とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

私に出来ること

2013-12-27 21:49:42 | 日記
私に出来ること



「天使と格闘するヤコブ」(1855)ギュスターヴ・ドレ(1832-1883)フランスロマン派


 ギュスターヴ・ドレはストラスブール生まれ。13歳でリトグラフを制作し、15歳ですでに、パリの『ジェルナル・プール・リール』紙に挿絵を発表、16歳でサロンに素描で入選。早熟の挿絵画家である。素描家としてだけではなく、油彩画家としての活動もしていた。聖書、タ・フォンテーヌの寓話、ダンテの組曲などの挿絵を制作した。多作の画家でもあり、1856年だけで、700点もの挿絵を制作している。
 故郷へ帰ることになったヤコブ一行がヨルダン川の支流、ヤボクの渡しで一夜を過ごしていたとき、天使が現れてヤコブと格闘した。ヤコブが勝った。その時に「イスラエル(神が守る人)」と名のるがよい、と神からの祝福があった。(「ヴァーチャル絵画館」より)


 お義父さん、遅くなってご免なさい。やっと、金閣寺に帰ってきまました。綾乃さんも一緒です。今どこに居るんですか。・・・三朗が電話してきました。

 諏訪神社に居る。京都にもタケミナカタは祀られていた。諏訪町にあった。出雲と同じ御射山というところもあった。

 お義父さん、観光に来た訳じゃありません。慎重に行動してほしいです。

 いや、大事なことだ。諏訪のタケミナカタの命が佐久良を護ってくださっていることが分かった。諏訪は不滅だ。

 いや、それは分かりますが、不用意な行動はどうかと・・・。

 慎重さが足りないということか。分かっている。

 じゃ、そちらにこれから行きますから、動かないでいてください。

 いや、その必要はない。私は綾乃さんとは帰らない。

 えっ、どうしてですか。

 もう少ししておきたいことがある。

 えっ、どういうことですか。

 母に会って、今度のことを相談することにした。電話で事情を話したら、向こうの事をよく知っていた。座長とも会ったことがあるそうだ。・・・私にはそういうことしか出来ない。

 こんなときに直截的な行動はどうかと・・・。

 いや、母なら大丈夫だ。婉曲的にきっと旨く話してくれると思う。母と話をするのは今度が最後になるかも知れない。

 そうですかねえ。

 いや、大丈夫だ。・・・だから、ちょっと綾乃さんと代わってくれないか。

 そうですか。・・・じゃ、代わります。

 畝本さん、綾乃です。この度はお世話になりました。

 ごめんなさい。コーディネーター失格です。・・・で、どうでした。佐久良との話は。

 いや、ここでお話しはできません。舞台をご覧ください。すべて分かると思います。

 秘策があるということですか。

 ええ、まあ・・・。表向き敗走ということになるかも知れませんが・・・。

 敗走。いや、よく分かりました。さっき三朗にも話したんですが、これからは別行動ということでお願いします。私は、私にしかできないことがあるような気がしてきました。

 そうですか。分かりました。

 劇団としての統一行動が成功することを祈っています。私は側面的に援助したいと思います。

 ありがとうございます。私も体を張って舞台を務めたいと思います。

 貴女もいずれきっと新阿国座の看板になります。健闘を祈ります。

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