さいふうさいブログ

けんちくのこと、日々のこと、いろんなこと。長野県の建築設計事務所 栖風采プランニングのブログです。

いよいよ曳家。そして水平垂直を直す。~佐久の古民家再生現場~

2017年11月09日 | 現場14 佐久市 古民家改修計画

非常に遅れている佐久の古民家再生現場でございますが

ようやく揚前・曳家工事がクライマックスを迎えました

 

9月から10月にかけて曳家さんによる基礎工事が終わり

いよいよ建物を移動(曳家)です。

  

この建物が移動する瞬間

見たかったのですが、、、

親方ったら

「午後になるかなぁ?」

と言いながら、午前中にさっさと移動してしまい

私が現場に到着した午後には後の祭り。がーん

 

で、

私がわーわー言ってると

親方はにかにかしながら、外してあった箱ジャッキを改めてセッティングして下さり

  

こうやってな、

こうしてな、

押すんだよ!

 

と。

曳き家っていうんだから、引くものだとばかり思ってたら、押すんですって!

 

今回は、北へ3尺、西へ尺5寸、移動したのですが、

私はてっきり、北へ移動してから、西へ移動する、という2工程になるとばかり思い込んでたのですけども

斜めへ移動という最短コース! つまり1工程で済むというやり方でした。

 

なーるーほーど!

 

でも斜めって、

図面で書けば斜めの角度は正確に描けても、現場でその角度、どうやって精度よく移動できるわけ?!

 

 

見たところ、箱ジャッキと鉄板と鉄のコロと枕木や支物の薄板多数、このシンプルな道具しかないけれども、

どうやってーーー?!

って、私が騒いでるのを親方はきっと心の中で笑いながら聞いてたと思います(笑)

(そう言えば、別の案件のお施主さんが、私の描いた手描きの図面を見て、どうやって?どうやって?手で描けるんですか?!と驚かれた事がありました。ただシャープペンシルと平行定規と三角定規だけで描きましたけど? と返答しましたが、もしかして、それに似てるのかしら? いや、それとは違いますよね、きっと

  

曳家業2代目の親方。

道具類は先代のものを使ってるので全て手動式。

この箱ジャッキ、カッコよ過ぎ!

(いやいや格好とかそういう問題じゃないんですけどね)

  

近年は、油圧ジャッキやコンピューターで制御するやり方など曳家の工法は発展していますが、

この親方のやり方は、全て手動なので、ホントこういう基本的な技術はいつまで経っても通用するということなんでしょう

しかし体力は要ると思いますが

(こういう技術を習得したい体力ある男性、居ないでしょうかね。親方の元で10年程居れば、そのまま道具と一緒に曳家業、独立出来ると思うんだけど! 私が親方を紹介するので、もし興味のある人がいましたら、さいふうさいに連絡下さい!)

 

  

ひとまず建物は無事に移動完了しました

 


 

さて次は下ろします

この建物を下ろすのが、飛行機の着陸と同じように?一番の難所です。

難所、言いかえれば見所とも言えるのですが

  

まず、建物を下ろすために準備が必要です。


・水平の基準とする部分から既存の柱の長さを全て確認(現場監督)
・柱長さを揃えるために現場監督の指示にて柱をカット(職人さん)
・柱の長さの確認が終わった後は、柱のほぞの確認。
・既存柱のほぞが、新たな土台のほぞ穴に入るように、微調整加工の墨出し(現場監督)
・既存ほぞを微調整加工(職人さん)

これらに丸一日かかりまして、

次の日にいよいよ建物を下ろす作業です。

   

曳家の時は、まんまと親方に出し抜かれましたので(笑)

下ろす時こそは見逃すまい!と早めに現場入り。

私を見て親方は

「どうしても見たいんだな」

と笑ってる。

  

もちろん!!!

   

揚前と曳家をする現場は、20年近く古民家再生をやってきてる我々でも、そうそうあるものではありませんので!

 

早速、親方と相方の二人が下ろし始めました。

手動のジャッキアップを少しずつ下げては枕木を外す、支物を外す、

何度も何度も繰りかえして建物を下ろしていきます。

手動のジャッキ。

油圧じゃないので、手でキコキコ♪

全部で確か10か所あるジャッキを二人で同じ回数回しながら一定に下ろしていくのですが

家が下りる度に、軸組みがギシギシ音がします。

 

 

既存柱のほぞを、新規の土台のほぞ穴に入れないといけないのですが、

既存の柱が捻じれていれば柱のほぞも捻じれているので、

それをどうやって入れるんだろうと目が離せませんでした

新設の土台は米ヒバを使用しましたが、KD材(人工乾燥材)は使いませんでした。

ので、

多少ほぞ穴に無理をしても一応、大丈夫なはず、

と思っていても、冷や冷やして私は見てました^^;;

写真はちょうど仕口部分にほぞ穴がある部分で、ここに下りる柱が特に捻じれていたのです

(KD材~人工乾燥材の場合だと、粘りなく下手な力が掛かるとパキっと欠けて割れてしまうこともあるんです・・・)

ですが、無事に納まりました!

 

これは別の個所ですが、定点観測してみますと

 
徐々にここから下ろしていきます。
 

 

ほぞが少し入った状態。

この辺りから雨が降り出してきてしまった・・・

 

結構な雨が降ってましたけど、途中でやめる訳にはいきませんので最後まで下ろします。

やったー!無事に着陸?いたしました

  

ちなみに土台の下の基礎パッキンは、さいふうさい定番?の御影石です。

樹脂製の基礎パッキンですと実績がせいぜい40年くらいのようなので、まだ耐用年数の実態が分からない。

古民家の場合はその耐用年数は現行の新築よりもずっと長い事は実証されている訳で、

こういう土台周りは簡単に修理できるところではないだけに、特に信頼の高い材料を用いたいものです

 

ちょうどこの建物を下ろすクライマックスな時に、

お施主さんの御親戚一同様が現場見学に寄って下さいました

「いやー感動しました!」と仰って下さる若い御親戚の方もいて、

この工事がどんな風に皆様に見えてるのだろうか、と思いつつも、何か心に残ってくれれば嬉しいなと思いましたです

 

   


 

さて次は、建物の水平垂直を整えていきます!(よろび直し)

これがまた重要

 

傾いた建物をそのまま放置する事は、実は建物にとって好ましくはありません。

「力の合成と分解」って、覚えているでしょうか?

調べてみると、中学3年生ぐらいか高校で習うみたいなんですけど

建物の荷重(力)が柱を伝って土台や地面に真っ直ぐに伝わらなければならないところ、

もし建物が傾いていたら、その荷重が分解され、分力が発生してしまいます。

って、どういうこと?

となるかもしれませんが、

ざっくり言えば、垂直方向以外に力が分散?分解され、ますます傾くって事です。

 

ただ、柱や軸組みは、様々な造作材で繋がって固まっていますので、

少し傾いたからと言って、瞬く間に傾く訳ではありません。

でも、

じわ~じわ~とゆがんでいきます。。。

 

近年、古い家を直して利用?活用する事を 

古民家再生とか古民家リノベーション、古民家リフォーム、古民家改修、等など

いろんな呼び方がなされ、あちらこちらで目にする事が多くなりました。

古い建物を直して使う事はとても意義のある事ではありますが、

しかし、その修理の内容を見てますと

「使えればいい」程度の簡易的な直しも見受けられ、

(もちろん、その建物毎に状態は違うとは思いますが)

もし建物の水平垂直が狂っているのであれば、

悪化する前に手を打っておくのが理想ではあります。

ですけれども、よろび直しはそう簡単な事ではないだけに、いつ直すかのタイミングが問題。

改修する機会があれば、その時にこそ、一度よろび直しを考えてみる事をお勧めします!

    

「水平垂直を直す」よろび直しは、実は重要でありながら放置されたまま改修されてしまう事が多いもの。

建物が傾いたまま床だけ平にする、というようなその場しのぎのやり方もありますが、

それは建物の水平垂直を戻す(健全にする)ものとは異なります。

   

では何故、建物が傾いていても、水平垂直を直さずにリフォームを済ませてしまいがちなのか。

その理由は、水平垂直を直すには「家全体に影響」が出ますので、改修範囲が大きくなりがちなんですね。

そうすると、ちょっとのリフォームのつもりが、大掛かりな改修工事に発展してしまい、

結局、予算や工期、或いはお施主さんの価値観と言いますか、そこまでやるのはちょっと・・・という感じになりがちで、ついつい後回し。

そして関わった業者さんも見て見ぬふり、、、になりがちなんですね

  

でも、その後回しって、いつやるのか?

  

結局、目先の問題だけを解決する部分的なリフォームや改修をやり続ける程、

借金が雪だるま式に増えていくように(例えが適切じゃないかな?

どんどん根本的な修理が困難になっていきます。

 

そしていざ、よろび直しをやるぞ!と思い立った時には

今までやってきた修繕のつもりの工事が最終的にはやり直しにもなりかねません

 

ですので、建物が傾いていたり土台が痛んでいる場合は、

いつのタイミングで、その傾きや土台を直すかがネックになります。

代々住み継がれてきた古民家を見てますと、何十年かに一度は大改修を、どこかの代で頑張ってやっているケースが多いです。

 

今回のこの現場も、正しくその大改修事業を当代お施主さんがやっている訳なのですが

恐らく、今の、この揚前状態の時が、お施主さんにとって

「ここまでやる価値はあったのだろうか」

一番不安に思う瞬間だと思います。

  

でも、誰もが「もう引き返せない」と腹をくくる瞬間でもあり

(以前ある現場では、「もう私達(施主)はまな板の鯉のようなものね」って言われた事もあります^^;;)

最後、形になった時に本当の意味でここまでやって良かったのかどうか、納得して頂けるかどうかが決まります。 

それまで我々も頑張るしかない!

  

さて、無事に建物が下りたからと言って、これで終わりではなく、

ここから水平を調整します。

基準とする水平ラインから柱の長さを再度確認して

柱と土台の間に隙間が空いてしまったところには薄板パッキンを差し込み調整します。

水平(柱の長さ)が決まったら、次は垂直です。

  

よろびを直す時は順番を間違えないように、水平が先で、垂直が次。

要するに、

柱が沈んで傾いている状態は、あちこち不揃いな台形みたいな状態になってますから

水平な新たな基礎と土台に柱を下ろすことで水平を取り戻します。

そうすると台形だったのが、平行四辺形(菱形)の状態になります。

 

平行四辺形になったところから、傾いている柱を全体で起こします。(家起こし)

柱が垂直になるまで筋交いワイヤーを調整して建物を引き起こすのですが、

長年に渡ってついてしまった建物の傾きや捻じれ癖、は、そうそう素直に真っ直ぐになってはくれないもの。

取りあえず、現場判断で、起こせるところまで起こして少し様子を見る、という事になりました。

癖は一気に直さず、徐々に。

 

ちなみに建物の傾きの許容範囲は、「既存住宅状況調査方法基準」によると

1000分の5までが基準となってるようです。

 

1000分の5って、どれくらいかと言えば、古民家の場合、内法の建具(引戸)で見れば分かりやすいのですが

座敷等の引戸の高さが5尺7寸(1730㎜)とすると、建具と柱の間に8㎜強の隙間が開くぐらいです。

ざっと1㎝弱。

 

これを許容範囲とするかどうか、

私としては、8㎜かぁ、、、という感じですネ

 

出来れば1000分の3くらいまで直したいものです。

 

と、現場監督な主人にぶつぶつと小言を言ってると、

現場では1分、2分くらいは許容範囲だぞ、と言われ、

でもー。。。と渋い顔をしてましたら、

 

現場から後日1000分の3くらいまで起こせたとの報告がありました。

(まだ現場に確認に行ってないのですが

   

そんな訳で、

ようやく本建部分の揚前・曳家工程が

終了致しました!

あー、長かったですねぇ。。。

 

次は下屋部分の基礎工事を・・・と思ったら、

またもや親方、別の現場へ呼ばれて行ってしまった

ホントに引っ張りだこ! 

出たり入ったりで超忙しい親方です。

 

なので、ここでお願いです!

親方のところで弟子を受け入れて下さるという事で

これからどんどん建築が余って困る時代になるのですから、

そういう建物を世の中に活かすための曳家・揚前・家起こし技術を習得したいと少しでも思う方がいましたら、

弟子入り、どうでしょう 私、紹介いたします

  

親方みたいに引っ張りだこな職人さんになれるかもしれませんよ

ただし、体力は必須!

枕木を何百本も運んでは組み、またそれを解体し運ぶ、の繰り返しな曳家業ですからね

 

 

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