3.11以後の日本

混迷する日本のゆくえを多面的に考える

縮む中間層ー日経「経済教室」白波瀬氏の論文を考える

2011-11-01 07:40:22 | 福祉政策
2011年10月24日の日経「経済教室」に白波瀬佐和子氏が縮む中間層「現役世代の再分配強化を」という論文を載せている。

ざっと読んで、この人はいつからこんなに体制的になったのかと思う。
東大教授になったとたんに体制的になったのか?いや、もとから?

「・・・野田政権は、貧困ではなく中間層をキーワードに掲げ、成長路線の復活を手探りしている。・・分厚い中間層の復活・・・政策対象を貧困層に代表される少数派から中間層という多数派の切り替えるなど、政治のかじ取りに若干の変化がみられる。・・・」

貧困層は少数派なのか?
中間層が縮みだれもが貧困層に転落しやすくなっているのが、最近の現象である。その結果、中間層が縮んだのである。むしろ、だれもが貧困層に転落しやすくなっているのである。そこに、中間層の危うさがあり、分厚い中間層など復活できない構造があるということを知るべきである。

「現政権が手本のひとつとするスウエーデンは、現役層の再配分効果率が全般に高い。米国も程度は低いが、日本に比べると現役層の再分配効果率は高い。日本は、現役層の比較的高い就業率を背景にそこでの再分配効果が抑えられ、社会保障給付の恩恵にあずかる層が高齢者に偏っていた。」

ここで、白波瀬氏は、現政権がスウエーデンを手本にしていると述べているが、少なくとも野田政権は北欧をモデルとしているとは到底いえない。これは、事実誤認である。ずっと規制緩和し、「小さい政府」をめざしてきたのが現政権である。さらに、「再分配効果は高齢者に偏っていた」と述べているが、公的年金という形でのみ再分配効果を図ってきただけで、偏っていたというのは間違いである。つまり、社会保障は老齢年金という形で、所得の再分配がなされるだけで、そのほかの部分では無策であっただけである、というのが正しい分析だと思う。さらに、白波瀬氏の掲げた図「世帯主年齢階層別にみた再分配効果」は世帯主(24-)を中心にした図であり、子ども世代への再分配効果をみることはできない。

結論として、白波瀬氏は
「同じ中間層でも再分配効果の恩恵を受けるものと受けないものが混在する。これから中間層の拡大を目指すのであれば、再分配効果を受けていない現役層への対応を重点的に考える必要がある。所得税の累進性を強化して、再分配効果を高めることと、雇用創出という意味で経済成長対策が必要」と述べる。

所得税の累進性を強化することは賛成、すぐにやるべきである。
しかし、経済成長対策に結局帰結するというのはどうなのか。

経済成長ではない枠組みをつくることこそ3.11以後の日本に必要な発想なのではないか?
経済成長→原子力発電の維持という野田政権の思惑をなぞる論文を日経「経済教室」に書いてしまう白波瀬氏の変説に憂うしかない。




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