かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

三井住友銀行上前津支店(中区大須)

2010-05-24 | 名古屋の近代建築

大津通建築散歩~その2

 松坂屋からさらに大津通を南進、東西に走る大須通りと交わる上前津交差点に、4本のイオニア式半円柱が目を引く三井住友銀行上前津支店があります。
 広小路通の三井住友銀行名古屋支店、旧名古屋銀行本店とともに戦前に建てられた名古屋を代表する古典様式の銀行建築で、昭和10年に建てられました。

 下の上前津交差点から撮った写真を見ると一目瞭然ですが、東と南の面が建物の角を中心に左右対称に造られています。東と南それぞれのファサードに中央に入り口を設け左右対称にし、さらに立体的にも左右対称になるようデザインされています。

 設計はニューヨークのトローブリッヂ&リビングストン建築事務所で、三井本店(S4)をはじめ横浜、川口の支店も手がけています。


■三井住友銀行上前津支店/名古屋市中区大須3丁目46-24
 竣工:昭和6年(1931)
 設計:トローブリッヂ&リビングストン建築事務所
 施工:竹中工務店
 構造:SRC造地上2階、地下1階
 撮影:2010/3/14
 ※名古屋市都市景観重要建築物





 



オーダー(列柱)を前面に配した銀行建築らしい重厚なファサード


 


 


松坂屋名古屋本店(中区栄)

2010-05-23 | 名古屋の近代建築

大津通建築散歩~その1

広小路通が大津通と交わる栄の交差点を南に向うと、地下鉄の矢場町駅の手前、大津通に西面して名古屋で一番古いデパート、松坂屋名古屋本店が建っています。

日本のデパートはその成り立ちから「呉服店系」と「私鉄系」に分けられます。松坂屋や三越は「呉服店系」、西部、阪神、阪急、近鉄、名鉄などはもちろん「私鉄系」です。松坂屋の創業の起源は、いとう呉服店として商売を始めた江戸時代初め1611年、同じく江戸時代に越後屋として創業した三越と並びデパート業界では老舗中の老舗で、歴史と格式は「私鉄系」のデパートの比ではありません。

松坂屋の前身「いとう呉服店」が名古屋の栄に百貨店として進出したのは明治43年で、現在の建物は大正14年に移転新築されたものですが、戦災で骨格を残して全焼したためほとんど当時の面影をとどめていません。
設計は名古屋の近代建築の父と言っても過言ではない、まいどおなじみの鈴木禎次で、東京、大阪の松坂屋も手がけています。
現在の建物は戦災で全焼後何度も増改築されていて、とても大正時代に建てられたものには見えませんが、その当時の写真を見ると、角を1階分高くして塔屋風にし、アーチ窓を設けた近世ルネッサンス様式の建物になっています。
もちろん店内も最新の内装が施されていますが、創業当初のままの階段室と踊り場は一見の価値ありで、豪華な大理石でつくられた壁や柱(アンモナイトなどの化石入り)、親柱の装飾など見所いっぱいです。(店内は撮影できませんので実際に見に行くことをおすすめします)

最近はデパートも売り上げ不振が続き、店舗の統廃合などが進んでいます。全国各地にはまだ戦前の古いデパート建築が現存していますが、最近も阪急百貨店梅田本店(S4)の建て替えや、横浜松坂屋(T10)の取り壊しが進んでいます。
常に街の賑わいの中心でシンボル的存在だった戦前のデパート建築が無くなって行くのは寂しい限りですが、戦前のデパートとしては名古屋地区で唯一の松坂屋名古屋本店、これからも現役で末永くがんばって欲しいものです。


■松坂屋名古屋本店/名古屋市中区栄3丁目16-1
 竣工:大正14年(1925)
 設計:鈴木禎次
 施工:竹中工務店
 構造:SRC7階、地下2階
 撮影:2010/3/14

〈参考〉
わが街ビルヂング物語/瀬口哲夫
サライ 1992/6/18号


竣工当時は6階建て(現在は11階)で写真中央の建物の角が塔屋風に上へ突き出ていました
 


■開業当時の姿を伝える絵はがき


 

 

 


丸栄百貨店(中区栄)

2010-05-22 | 名古屋の近代建築
広小路建築散歩~その5

 広小路通と大津通が交わる栄の交差点周辺は、丸栄、三越、松坂屋(この地方では3Mと言う)が集まり、まさに名古屋を代表する繁華街を形成しています。
 明治屋の隣、広小路に面して建つ丸栄百貨店は、昭和を代表する建築家、村野藤吾の手による戦後早い時期の作品で、愛知県内では現存する唯一の作品です。

 村野藤吾は大阪の渡辺節の事務所で、アメリカンボザールの名建築(ダイビル本館、綿業会館など)を手がけますが、その後、森吾商店(S6)や重要文化財に指定された宇部市民館(S12)などモダンデザインに歴史様式を加味した後期表現派と呼ばれる作風に変わっていきます。
 後期表現派は当時建築界のメジャーになりつつあったモダニズムの白いトーフ建築にあきたらず、細部に歴史様式を残し仕上げの味にこだわった、古い時代の良さを残したモダンデザインをめざしたのです。
 戦後、モダニズム建築が席巻するなか村野藤吾が目指したもうひとつのモダンデザインは生き残り、現代建築にも大きな影響を与えています。 <参考>日本の近代建築(下)/藤森照信著


■丸栄百貨店/名古屋市中区栄3-3
 竣工:昭和28年(1953)
 設計:村野・森建築事務所
 施工:清水建設
 構造:SRC造地上8階、地下2階
 撮影:2010/3/14




昭和の良き時代を感じさせる優しい雰囲気を持ったデザインで街の景観に潤いを与えます


明治屋名古屋栄ストアー(中区栄)

2010-05-19 | 名古屋の近代建築

広小路建築散歩~その4 

 旧名古屋銀行本店からさらに東へ進むと栄の中心街です。

 丸栄(デパート)のある交差点に建つ明治屋名古屋栄ストアーは、6階建てのこじんまりとしたビルですが、70年を超える歴史を持つ建物は風格があり、周りの現代的なビルとは一線を画しています。
 建物は昭和13年に竣工、隣の丸善(和洋書販売)とともに当時「銀ブラ」ならぬ「広ブラ」を楽しむ人でにぎわいました。外国の輸入食品を扱う明治屋と洋書を販売する丸善には、当時の上層階級やインテリ層が集まり、贅沢な舶来品の持つ雰囲気が人々の心をとらえました。

 現代でも明治屋といえば、近所のスーパーでは手に入らないような、ちょっと贅沢でおしゃれなワインや食品が置いてある高級店と言うイメージがありますが、本物の近代建築が持つレトロモダンな雰囲気はそのまま明治屋のイメージにつながっています。ちなみに東京と大阪の明治屋も、戦前の店舗を現在もそのまま使用しています。


■明治屋名古屋栄ストアー/名古屋市中区栄3丁目2-9
 竣工:昭和13年(1938)
 設計:西尾建築事務所
 施工:清水組
 構造:RC6階地下2階
 撮影:2010/3/14


 



明治屋の雰囲気を演出するアールデコ風のモダンなファサード(向かって右隣が丸善)



2階から上に伸びる簡略化された4本の列柱が古典様式の名残をとどめます



右読みの「株式会社明治屋名古屋支店」のロゴが時代を語ります


旧名古屋銀行本店(中区錦)

2010-05-15 | 名古屋の近代建築

広小路建築散歩~その3

 三井住友銀行名古屋支店からさらに栄に向かって歩くと、左手に4階分の高さの列柱を持つ古典様式の建物があります。まさにどこから見ても銀行建築の典型で、重厚な歴史様式の建物はまさに銀行の信頼、安心感を演出するにふさわしいつくりになっています。
 この建物は昭和元年名古屋銀行本店として建てられ、その後東海銀行、中央信託銀行を経て三菱東京UFJ銀行貨幣資料館として再利用されていましたが、現在は使用されていません。
 設計は東海地方、特に愛知県内で数多くの作品を手がけた鈴木禎次で、鶴舞公園噴水塔、奏楽堂、松坂屋本店、旧岡崎銀行本店、旧中埜家住宅(重文)など多くの名建築が現存しています。
 名古屋を代表する目抜き通り広小路を代表する昭和初期の銀行建築として、歴史的文化財としての今後の保存活用が望まれます。


■旧名古屋銀行本店/名古屋市中区錦2丁目20-25
 竣工:昭和元年(1926)
 設計:鈴木禎次・曽禰達蔵(顧問)
 施工:竹中工務店
 構造:SRC造地上5階地下1階
 撮影:2010/3/14
 ※名古屋市都市景観重要建築物





■6本のコリント式列柱がスケール感のあるファサードを演出(玄関前の通行人と比べると高さが分かります)



■東隣の大和生命ビルが取り壊され建物東側が見えるようになりました



■正面玄関の柱頭飾り



■コリント式オーダーのアカンサスの柱頭飾り


 
■広小路側正面玄関                   ■西側玄関


 
■ファサードの装飾                    ■名古屋市都市景観重要建物プレート



■1階の窓上部のキーストーンの「T」の浮き彫りは、鈴木禎次のイニシャルをあらわしていると言われています。


 


三井住友銀行名古屋支店(中区錦)

2010-05-09 | 名古屋の近代建築

広小路建築散歩~その2

広小路を納屋橋から栄え方面に歩くと、左手にギリシャ・ローマ時代の建築を思わせるクラッシクな銀行が見えてきます。
正面に6本のイオニア式オーダーの列柱が並ぶ新古典主義の建築で、いかにも昭和前期の銀行建築らしい重厚な外観になっています。
これは古代ギリシャ復興式~アメリカンボザールと呼ばれるデザインで、当時の銀行はギリシャの神殿をイメージした古典主義建築を銀行建築の定番として採用し、全国の都市には一目で銀行とわかるクラッシクな建物が次々と建てられました。
昭和の初めに名古屋一の目抜き通りに建てられた三井銀行名古屋支店は、ほぼ当時のまま保存されており、同じ通りに面して建つ旧名古屋銀行とともに当時の広小路の面影を今に伝える貴重な文化財になっています。


■三井住友銀行名古屋支店(旧三井銀行名古屋支店)/名古屋市中区錦2丁目18-24
 竣工:昭和10年(1935)
 設計:曽禰・中條建築事務所
 施工:竹中工務店
 構造:RC2階地下1階
 撮影:2010/3/14



建物全景(広小路通側)



三角ペディメントを載せた正面玄関と渦巻きの柱頭を持つ溝付き円柱がクラッシクな外観を醸し出します
   

   


建物西側玄関の装飾とイオニア式オーダー
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/bb/0e27774ec4bf2dfef2e5f802130ea59b.jpg


西側のオーダーは壁面と一体化した付け柱になっています


 


納屋橋と旧加藤商会ビル(中区錦)

2010-05-04 | 名古屋の近代建築
広小路建築散歩~その1

名古屋駅から栄を結ぶ広小路通界隈にはまだ多くの戦前の近代建築が現存しています。
堀川に架かる納屋橋から栄まで、広小路通を散歩しながら近代建築ウォッチングが楽しめます。

■旧加藤商会(旧シャム領事館)/中区錦1丁目15-17
 竣工:昭和6年(1931)
 構造:RC3階地下1階
 撮影:2007/10/7
 ※国指定登録有形文化財

長い間看板に覆われ広告塔と化していましたが、平成17年からタイ料理レストランと「堀川ギャラリー」として再利用されています。
堀川再生の拠点として納屋橋とともに当時の面影を残す貴重な建物です。




1階は石貼り、2~3階はタイル貼り



建物の角に丸みをつけ玄関を設けています



地階には扉を付け堀川から船で荷物を運びました


■納屋橋/中区錦1丁目
 竣工:大正2年(1913)
 構造:S造

昭和56年に道路の幅員を拡大し改築されましたが、橋梁のアーチや欄干は旧状を復元。




旧加藤商会ビルは「酒は国盛り」の看板に覆われています(撮影:1997/10)





桑名建築散歩~番外編

2010-05-03 | 三重の近代建築
桑名建築散歩~番外編

■三岐鉄道北勢線 馬道駅/桑名市城山町
 竣工:大正3年(1914)
 構造:木造平屋

元々は下見板貼りの洋風木造駅舎だったと思われますが、現在はサイディングに張替えらています。
入り口からホームの軒先には、ぐるっと一周つららの様な飾りが垂れ下がっています。
明治~大正期の洋風木造駅舎には良く見られる装飾で、屋根瓦は純日本風です。







■旧東海道の洋館~九華公園近くの木造下見板貼りの洋風建築




■蔵前祭車庫横に架け替えられた橋(玉重橋)の親柱が保存されていました