さいふうさいブログ

けんちくのこと、日々のこと、いろんなこと。長野県の建築設計事務所 栖風采プランニングのブログです。

進んでいるように見えませんが、地味に進んでいます^^;;~佐久の古民家再生工事~

2018年07月15日 | 現場14~佐久市 古民家改修計画

現場は進んでいるのか?と心配になるくらい

見た目に進んだ感のしない佐久の古民家再生現場でございます

現場の美しいお庭。

現場へお邪魔する度、季節のお花が出迎えてくれます

 

さて現場は、3月下旬頃からようやく大工工事が始まりまして、只今大工工事、真っ最中でございます。  

大工工事が始まってからというもの、、、イロイロと悩み多き現場となっておりまして、

何かと現場からどうする?と判断を迫られてる私でございます、、、

 

現場からのどうする?な問いかけは

設計仕様では上手く施工が出来ない、という事を意味している訳で

(再生工事ではよくある事ですが

そのどうする?に直ぐに答えが出せない場合は、

宿題?課題みたいに持ち帰って事務所であーだこーだと悩みます。。。

いつまでも悩んでるとそのうち、寝ても覚めてもどうする?って現場監督の旦那さんに詰め寄られるワタクシ

   

中でも今回、大きな変更を強いられたのは耐力壁の仕様変更

設計上では、ボード状の面材で耐力壁を作る計画だったのですが、

施工・工程上、難しいという事で、

出来れば筋交で耐力壁を作らせてもらいたい、という大工さんからの要望。

 

その理由としてまず、

揚前工事の際によろび直し後に仮筋(かりすじ)を打っているのですが、

既存の壁や天井を残している関係で、それらを逃げて(避けて)仮筋を打たなければならず、

仮筋が耐力壁を予定している軸組の側面に打たれてしまってる箇所が多数あり、

面材耐力壁の施工が出来ない、という事態になっていたのです。

2018年3月時点 仮筋状況

  

  

更に、

長きに渡ってついてしまった建物(軸組み)の癖(歪み)というのは、そう簡単には直らず、

元の癖(歪み)に戻ろうとする反力が働きます。

実はその力が結構大きいもので、

実際、仮筋交は揚前工事の時にビスで留めてあったのですが、

大工工事が始まるころには、そのビスが折れてしまっていたそうです。

で、再度、大工さんによろびを直してもらい、もう一度、仮筋を打って下さいました。

今度はビスを使わずで!

 

現場では、現場監督な旦那さんも大工さんも

「やっぱりビスは駄目だな。釘じゃないと」と言ってました。

 

ビスは、ビスの方向の引っ張りには強いので、材料同士の締結・固定にはいいのでしょうけども

ビスと垂直方向に働くせん弾力には弱いため、変形の力が加わった時には粘り無く破壊してしまうそうなんです。

 

一方、釘は、釘の方向の引っ張り、引き抜きはビスに比べれば弱いのですが、

釘と垂直方向に働くせん弾力(変形)には粘ります。

だから地震などで建物が変形しようとする力に抵抗させる耐力壁の仕様規定はなんですね。

今更ながら、現場でビスが破断した仮筋の状況を目の当たりにして、なぜ釘なのか、という事を実感しました。。。

 

  

このように、

仮筋のビスが破断するくらいの反力が働いている中で工事を進めていく(耐力壁も作っていく)訳ですから、

施工途中で恐らく面材の耐力が持たない(割れる)だろう、という現場の見解でした。

というのも、私が使おうと考えていた面材は調湿性のある無機質系のボードでしたので粘りは恐らくあまり無い材料

確かに、現場の仰る通りだと思いました。はい。

  

古民家再生は新築では無いですから

耐力壁の考えがどうの、計算がどうの、って叫んだところでそれは机上の考えに過ぎません。

筋交を使わない耐力壁にしたいと私は考えていたのですが、

現場の意見を聞けば尤もでしたので、

ここは素直に耐力壁の仕様を面材仕様から筋交仕様に変更する事にしました。

なので、

壁量計算等も全部やり直し、継手仕口の接合方法も全部見直しです

そうは言っても既に基礎工事は終わっているので、その状態から出来る継手仕口の接合方法で耐力壁を考えないといけません。。。

更に構造材、下地材も変更しなければなりません。

ほぼ、設計まるごとやり直しみたいな状況です

・・・

さて次にでは、

どこにどうやって筋違を入れるの?な問題になります。

  

そもそもこの現場の古民家の2階が乗ってる部分(本建部分と私は呼んでる)の1階梁には、胴差と呼ばれる部材がありません。

あっても差鴨居。あとは2階まで通し柱です。

となると、どうやって筋交を入れるのか、って話になりまして

胴差を入れなければならないだろうと、後入れすることになりました

 

古い柱の丸みに合わせて、丁寧な加工がなされてますね。

こういう技能が古民家再生には求められますので、なかなか簡単には進みません

一間柱間毎にこのような胴差(厳密には胴差とは違うのですが)を、

其々既存の柱に合わせて加工しては嵌めてもらってます。

ここに見えてる外壁部分の柱は全て一間毎に2階まで伸びている通し柱。

それを胴差的な材料で挟み込む感じになりました。

因みに、この外壁面は外張り断熱を施し、簓子下見板張り仕上げで大壁にします。

  

  

このように、一先ず古民家の一番中心となる本建部分を固め、

次にその周りに配置される下屋部分に取り掛るという現場の段取りのようです。

まずは、当初からあった南側の下屋部分。

この下屋は設計では「残す」考えて進めておりました。

他の北側の下屋などは近年改築、増築されたものでしたので、そういうものは撤去しまして

平面プランに合わせてやり直しすることにしています。

南側

 

この南側の下屋。

見た目ではこのまま使えるかな、と思ってたのですが

やはりそこは大工さんが直し始めると

既存の垂木が結構、傷んでいるという事で、一度全部垂木を取り外し、

垂木一本一本、確認した上で、使える材を選定し、その他は新設する事で進めていくことになりました。

いくら設計で、現状の材を使いたい!と言っても、

解体したり外してみないと分からない部分が多々ありましてその調整が大変ではあります。

2018年5月時点 既存の垂木を外したところです。

 

そして今度は、屋根の断熱、通気層をどういう構成で納めるのか、という宿題が

今回、設計では、外壁4面あるうち、南面だけは真壁(一部大壁)、妻側の外壁は簓子下見板張り仕上げで大壁、北面はモルタル大壁、という、

ちょいと面倒な事をやってまして、現場に入ってから詳細を悩もう、と思ってた、その時がやってきた訳です

で、

現場監督の旦那さんとまたどうする!な日々(泣)

  

いやホントに、新築の方が楽だよね~って声が周りから囁かれること必至ですが

古い家には古い家にしか残せない良さがあるので、そこは我々が頑張るところです

  

で、色々検討した結果、ようやく屋根が納まりました!

屋根に使う断熱材はいつものアキレスQ1ボード。

相シャクリ付の断熱材で滑り止め付きという施工者想いの断熱ボードです。

 

南下屋は、殆どポーチなので断熱材を全面に入れる必要はないんですけど

施工上、その方がやりやすいというので全面に入れることにしてあります。

もし、いつかこのポーチを利用してサンルーム、縁側などの部屋にしても

屋根断熱になってるので断熱ラインは大丈夫とも言えます 

この軒先の隙間は通気用です。

軒先換気、、、悩みましたです。

オーバーハングを転用しようと考えたのはうちの旦那さん。

雨樋が取りつけば目立たないはず。

  

それにしても、垂木を全部一度取り外しただけあって軒先ラインが綺麗です

 

そして軒裏はまだ塗装が中途半端ですが、こんな感じ。

軒裏現しな下屋です。

先行塗装した方がいい部分を先に塗ったのですが

塗装屋さんが大工さんを褒めてましたね

仕上げ職人さんが最終的に大工さんの良し悪し分かるものです。

 

軒裏を見上げても、一見、なんら昔と変わらないような仕上げですけど、

屋根はこれだけ積層しています

↓↓↓

もう昔の屋根とは構成が全然違いますね

野地板は2重ですし、断熱と通気層という考えが昔の家にはありませんでしたしね。

 

  

さて、まだまだこんな状況ではありまして

お施主さんも、この家の周りのご近所さんも、

一体、この家、どうなってるんだ?と心配されてると思うんですが

見た目には進んでないようでいて、ちゃんとコツコツ進んでいます

やっと南の下屋が納まったところで、北側下屋の建前がそろそろです☆

 

 

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