サッカー日誌 / 2015年09月12日


ハリル・ジャパンの課題(下)


「攻め」に明るい材料

W杯アジア2次予選
日本 3対0 カンボジア
(9月3日、埼玉スタジアム=日本テレビ)
アフガニスタン 0対6 日本
(9月8日、テヘラン=TBSテレビ)

★状況に応じた「攻め」
 9月上旬のワールドカップ・ロシア大会アジア2次予選の2試合で、日本代表の「攻め」に明るい材料があった。
 その一つは、状況に応じた攻めができたことである。
 格下の相手が、ほとんど全員を守りに下げて、後退守備をする。それを攻め崩すのは、よほど力の差がないと難しい。
 一つの方法は、相手の守りの外側からのミドル・シュートである。
 もう一つは、ドリブルによる食い込みである。
 カンボジアとアフガニスタンを相手にした2試合で、この二つの「攻め」を使い分けて後退守備を攻め崩した。
 状況に応じて攻めを使い分けたプレーヤーの判断力とハリルホジッチの監督の用兵は、W杯アジア予選を勝ち抜くために、今後も役立つだろう。
 ただし、コーナーキックやフリーキックからの得点がなかったのは残念だった。

★本田と香川の役割分担
 日本の「攻め」の明るい材料が、もう一つあった。
 それは、本田圭佑と香川真司の役割分担の形が見えてきたことである。
 今回の2試合では、本田が主として「攻めの組み立て役」となり、香川がゴールをあげた。
 この2人が、現在の日本代表チームの「攻め」の中軸であることは明らかだ。2人ともシュート力があり、組み立ての才能がある。
 しかし、2人が同じようなことをしているのでは、効率が悪い。
 もちろん、それぞれが、どういう役割を担うかは、相手によりけり、場合によりけりである。
 トップ下に香川を入れるか、本田を入れるかも、相手によりけり、場合によりけりだろう。
 その組み合わせの選択肢が広がったように思う。

★ストライカーは多士済々
 「決定力不足」「ストライカーがいない」が、これまで、日本のサッカーを批判するときの「決まり文句」だった。
 ところが、今回は2試合で9点をとった。
 もちろん、相手によるわけだが、ゴールをあげる力が、チームとして十分にあることを示した。
 ストライカーは、本田圭佑、香川真司、岡崎慎司のほかに、原口元気、宇佐美貴史、武藤嘉紀が起用された。
 多士済々である。
 人材は育ってきている。
 これまでは、活用されていなかっただけではないか?
 というわけで、日本代表に「攻め」では、明るい材料が多かった。
 ただし、勝ち進めば対戦相手のレベルが上がってくる。
 そうなると「守り」と「逆襲速攻」が、今後の課題になるだろう。



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サッカー日誌 / 2015年09月10日


ハリル・ジャパンの課題(中)


ドリブルによる攻め

W杯アジア2次予選
アフガニスタン 0対6 日本
(9月8日、テヘラン=TBSテレビ)

★原口の先発起用
 ワールドカップ・アジア2次予選の9月第2戦で、ハリルホジッチ監督は、原口元気を先発メンバーに起用した。
 ドリブルが得意の24歳の若手である。
 ハリルホジッチ監督は、カンボジアとの試合では、ミドル・シュートで相手の後退守備を崩した。したがって、アフガニスタンは、ミドル・シュートへの対策を考えてくるだろう。
 後退守備を攻め崩す方法には、ミドル・シュートのほかに、個人のドリブルによる攻め込みもある。
 アフガニスタンとの試合では、個人のドリブルを生かして相手のミドル・シュート対策をかわす考えではないか?
 その狙いでの原口起用ではないか?
 そう推察した。

★ドリブルで先取点の起点
 アフガニスタンは、カンボジアほどの後退守備ではなかった。ボールを持っている日本のプレーヤーに対して、1人あるいは2人が積極的に前に出て、つきまとった。
 相手が出てきて守るのであれば、それを個人でかわすのが有効である。
 向こう気が強く、ドリブル勝負が得意な原口の起用は的中した、
 前半10分、原口は中盤の左サイドでボールを受けると、ドリブルで中央に持ち込み、香川にパス。香川が反転しながらミドル・シュートを決めた。
 これが、きっかけで6対0の大勝になった。
 ハリルホジッチ監督は、カンボジアとの試合の終了近く、すでに勝利が決定的だった後半38分に原口を交代出場させている。次のアフガニスタンとの試合での起用を想定しての用兵だったのだろう。

★ハリル監督の用兵が勝因
 アフガニスタンは、カンボジアほどの後退守備ではなかったが、日本が一方的にボールをキープしていたので、しだいに押し込まれて、守りに追われる形になった。
 日本は、守備ラインも押し上げて、相手を包み込むように攻めた。
 こういう形のとき、パスの組み立てだけでシュート・レンジへ攻め込むのは難しい。
 相手は、ボールを持っているプレーヤーに対しては、前に出て厳しくつきまとい、パスの組み立てを妨害する。
 攻めるほうは、つきまとってくる相手を1対1でかわして突破口を開く必要がある。
 原口元気の先発起用は、そういう試合展開を想定してのものだっただろう。
 ハリルホジッチ監督の先を読んだ用兵が、アフガニスタン戦の勝因だったと思う。



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サッカー日誌 / 2015年09月09日


ハリル・ジャパンの課題(上)


「密集後退守備」を崩すには・・・

W杯アジア2次予選
日本 3対0 カンボジア
(9月3日、埼玉スタジアム=日本テレビ)

★ミドル・シュート
 ワールドカップ・ロシア大会のアジア2次予選第2戦で日本はカンボジアを攻めあぐんだ。
 一方的にボールをキープして攻めていたのだが、なかなか得点できない。
 相手のカンボジアが、ほとんど10人を守りにまわして、ゴール前を固めていたからである。
 こういう徹底的な「後退守備」を攻め崩すのは難しい。
 中盤でパスを回しても相手は前に出てこない。
 ゴール前へ放り込んでも、相手の人数が多い上にゴールキーパーがいるから、ヘディングで勝つのは難しい。
 こういう後退守備を攻め崩す方法の一つは、ミドル・シュートである。
 相手の守備の外側から直接ゴールを狙う。
 フリーでシュートを打たせないように相手が、前に出てくれば、ゴール前の密集守備を乱すことが出来る。

★密集守備を崩す
 しかし、相手の守備がゴール前に密集していると、外側からゴールへのシュート・コースを見つけることは難しい。
 根気よく攻め続けて、相手の密集守備に隙が出来たら、見逃さずにシュートする。チャンスを逃さない鋭い判断とシュートの個人的能力が必要である。
 前半28分に、ようやくこじ開けた先取点は、本田圭佑の鋭い判断とシュートの巧さがものをいった。
 さらに、外側での攻めの組み立てでミドル・シュートのチャンスを作ることも必要である。
 後半が始まって間もなくの、吉田麻也のミドル・シュートによる2点目は、そういう形だった。
 ハーフタイムに、ハリルホジッチ監督が「もっとミドル・シュートを打て」と指示した結果だという。
 後半16分に香川真司が3点目をあげて3対0で日本代表の完勝。結果として問題はなかった。

★CKからのゴールを
 しかし、34本のシュートを放ちながら、なかなか点が入らないのには、いらいらした。
 相手のシュートは1本だけの一方的な内容だったにもかかわらず、である。
 カンボジアの守りの「がんばり」は評価すべきだろう。
 しかし、ミドル・シュート以外の方法で崩せなかった日本の攻撃にも問題がある。
 密集後退守備を攻め崩す方法は、ミドル・シュートだけではない。
 セットプレーを生かすことも重要である。
 日本にコーナーキックが12回もあった。そのコーナーキックを1度もゴールに結び付けられなかった。
 34本のシュートから3点しか生まれなかったことよりも、12回のコーナーキックが生かされなかったほうが残念だ。


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サッカー日誌 / 2015年09月05日


東京五輪のエンブレム撤回


「原作者」に基本的な責任

東京五輪組織委員会
(9月1日、東京都)

★類似、盗用の疑い
 2020年東京オリンピックのエンブレム(標章)が、使用取り消し、白紙撤回になった。
 公募で当選した佐野研二郎さんの作品に、類似、盗用の疑いが相次いだためである。
 当然の結論だと思う。
 これほど疑いをもたれ、世間の信用を失った作品を、オリンピックのPRのために使い続けるのは実際的でない。使用を取り止めて出直すほかはない。
 佐野さんと組織委員会の立場(権利と義務)の問題は、別に考えるべきだろう。
 マスメディアで伝えられたところでは、デザインの専門家の間では「盗用とはいえない」という意見が多いようである。
 同じ図形を使っていても、その組み合わせ方のアイデアが違うということらしい。
 シロート目には、極めて似ているように思えるのだが…。

★事前チェックは出来ないのか
 とはいえ、デザインの「原作者」である佐野さんの責任が追及されるのは当然である。
 模倣であれば、もちろん問題だが、オリジナルであるにしても、似たような先行事例がないことは、作者がまず、チェクすべきである。
 アカデミズムの世界で研究論文を発表する場合、同じ分野の先行論文をチェックするのは常識である。
 「ヒトとチンパンジーは同じ祖先を持つ」という論文を発表するとき「ダーウィンの進化論を知らない」いうことでは通用しない。
 しかし、世界中のデザインを、すべてチェックするのは、難しいだろうと思っていた。
 ところが…。
 ネット上で図形を入力すれば、似たような先行デザインを検索できるらしい。

★ネット上での検索
 その検索機能を使って、多くの人が,佐野さんの、いろいろな作品をチェックした。その結果、類似した先行作品があることが、ネット上で次つぎに指摘された。
 ネットで調べられるのであれば、佐野さん自身が、あらかじめ先行事例を検索することが出来たのではないか?
 佐野さんが、自分の頭のなかだけでデザインを生み出したのだとしても、すでに公表されている類似のデザインがあれば、世間から独創性を認めてもらえないのは当然だ。
 公募に応ずる前に、作者が自分で先行作品をチェックする慣行は、デザイナーの世界には、ないのだろうか?
 佐野さんの作品採用取り消しの決め手になったのは、デザインの使用例として示した映像で、ネット上で公表されている写真を、そのままコピー・アンド・ペーストしていることが発見されたことである。
 こうなると「五輪エンブレムのデザインは模倣でない」と言い張っても信用されないのは、やむを得ない。



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サッカー日誌 / 2015年09月03日


新国立競技場の新計画(下)


観客席の上の総屋根

関係閣僚会議で決定、公表
(8月28日・首相官邸)

★旧国立競技場との違い
 新国立競技場の「見直し案」で、旧国立競技場と大きく違う点が一つある。
 観客席の上、全部に屋根をつけることである。
 旧国立競技場は、西側のメーンスタンドの上部だけに屋根があった。
 新国立競技場は、東側のバックスタンドと両ゴール裏のスタンドの上にも、ぐるりと屋根をつける構想である。
 日本は雨が多い。
 サッカーやラグビーの試合は、大暴風雨でないかぎり、雨でも行われる。
 したがって、観客席全部の上に屋根が欲しい。
 そういうわけで、オリンピックのためではなく、将来の利用のために、観客席に総屋根をつけるべきである。
 しかし、問題もある。

★芝生が育たない
 スタンドの上部を総屋根にすると、東側のバックスタンドの屋根のために、朝日がフィールドに当たらない。
 芝生が育つためには、朝のうちに陽に照らされる必要がある。
 また、風が芝生の上を吹きぬける必要がある。
 開閉する大屋根のドームである豊田と大分のスタジアムは、この問題で苦労しているという。
 野球場を兼ねている札幌ドームは、天然芝のサッカー・フィールドを大きなプレートの上に載せ、そのまま屋外に引っ張り出して太陽の陽と外気に当てている。
 天然芝のサッカー・フィールドのプレートの下には、人工芝の野球のフィールドがある。
 サッカー・フィールドを屋外に出している間は、人工芝の野球場として、日本ハム・ファイターズの球場になる。

★テレビ中継への障害
 札幌ドームの仕組みは画期的だが、新国立競技場で採用するのは難しい。
 スタジアムの外側に、サッカー・フィールドを引き出すための敷地が必要である。
 神宮球場と一体化して、敷地のスペースを作り出すことも考えられるが、神宮球場はプロ野球のヤクルト・スワローズと大学野球がフルに使っているので、サッカー、ラグビーとの共用は、日程的に無理である。
 スタンド総屋根には、もう一つ、別の問題がある。
 昼間の試合で屋根の影がフィールドに掛かることである。
 フィールドの半分が陰になると、テレビ中継の光量調整が面倒になる。そこで、屋根を半透明の幕にして、ある程度は、光が透るようにしているスタジアムもある。
 いずれにしても、スタンド総屋根にするには、特別の工夫が必要である。



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サッカー日誌 / 2015年09月01日


新国立競技場の新計画(中)


8万人収容が必要か?

関係閣僚会議で決定、公表
(8月28日・首相官邸)

★陸上競技場にはしない
 新国立競技場計画の見直しに当たって、陸上競技連盟は「サブトラックの常設」を求めた。
 サッカー協会は「8万人収容のスタンド」を要求した。
 政府は、陸上競技の「サブトラック常設」要求を退けた。
 サブトラックをオリンピックのときだけの仮設とし、大会後に撤去するという。
 つまり、2020年の東京オリンピックのあと、新国立競技場は陸上競技場としては維持しない方針である。
 一方、観客席については、6万8000人収容としながらも、オリンピックのあとに、8万人に増設することが可能だとした。陸上競技のトラックの上に観客席を張り出して増設するという案である。

★五輪後にスタンド増設
 2020年のオリンピックのあと、陸上競技大会で8万人の観客を集めることは考えにくい。
 したがって、オリンピックのときには必要な大スタジアムを、その後も陸上競技場として維持するのはムダである。
 「オリンピック後は、新国立競技場を、陸上競技場としては維持しない」のは合理的である。
 サッカー協会が「ワールドカップ招致のため」として求めていた8万人のスタンドは可能だとした。
 しかし、サッカー協会が「8万人要求」の根拠としたワールドカップ招致は差し迫った問題ではない。
 サッカーにとって、8万人のスタジアムが必要なのは、ワールドカップ招致のためではなく、Jリーグや代表チーム試合で8万人の観客が集まるからでなければならない。
 埼玉スタジアムや新潟のビッグスワンが、大スタジアムを作って5万人以上の観客を集めていることを考えれば、東京に8万人のサッカー・スタジアムを求めるのは突飛ではない。

★国立球技場に?
 公表された新国立競技場の「見直し案」を見る限りでは、政府は新国立競技場を、オリンピック後は「国立球技場」とすることを想定しているようである。
 つまり、オリンピックの後には、サッカーとラグビーの競技場として維持しようというわけである。
 ラグビーのためには、すでに同じ神宮外苑のなかに国立の秩父宮ラグビー場がある。
 したがって、新国立競技場は、ほとんど「サッカー専用」にすることができる。
 サッカー協会としては、大歓迎だろう。
 しかし問題がある。
 それは、Jリーグの東京のチームの試合で、8万人のスタンドを埋めることである。
 それが出来なければ、スタジアムの維持運営の見通しが立たない。
 問題は、オリンピック後に、サッカーが8万人のスタンドを活用できるかどうかである。



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