広がります。
若いころにハマったオーディオのワクワク感を久しぶりに味わうことができました。


久しぶりに35年前のサンスイのアンプを鳴らしてみると、左チャンネルがほとんど死んでました。
そこでオンキョーのデジタルアンプを購入したのですが、これがどうも思った音と違うのです。
だめもとでサンスイをばらしてクリーナーで掃除したところ、なんと左チャンネルが復活しました!
最新のデジタルオーディオと昔のアナログアンプとスピーカーの相性はばっちり、暖かい厚みのある音が再生できました。
35年前のアンプとスピーカー(アナログ)とPC(デジタル)の出会いはまさに温故知新、一期一会。
オーディオの世界はやっぱり奥が深いです。
お金をかけずに良い音で音楽を楽しむ中高年からのオーディオライフ、おススメですよ~


津の琺瑯看板

2015-07-15 | まちかどの20世紀遺産

今回は津市の建築探訪で偶然琺瑯看板を発見しました。
最近は旧街道沿いでもほとんど琺瑯看板を見かけることは困難で、もはや絶滅寸前です。 


■ひさびさに発見!キンチョーの蚊取り線香とキンチョールの必殺2枚貼り。
過去に岐阜県でキンチョーの一大群生地を発見しましたが、まだあるんだろうか?心配です.....
となりの宝石店の北村の看板も小ぶりながら味があります。



■かなりの年代物の掲示板にしっかり琺瑯看板がディスプレイしてありました。
「赤いキャップのおそうじ道具」の看板は初めて見ました。



■琺瑯看板のある建物も昭和のオーラを発散していました。

撮影015/05/03



日本キリスト教団阿漕教会/旧阿漕講義所(三重県津市)

2015-07-08 | 三重の近代建築

今回の津市建築探訪の最後は、JR紀勢本線阿漕駅から東へ1kmほどの所にある大正時代に建てられた日本キリスト教団阿漕教会です。住宅街にひっそりと建つ教会堂は、爽やかな淡いグリーンに塗らた下見板張りで、とても80年前に建てらたとは思えないほど手入れが行き届いています。

教会のHPによると現教会堂の創建は大正14年。当初は阿漕講義所として伝道を開始、戦災でも焼失を免れ、戦後も津の町でただひとつ焼け残った阿漕教会に人々が集まり礼拝が続けられたそうです。
教会堂と宣教師館(現存せず)の設計図はヴォーリズがアメリカから持ち帰ったと言われていますが(教会HPによる)、ヴォーリズの作品リストにも記載がないため真偽のほどは定かではありません。
そう言われれば特に旧宣教師館の外観は、ヴォーリズっぽい雰囲気も感じられるような...
旧宣教師館の外観は→https://church.ne.jp/akogi/history.html(阿漕教会の歴史)


■パステルトーンのグリーンに塗られた教会堂は、軽井沢などの高原が似合いそうな雰囲気



■なかなかメルヘンチックな外観です







■尖頭アーチの窓がリズミカルに並ぶ



■現在の宣教師館の建物。手前のイギリス積の煉瓦塀はかなりの年代物と思われます。



■日本キリスト教団阿漕教会(旧阿漕講義所)/三重県津市下弁財町津興1267
 竣工:大正14年(1925)
 設計:ウィリアム・メレル・ヴォーリズ?(伝承)
 構造:木造2階建
 撮影:2015/05/03


旧安濃津監獄正門(三重県津市)

2015-07-05 | まちかどの20世紀遺産

大門商店街から旧伊勢街道を南へ、岩田橋を渡り川沿いを西へ向かうとほどなく左手に三重刑務所の広い敷地が見えてきます。お目当ての旧安濃津監獄正門は、刑務所正面の駐車場の奥の木立の中にポツンと建っていました。もちろん正門以外の建物はすべて建て替えられているため、当時の安濃津監獄時代の全容は分かりませんが、残された煉瓦造の正門からは明治~大正期に建てられた監獄建築の一端を垣間見ることができます。

監獄建築と言えば明治期に建てられた、千葉、鹿児島、奈良、長崎、金沢の五大監獄が有名です。当時の建物の一部が今も残るのは、千葉、奈良監獄(現刑務所)のみで、鹿児島、長崎監獄は正門のみ現地保存、金沢監獄は正門と看守所、監房の一部が明治村内に移築保存されています。私は明治村の金沢監獄正門しか見たことはありませんが、東京駅にも通じる明治建築らしい赤煉瓦の美しいデザインでした。その他の監獄の正門もすべて煉瓦造りで、特に千葉と奈良監獄の正門はどこかのテーマパークの門と見まごうばかりの明るく華やかなデザインで、とても監獄の門とは思えません。

今回訪れた安濃津監獄正門も煉瓦造りですが、五大監獄の門に比べるとちょっと渋めの色合いで装飾も簡素、竣工が大正5年ということで明治期の赤煉瓦建築の華やかさにくらべ落ち着いた重厚な外観になっています。


■前の道路から駐車場の奥にある旧正門が確認できます



■正門はフェンスの中ですが、近くまで行って見学可能





■重厚感漂う焼きすぎ煉瓦の外壁に、赤煉瓦で色目を変えて幾何学模様の装飾を施しています





■旧安濃津監獄正門/三重県津市修成町16-1
 竣工:大正5年(1926)
 設計:司法省
 構造:煉瓦造
 撮影:2015/05/03 


大門観光/旧大門百貨店(三重県津市)

2015-07-04 | 三重の近代建築

百五銀行大門出張所のすぐ北側、一階にパチンコ屋さんの店舗が入った見るからにレトロなビルがあります。ちょっと見はどこにでもある年代物のビルですが、タイルに覆われた隅丸の外観からは昭和戦前期の近代建築が持つ独特のオーラがビンビン伝わってきます。

このビルは昭和11年に大門百貨店として建てられたもので、設計者丹羽英二建築事務所のHPによると、開店初日から3日間の入場者が実に20万人を超えるという大盛況ぶりでした。(ちなみに当時の津市の人口7万人)
丹羽英二の作品としては、下呂湯之島館や瀬戸陶磁器会館が現存しており、現在も丹羽英二建築事務所として数多くの設計を手がけています。
丹羽英二建築事務所ホームページ→http://www.niwa-ae.com/ourworks/old_daimon.htm

戦災でも焼け残った建物は、戦後も津市唯一の百貨店として多くの市民に親しまれ、昭和38年百貨店移転後も大門観光ビルとして存続しました。現在は1階のパチンコ店のみが営業、2階~4階は全く使用されておらず、今後いつまでこのビルが生き長らえるか、予断を許さないところです。


■建物外観は昭和戦前期に見られる直線を基調とし装飾を排したモダンデザイン



■タイル張りの外壁に各階を区切る水平線、コーナーは丸みを持たせ屋上に塔屋、ああ昭和モダンここにあり



■昭和のモダニズム建築に過ぎ去った時代を偲ぶ





◆大門観光(旧大門百貨店)/三重県津市大門18-11
 竣工:昭和11年(1936)
 設計:丹羽英二
 構造:RC造地上4階地下1階塔屋付
 撮影:2015/05/03