かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

国際資源活用協会/旧熊沢ビル(三重県四日市市)

2013-07-30 | 三重の近代建築

四日市港の古い倉庫や工場が建ち並ぶ一角にひっそりと戦前のビルが建っています。
屋上のオーダーをあしらった塔屋は国会議事堂を思わせるデザインで、壁面の表現主義風の装飾がモダンな雰囲気を感じさせます。
大正~昭和の近代建築には、現代建築にはない時代の刻印(影)みたいなものが色濃く残っていて、それが醸し出す独特の妖しさがじんわりと見るものに迫ってきます。
このビルの建つ空間だけが、現代と切り離された違う時間が流れているようで、時代の雰囲気を残す建物です。


◆国際資源活用協会(旧熊沢ビル)/三重県四日市市末広町2-2
 竣工:大正3年(1914)
 構造:RC2階建
 撮影:2013/05/04


■建物は三叉路の角に立地しており、玄関は東側の道路に面している



■西側道路に面した建物裏側



■三叉路の角にある塔屋~スリット状の柱と幾何学的な装飾が見るものに強い印象を与えます


     

     





ゴールデンウイークの港の倉庫街は静けさに包まれ、ゆっくりと時間が流れていました。
人通りのない港町の昼下がり、のんびりと自転車を漕いで再び四日市駅方面へ向かいました。


四日市旧港防波堤/潮吹き防波堤(三重県四日市市)

2013-07-28 | まちかどの20世紀遺産

四日市港の北側に、明治初期に整備された四日市旧港があります。
半円形の輪郭を描く石造りの防波堤は、明治27年人造石工法で名高い服部長七の施工によって補修されたもので、「潮吹き防波堤」として知られています。

これは世界でも珍しい透過式防波堤で、前堤を乗り越えた波を受け止める後堤には49個の窓があけられ、波があたるとこの窓から海水が吹き上がり、波の勢いを減殺させる構造になっています。 
防波堤の設計は、当時四日市築港計画を作成したオランダ人土木技師ヨハネス・デ・レーケと言われていますが、名古屋港の護岸工事も人造石で手がけた、服部長七の設計施工ということも考えられるようです。

現在は防波堤の窓の奥がふさがれ海水が入らないため、潮吹きの光景は残念ながら見ることはできません。
近代の港湾施設として初めて重要文化財指定を受けた「潮吹き堤防」、その役目は終えましたが、ぜひ旧状を復元して、その名のとおり堤防の窓からいっせいに潮が吹き上がる様子を見てみたいものです。 


◆四日市旧港防波堤(潮吹き防波堤)/三重県四日市市大脇町1
 竣工:明治27年(1894)→昭和30年(1955)護岸化
 施工:服部長七
 構造:石造(服部人造石工法)
 撮影:2013/05/04
 ※国指定重要文化財 


■美しい石積みの堤防に等間隔に五角形の窓が並ぶ姿は、100年以上を経た現在も当時のまま保たれています。
あの窓から一斉に潮が噴き上がる光景はもう二度と見られないのでしょうか?残念です~



■石垣に穿たれたずらりと並ぶ窓は、近代の要塞を連想させるものがあります



■潮吹き防波堤を望む稲葉翁記念公園に建立された「稲葉三衛門君彰功碑」/明治36年
稲葉三衛門は明治初期、私財を投じて四日市旧港を建設し近代港湾の礎を築いた
 


末広橋梁/旧四日市港駅鉄道橋(三重県四日市市)

2013-07-24 | 近代橋めぐり

かなりアップが遅れましたが、(^_^;) 5月の連休の近代建築めぐりもいよいよ最後の三重県四日市です。
四日市は2006年以来2度目の訪問で、今回は画像の更新と現存確認を中心に、時間が許せば前回取りこぼした物件も訪問したいところです。

まずは近鉄四日市駅でレンタサイクルをゲットして(100円で一日乗り放題)、前回時間の都合で割愛した四日市港方面に向かいます。
四日市港にある2件の重要文化財のうちの1件、まずは末広橋梁です。
末広橋梁は現役で最古の鉄道可動橋で、昭和6年(1931)埋め立てられた末広町と千歳町の間の千歳運河に架けられました。
訪れた日は橋は跳ね上がったままの状態で、実際に橋が下りて列車が通る姿を見られなかったのは残念でした。


◆末広橋梁(旧四日市港駅鉄道橋)~千歳運河/三重県四日市市末広町~千歳町
 竣工:昭和6年(1931)
 設計:山本卯太郎
 製作:山本工務店
 構造・形式:鋼プレートガーダー(跳開)
 撮影:2013/05/04
 ※国指定重要文化財


■向かって左側にある小屋が操作室で、ケーブルで橋を巻き上げます





■山元工務所の銘が入るプレート





■近代化産業遺産認定の案内板



■千歳運河沿いの倉庫群~戦前のものと思われます



■すぐ西側に架かる臨港橋~こちらは道路用の可動橋で1991年製の3代目、油圧ジャッキで中央部を押し上げて開きます


川辺町散歩(岐阜県加茂郡)

2013-07-22 | まち歩き

昔ながらの落ち着いた町並みの中川辺駅東側界隈を散策しました。


■いにしえの雰囲気が漂う酒屋さん


■白扇酒造~本みりんが有名ですが、この日は純米吟醸の花美蔵を購入。夏は冷酒が良いですね。





■廃業した煙草屋さん。TU号のツノダ自転車の看板が懐かしい。





■タイル貼りの「こばた」が味わい深い戦前の陳列ケース
 


■飛騨川のダム湖を利用したボート競技が盛んで、周辺には散策道や公園も整備されています。
この日も好天に恵まれ、多くの学生がボートの練習をしていました。

撮影:2013/05/03

 


川辺町立川辺西小学校校門(岐阜県加茂郡川辺町)

2013-07-20 | まちかどの20世紀遺産

創立は明治6年まで遡る歴史のある小学校です。
現存する校門は竣工年は不明ですが、台座の上に削り出した御影石の門柱をのせたシンプルなもので、明治~大正期によく見られるデザインです。


■最近は防犯上、がっちりと鍵をかけた校門がほとんどですが、石の柱が2本あるだけのオープンな校門は本来の小学校の姿です
 
撮影:2013/05/03


山川橋/飛騨川(岐阜県加茂郡川辺町)

2013-07-18 | 近代橋めぐり

■山川橋(やまかわ)~飛騨川/岐阜県加茂郡川辺町中川辺~福島
 竣工:昭和12年(1937)
 構造:RCラーメン
 撮影:2013/05/03


川辺町の飛騨川に架かる山川橋は、川辺ダムの建設に伴い初代山川橋(吊橋)が廃止されたため、昭和12年二代目として竣工しました。
昭和58年上流に国道418号が通る新山川橋が開通しましたが、築後70年以上経った現在も地元の人々の生活道路として利用されています。
また川辺ダムの建設によりできたダム湖を利用して、山川橋の上流には川辺漕艇場が設けられ、国体や国際大会など多くの会場として利用されています。
<参考:飛騨川周辺地域の歴史的土木構造物
  

■この日も地元高校のボート部などの練習風景が見られました



■ダムによって水位が上がる前は長い橋脚が見えていました(川辺町HPより)



■東詰より望む



■西詰より望む



■「昭和十二年三月竣工」の銘板が入る親柱


中川辺駅~JR東海 高山本線(岐阜県加茂郡川辺町)

2013-07-16 | 木造駅舎の旅

川辺町にある中川辺駅は、高山線に残る開業時からのの古い木造駅舎の一つですが、今世紀に入って高山線の木造駅舎も徐々に建て替えが進んでいます。
隣の上麻生駅・下麻生駅が2003年簡易駅舎に建て替えられ、ローカル線ならではののんびりした雰囲気が味わえる古い木造駅舎が消えてゆくのは寂しい限りです。


◆中川辺駅(JR東海 高山本線)/岐阜県加茂郡川辺町中川辺470
 竣工:大正11年(1922)
 構造:木造平屋建
 撮影:2013/05/03


■駅舎正面~国道41号線に面し、駅前から東側一帯は川辺町の古くからの町並みが広がります





■駅舎南側



■待合室には木造駅舎にふさわしく、年季の入った木製の立派なベンチが並ぶ



■上り岐阜・美濃加茂方面を望む



■下り高山方面を望む~ホームは跨線橋で結ばれている



■開業時の年月が記された建物資産標



■中川辺の隣駅(下り高山方面)下麻生駅とその次の上麻生駅も同様の開業時からの木造駅舎が残っていましたが、2003年取り壊され簡易駅舎に建て替えられました。
下の写真は在りし日の上麻生駅舎(撮影:2000年9月)


中川辺公民館/旧下麻生町役場(岐阜県加茂郡川辺町)

2013-07-14 | 中濃の近代建築

加茂郡川辺町は美濃加茂市の東側に位置し、町の中央を南北に流れる飛騨川に沿って、国道41号線とJR高山線が通っています。
川辺町の中心はJR高山線の中川辺駅の東側地域で、大正期に建てられた洋風建築の旧下麻生町役場が現存しています。
現在は中川辺公民館として再利用されていますが、明治期~大正期の役所建築の定番である木造下見板張りの洋風建築らしい外観をよくとどめています。 
本格的な様式建築ではありませんが、役場の建物ということで洋風建築を見よう見まねで取り入れ、細部にこだわった造りは、当時の施工者の熱意が伝わってくるようです。
 

◆中川辺公民館(旧下麻生町役場)/岐阜県加茂郡川辺町中川辺1-1
 竣工:大正11年(1922)
 構造:木造平屋
 撮影:2013/05/03


■建物は太部古天神社境内、本殿の東隣に接するように建っています


■建物東側正面~全体のプロポーションは和洋折衷ながら、縦長の上げ下げ窓が洋風建築らしさを演出しています



■建物西(裏)側





■玄関の両脇に並ぶ上げ下げ窓は額縁で囲い、下にブラケットのついた窓台を設けた本格的な洋風仕様
中央の玄関は当初の東側から南側に出入り口を変更しているようです



■軒下にはブラケット(持ち送り)を配し、角の柱も額縁と同色にして柱頭にもオーダー風の装飾を施しています




兼山歴史民俗資料館/旧兼山小学校(岐阜県可児市)

2013-07-10 | 中濃の近代建築

八百津町から木曽川沿いの県道を美濃加茂市方面へ向かうと、、途中に可児市兼山町があります。
兼山町は対岸の八百津町とともに、木曽川水運の港町として古くから栄えた町で、現在兼山歴史民族資料館として使われている旧兼山小学校は明治18年に建てられました。
建物は木造3階建て、建設費は2千円(現在では2億円)という当時としても破格の規模で建造されました。
木曽川に沿った地形の関係で、道路側は2階、川側は3階という珍しい「懸造形式」を採用、玄関を中央に設け1階は職員室と事務室、2階は教室と講堂、地階は雨天体操場を備えた近代的な造りになっています。

※資料館内部はHPでご覧になれます→http://www.city.kani.gifu.jp/gakushuu/bunsin/rekimin/ 
 

◆兼山歴史民俗資料館(旧兼山小学校)/岐阜県可児市兼山674-1
 竣工:明治18年(1885)
 構造:木造3階建
 撮影:2013/05/03
 

■建物正面~入母屋屋根、桟瓦葺、白壁造の伝統的な木造建築ですが、玄関を中央にした左右対称の外観は学校建築の特徴。



■建物裏側~木曽川に向かって傾斜地になっているため川側は3階建てになっています



■千鳥破風の立派な正面玄関





■玄関脇の説明看板には「現存最古の木造3階建て小学校」とあります
     


■資料館の前に、近くにあった吊り橋の兼山橋(T12)の遺構が保存されています
  


八百津のまち歩き(岐阜県加茂郡)

2013-07-02 | まち歩き

八百津の町の中心街は、国道418号と県道83号(本町通り)が交差する荒川橋東交差点から南側の地域で、本町通り沿いを中心に古い町並みが残っています。

■八百津は古くから醸造業(酒・酢・味噌・醤油)が盛んで、通りには古い醸造蔵も残っています



■昔ながらの町並みのたたずまいを残す本町通り











■八百津の町では珍しい戦前の洋風ファサード商店





■木造下見板張りの医院





■今では貴重な日本の田舎町の原風景に出会えます

撮影:2013/05/03