フリージア工房 国道723号店

ハロプロメンバーを応援してアイドル音楽を愛するエッセイブログ

buzz word

2012-10-21 22:25:17 | アイドル etc

 先週ひめキュンフルーツ缶の東京ライブに行ってきました。会場の原宿アストロホールはキャパシティ350人のライブハウス。チケットは完売し、後ろまでぎっしりと観客で埋まる会場でした。オールスタンディングです。
 しかし、歌が始まっても強引な圧縮も起こらず、それでも各人が自分の場所で激しくノッている。ステージのメンバーはひたすら疾走感に溢れる動きで、挨拶やフリートークも手短に済ませてひたすら歌で攻めてきます。どの曲もフルサイズでアンコール含めて23曲を魅せた五人に会場は惜しみない拍手を贈るのでした。

 ひめキュンという名前とメンバーの風貌から、グループのイメージは可愛いアイドルポップスを歌っているのだろうと思われそうだけれど、彼女達は基本的にロック的世界の空気感の中でライブを行っている。ステージの後ろにはメンバーをモンスターに見立てた幕が掲げられ、グッズ売場で売られているTシャツは黒をベースに荒々しい文字を並べたロックテイストのデザインのシャツが多い。
 可愛い女の子がガールズロックを歌うという流れは別に珍しくもなく、ハロプロにもBuono!という存在がいるし、他の事務所にも存在しています。しかし、それらのガールズロックアイドルとひめキュンが決定的に違う点は、毎週のように小さなライブハウス(松山サロンキティホール)でライブを行い、レパートリーにロックバンドのカバー曲がいくつかある事。そして、そのカバーがアイドル側からの一方的な作品ではなく、カバーされた側もひめキュンの存在を認知し、いわば共存している状態である事。この日のライブでも、カバーされている側のメンバーが観に来ていたそうです。
 そういう下地があるから、グッズをロックテイストにしてもそれほど違和感も感じず、むしろひめキュンヲタはそういうロックテイストを愛して積極的にグッズを身につける。だから、そういうテイストが苦手な人は近寄りがたい存在であるかもしれない。でも、それがひめキュン現場であります。
 勿論、これは東京での話だから地元松山ではもう少し幅広くお客さんを迎え、ノリも違う事は付け加えておきます。

 今回のツアーで歌い始めたカバー曲に「buzz word」という曲があって、ライブに向けた予習のために私はオリジナルであるニッポリヒトのバージョンのMVをYouTubeで見ました。
 そこに展開されている映像は、笑いながら踊りながらパイを受ける女の子。次々とパイを受けながらも彼女は歌う事を止めず、しまいには変顔セットを身につけて自らを道化として歌を続ける。そして、更には服を脱ぎ捨て水着になって歌う。
 その姿は様々な情景をそこに重ねる事が出来て、それは世の中の不条理を、悲しい現実を、ひたすら明るく表現している映像でありました。

 世の女の子は綺麗でありたいと願う。しかし、全ての女の子が自分の理想とするルックスとスタイルを手に入れられる筈はなく、努力やお金だけでは乗り越えられない壁に気づきながら日々を歩んでいく。心に涙を溜めていても、それは表には見せずに笑顔を振りまく。それなのに次々と現れ、止まない壁の出現と存在。
 いつしか開き直り自虐に走ったり、体で勝負をしたり、しかし力を込めていけばいくほどに傷口は広がっていく。
 そうした葛藤の行き先に開き直った者の一発逆転もあるかもしれない。しかし、成功者も挫折者も、みんな夢と現実のギャップから逃げる事は出来ない。

 ニッポリヒトのMVを何度か見てから臨んだひめキュンバージョン。アレンジも少し音を軽くしていたりして変化していたし、メンバーもニッポリヒトほど声を張り上げて歌う事もないから、一見すると淡々と歌が流れていくようにも感じた。しかし、ライブでの歌は生き物であるから、歌が終盤に差しかかると次第に声に力がみなぎっていくのがわかりました。そう、メンバーも曲と一緒に成長しているし、変化をしている。

 メンバーはまだ本心としてはこの曲の歌詞を実感出来ていないまま、ただそのドラマチックな曲の流れに身を委ねながら歌っているだけかもしれない。しかし、いつの日か夢と現実の間には見えない壁がある事を知った時に、この曲を思い出してほしい。この曲は人生を歌い、世の中を歌い、そしてアイドルを歌っている。

 私がよく「アイドルには今しか歌えない。或いは、今だからこそ歌うべき曲を大人が提供してあげてほしい。大人の都合で歌わせたい曲を提供するのは愚かな行為」というような事を書くのは、アイドルというジャンルは儚さを表現するジャンルであるからなのです。
 だからこそ、アイドルが表現する言葉について作り手は繊細であってほしいと思っています。

buzz word


コメント
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