サッカー日誌 / 2010年09月09日


森本貴幸の2発を評価する


キリンチャレンジカップ第2戦
親善試合 日本 2-1 グアテマラ
(9月7日 大阪・長居競技場)

◇守備的な相手との対戦
 ワールドカップ南アフリカ大会後の日本代表第2戦。相手は中米のグアテマラだった。ワールドカップ決勝大会に出場したことのない国だ。日本にとって「強い相手との試合経験を積む」という親善試合の趣旨にはそぐわないカードである。
 グアテマラには、FIFAの理事がいる。2020年ワールドカップ招致を狙っている日本は中南米の票をぜひ確保したい。そういう狙いで9月、10月にパラグアイ、グアテマラ、アルゼンチンとFIFA役員のいる中南米の国からチームを招いたのだという報道があった。
 それはともあれ。
 チーム力に差があることは明らかだった。グアテマラは、5人で守備ラインを作り、中盤の3人も下がって、守りを固める戦い方だった。スタンドで観戦したザッケローニ次期監督は「守備的な相手と戦うさいの訓練になった」と語ったという。なるほど。「プラス思考だな」と思う。

◇良かった点に目を付けたい
 守りを固めている相手を崩すために必要なことの一つは「個人の力」である。守りの密集の中でシュートできるすばやい技術と判断力がいる。
 そういう意味で、森本貴幸の2発はよかった。
 前半12分の1点目は、長友の左からのクロスを、相手の守りに挟まれながらヘディングで決めた。事前の動きで相手のマークを外し、長友の的確なパスを誘った。
 20分の2点目は右サイドを本田―香川のコンビで突破し、香川がゴール前へ通したパスのこぼれ球を密集のなかで押し込んだ。「自分はいいポジションにいただけ」と話したが、それだけではない。相手に取り囲まれながら、足首を伸ばして左隅に押しこんだ森本の一瞬の判断とテクニックは非凡である。
 その後の森本は、一人で攻めようとし過ぎてミドルシュートを連発するような自分勝手なプレーもあった。でも悪かった点よりも、良かった点に目を付けておこう。

◇集中力を忘れて失点
 日本が2点リードして楽勝かと思ったら、2点目の2分後に1点を返された。点をとったすぐあとに集中力を忘れたのは良くない。
 インターセプトされたボールが前線のマリオ・ロドリゲスに出た、そのとき守備ライン中央の槙野智章と岩政大樹の連係が悪く中央を抜かれた。岡田前監督はセンターバックに中澤佑二と闘莉王だけを使い続けてきた。そのために、このポジションのコンビが育っていない。そのツケが出た。闘莉王はパラグアイ戦前にケガを理由に辞退し、中澤は練習中の肉離れで前日にチームをはずれていた。
 しかし、タイトルのかかっていない試合は、新しい選手の組み合わせを試してみる機会である。そう考えれば、この新コンビの失点もいい教訓であり、いい経験だったかもしれない。
 8月27日に発表された日本代表23人の中から、この試合ではケガなどで7人が離脱していた。そのために香川真司や細貝萌に活躍の場が与えられた。そう思えば、それも良かったのかもしれない。


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サッカー日誌 / 2010年09月08日


監督代行でのびのびとプレー


キリンチャレンジカップ第1戦
親善試合 日本1-0パラグアイ
(9月4日 横浜・日産スタジアム)

◇W杯の代表選手が登場
 日本代表のワールドカップ後の第1戦は、パラグアイ代表を招いての親善試合だった。南アフリカのラウンド16で延長戦を演じPK戦で日本が涙を呑んだ相手である。6万5,157人の観衆で札止めとなったのは、ワールドカップ人気をうまく引き継いだカードだったからだろう。
 日本もパラグアイもワールドカップ代表だった選手が大半だった。これもよかった。
 年間に国際試合を出来る日は限られている。その貴重な機会に招いた相手が、名前だけ代表チームで実際は二軍以下であることも、これまでは多かった。日本の選手にとって強い相手との国際試合の経験にならない。観客にとっては、おもしろい試合にならない。スポンサーとの契約のために無理にカードを組まなければならないケースもあるだろうが、試合が面白くなければ、スポンサーにもそっぽを向かれかねない。今回はそういうことがなくて、いいメンバー同士が親善試合らしい良さを見せて、楽しめる試合となった。

◇典型的な「いい親善試合」
 ワールドカップ参加選手をそろえても、ワールドカップと同じような好試合になるとは限らない。親善試合はシーズンの合間を縫って行われるから選手たちの体調は万全でない。選手のやる気(モチベーション)を高めるのも難しい。
 一方、親善試合には親善試合の良さがある。勝敗についてのプレッシャーは少ないから選手たちは伸び伸びと個性を発揮してプレーする。監督がこまかくチームプレーを仕込むことがないから、各選手が自分の戦術的判断力を生かして攻守を組み立てる。だから、それぞれの選手の技術と戦術能力を楽しむことができるし、見極めることができる。そういう意味で、今回は典型的な「いい親善試合」だった。
 ワールドカップの再戦カードだったことが、双方の選手のモチベーションを高めるのに役立ったのだろう。選手たちは最後まで戦う姿勢を失わなかった。日本代表は新監督がベンチに入れないため技術委員長の監督代行だったが、おかげで選手たちの自主的なチームプレーの組み立てを見ることができた。

◇憲剛―香川で決勝点
 日本代表の良かった点が、いくつか目についた。
 まず、中盤の両サイドである。右に松井大輔、左に香川慎司という布陣だった。ともに得意のドリブルを伸び伸びと使って攻めこんだ。岡田前監督のもとでは、あまり見られなかった形である。新監督のもとで、うまく生かされれば楽しみだと期待した。
 新たに起用された細貝萌が中盤でよく守っていた。まだ24歳だから、国際試合の経験を積めば、さらに活躍できるだろう。
 全体の試合ぶりは、岡田前監督が、2年半にわたって仕込んできたチームプレーの再現だった。速いパスをつないで攻めるが、なかなか得点できない。
 唯一の得点は後半19分。中村憲剛―香川のスルーパスで中央を突破した。憲剛の判断力とパスの精度が、周りの選手たちの動きに助けられて見事に実った。


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サッカー日誌 / 2010年09月08日


ザッケローニ監督を考える(下)


めざしているチームの姿は?
監督「私のサッカー哲学は調和だ」
(8月31日の就任記者会見から)

◇システムは状況による
 ザッケローニ監督の就任記者会見で、次のような趣旨のやりとりがあった。
 「あなたは選手を見てからシステムや戦術を考えるのか? それとも確固たるシステムや戦術があって、それに合った選手を選ぶのか?」
 「このレベルでは、相手によってシステムを変えなければならない」
 新監督の答はサッカーの常識である。システム(基本の布陣)は、相手により、自分のチームの選手により、また試合の置かれている状況によって決めるものである。
 それでも、こういう質問が出たのには理由がある。
 ザッケローニ監督はACミランで「3:4:3」の攻撃的布陣にこだわったと伝えられたことがある。イタリアでは、ワントップあるいはツートップで逆襲を狙う「守り重視」が伝統だが、ザッケローニ監督はスリートップの「攻撃重視」だというマスコミの「伝説」がある。それを踏まえての質問である。

◇戦術的なバランス
 ザッケローニ監督は、こう付け加えた。
 「私は攻撃的なサッカーを好む監督だとイメージされているかもしれないが、自分では、バランスのとれたチームを作り、バランスのとれたサッカーをすることの出来る監督だと思っている」
 この場合の「バランス」は、攻撃と守備についての話で、戦術的な用語である。
 ところが、別の場面でも「バランス」という言葉が出てきた。
 「モットー、あるいは好きな言葉はあるか?」という質問に対する答えを、通訳が「好きな言葉はバランスだ」と訳したのである。
 その夜にNHKテレビのスポーツニュースを見たら、この場面が取り上げられていて、テロップで「私のサッカー哲学は調和だ」となっていた。これだと戦術的な話ではなく、サッカーに対する考え方か、チーム作りの方針の話になる。

◇コミュニケーションで調和を
 あとで友人に聞いた話だと、NHKは会見のすぐ後の夕方のニュースでは、同じ場面を通訳の言葉によって放映したらしい。ところがNHKの内部でイタリア語の分かる人が見て「訳が違う」と指摘し、専門家に訳し直させて「調和」のテロップになったという。イタリア語で「フィロソフィー」らしき言葉を聞き取れたから、こちらは戦術ではなく考え方の話と受け取るのが正解だろう。
 ザッケローニは、チーム作りで大切にしたいのは「コミュニケーション」だとも言っていた。調和のあるチーム作りをするためにはコミュニケーションが大事だから「つじつま」は合う。
 記者会見で通訳をした宮川善次郎さんは、母親がイタリア人で、日本語は達者ではないらしい。トリノ在住で、選手や監督の斡旋をするエージェントをしているということだ。今回はとりあえず、売り込みに成功した監督の通訳を引き受けたのかもしれない。しかし、マスコミやファンに正しく理解してもらうために最初の記者会見から客観的な立ち場の専門通訳をつけるべきだったと思う。


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サッカー日誌 / 2010年09月06日


ザッケローニ監督を考える(中)


課題と目標と契約期間
監督「W杯で見せた力をアジアでも」
(8月31日の就任記者会見から)

◇アジアカップをめざす
 「アジアカップではトップ3を狙わなくてはならない。日本はワールドカップで、その力を世界に見せたのだから、アジアでも、それを示さなければならない」
 ザッケローニ監督の就任記者会見はイタリア語だった。その発言を通訳がこう伝えた。これには、ちょっとびっくりした。まだチームを見ていないうちに、3位以内と自分自身に「達成義務」(ノルマ)を課したのだろうか?
 実は通訳の誤訳というか「超訳」だったらしい。サッカー新聞の「エルゴラッソ」によると「絶対的な主役」であるべきだという内容だったという。そうであれば「優勝を」という意味を込めながら、義務とは受け取られないような巧みな表現である。
 ともあれ、ザッケローニがアジアカップを強く意識しているのは確かである。新監督は、この後、もう一度、自分からアジアカップに触れている。

◇準備の時間はほとんどない
 「ワールドカップからアジアカップまでの期間が短すぎる」というのが、2度目の発言だった。
 アジアカップ決勝大会は2011年1月に中東のカタールで開かれる。欧州選手権はワールドカップの翌々年だが、アジアカップは翌年である。しかも今回は、開催国カタールの夏が暑すぎるために1月開催になった。ザッケローニが就任してから4カ月しかない。その間に日本ではJリーグの終盤戦があり、天皇杯がある。選手たちを集めて新しい日本代表のチーム作りをする準備の時間は、ほとんど与えられていない。それを問題点として指摘したのである。
 最初の発言は「今後の大会の目標」についての質問に答えたものだった。このとき4年後のワールドカップについては「世界のお祭りの場に日本も立たなければならない」と簡単に触れただけだった。
 2度目の発言は「Jリーグのシーズンについて」の質問に答えたときである。もとの質問には、ほとんど答えないで、自分のほうからアジアカップを取り上げた。

◇巧妙でしたたかな発言
 記者会見でのやり取りをきいて「見かけは柔和で温厚だが、発言は巧妙でしたたかだな」と思った。ただし、あまり日本語が巧みではなさそうな「超訳通訳」を通じての印象である。
 アジアカップを強く意識し、ブラジル・ワールドカップについて、ほとんど話さなかったのは、契約期間も関係しているのではないかと思った。「1年ごとに条件を見直すことになっている」というのが、交渉を担当した原博実・技術委員長が明らかにした唯一の契約内容である。つまり、4年後のワールドカップまで通しての契約ではないということである。
 ザッケローニ監督にとっては、アジアカップは、今後1年の間に行われるもっとも重要な大会である。しかし準備期間はほとんどない。シーズン中の西ヨーロッパに行っている欧州組を呼び戻すことはできない。それでも優勝できれば新監督の手腕によるものであり、上位にはいれなくても新監督の責任ではない。それを言いたかったのではないか、と思った。



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サッカー日誌 / 2010年09月05日


ザッケローニ監督を考える(上)


高額の外国人と契約する意味は?
原技術委員長「契約条件は公表できない」
(8月31日の就任記者会見から)

◇「外の風を入れる」
 日本代表チームのアルベルト・ザッケローニ新監督の契約条件は公表されていない。イタリアから連れてくる3人のコーチの報酬などを含めて、4億から5億円くらいの見当ではないかと推測したのだが、スポーツ紙には6億円という説も出ていた。
 推測が「当たらずといえども遠からず」だとしての話だが、「ワールドカップで勝てるチームを作ってくれるのなら金を惜しむな」というも考えもあるだろうし、逆に「そんなに金があるのなら、わが町に芝生のグラウンドを作って欲しい」という人もいるだろう。
 ぼくは「代表チームの監督に大金をかける必要はない」という考えである。しかし「外国人監督を雇う意義も十分ある」と考えている。仲間内で監督の座を「たらい回し」していたら進歩はない。外国人監督は、たとえ成績の上で結果を出せなくても、日本になかったもの、足りなかったものを何か残して帰るだろう。部屋の空気がよどまないように、ときどき窓を開けて外の風を入れる必要がある。

◇新しいチャレンジ
 世界のトップレベルで実績のある著名なコーチは少ない。つまり供給は少ない。だから、著名な監督の値段は高い。
 欧州や南米には、いい監督にお金を惜しまないクラブチームが、いくつもある。つまり需要は多い。その獲得競争に加われば金額はますます高くなる。
 日本サッカー協会は、今回はじめて、そういうマーケットで代表チームの監督を求めた。費用は惜しまずに、有名監督に来てもらおうとしたのである。
 ザッケローニ監督は、長年にわたってイタリアのクラブチームを指揮してきた。ACミランを優勝させたこともある。実績があり、著名な監督であることは間違いない。
 しかし、代表チームの監督を務めた経験はない。海外での経験もない。ザッケローニ自身にとって新しい分野へのチャレンジである。


◇案外「お買い得」だったかも
 「ザッケローニは、最近はイタリアで実績を残していない。不成績で解任されたり、低迷しているチームを引き受けながら立て直しに失敗したりしている。そんな監督でいいのか」
 週刊誌に、そういう趣旨の記事が出ていた。
 確かに2000年代に入ってからは、いい成績がない。前シーズン(2009~2010)はユベントスで上位に進出できず、契約を更新してもらえなかった。そういう立ち場だから有名であってもマーケットでの価格は下がっていたはずである。条件が公表されていないので、はっきりは言えないが、案外「お買い得」だったのかもしれない。
 現在のイタリアのクラブには合わなくなっていても、1990年代には実績があったのだから、その手腕を日本代表チームで発揮できる可能性はある。日本にイタリア人の監督が来るのは初めてである。新しい外の風を入れるのは、試みとしては面白い。

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サッカー日誌 / 2010年09月04日


日本代表、後任監督の選び方(下)


ザッケローニ監督就任発表
(8月31日 東京プリンスホテル)

◇記者会見にマスコミ過熱
 難航していた日本代表チームの新監督が、イタリア人のアルベルト・ザッケローニ氏に決まり、8月31日午後2時から就任記者会見があった。前日に発表されたときは、すでに来日しており、契約のサインも済ませ、その夜に日本のコーチたちとの打ち合わせもしたという。しかし、就労ビザの関係で、実際に指揮をとるのは10月の親善試合からになる。
 記者会見は東京プリンスホテルの「鳳凰の間」が300人以上の取材でいっぱいだった。240の座席がほとんど埋まり、記者席前方にカメラマンが50人以上、後方にテレビのニュースカメラが16組。マスコミ過熱である。
 新監督は、濃い色のスーツに青の模様のネクタイを締め、おだやかな紳士という感じだった。受け答えは、おだやかで落ち着いている。トルシエやオシムのように個性を強く押し出す態度はない。多少のユーモアは交えたが、オシムや岡田監督のような「受け狙い」の冗談はない。

◇著名な監督、報酬は高額?
 イタリアで25年もクラブチームの監督をつとめ、ACミランやインテルなど超一流のチームを率いてきている。ACミランではリーグ優勝して「最優秀監督賞」を受賞している。56歳。経験は十分、実績もある。「著名な監督を」という日本サッカー協会の方針に合っている。
 著名だから報酬も相当な高額だろうと想像したが、原博実技術委員長(強化担当)は「契約の内容は公表できない」といっさい明かさなかった。年俸2億円という推測もあるが、ヘッドコーチ、GKコーチ、フィジカル・トレーナーをイタリアから連れてくることになっている。いろいろ合わせると年間4億円以上かかるのではないかと計算してみた。
 高すぎるかどうかは、日本に何を残してくれるかにかかっている。「優勝」といった結果だけの話ではない。日本のサッカーにないもの、足りないものを、協会やコーたちや選手、さらにはマスコミやサポーターが学ぶことが出来るかどうかが重要である。

◇契約は1年ごとに見直し
 契約期間について、原技術委員長は「1年1年、見直しながらやっていくことになっている」と語っただけだった。これまでの日本の強化方針のように、ワールドカップまで4年かけて「一つの代表チーム」をまとめ上げていくのであれば、4年契約も選択肢のはずである。
 しかし、長期契約は協会側にとっても、監督側にとっても、必ずしも得策ではない。協会側は、うまくいかなかった場合、途中でクビすると残り期間の報酬を払い続けなければならないようなケースが発生する。一方、監督側は、途中でいい結果を出しても報酬はあがらないし、他から好条件の申し出があっても動けない。1年契約にして、2年目の契約の優先権を協会側が持つというようなオプションをつける方法も考えられるが「細かいことを含めて公表できない」ということだった。
 ともあれ「4年がかりで一つのチームをまとめ上げる」ような日本式の長期集中強化主義を考え直すには、ザッケローニ監督の就任は、いい機会ではないかと思う。


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サッカー日誌 / 2010年09月03日


日本代表、後任監督の選び方(中)


育成型か? 勝負師か?
(8月27日 代表スタッフ発表)

◇関塚隆がコーチに
 9月4日と7日に行う日本代表の親善試合のメンバーが8月27日に発表された。監督が決まっていないため原博実技術委員長(強化担当)の「監督代行」となった。この時点で、すでに新監督の人選は煮詰まっていたようだが、就労ビザをとる必要があるなど手続きの問題があり試合には間に合わない状況だった。それほど重要でない試合のために監督決定を焦ることはない。代行で結構だ。
 コーチとして、元川崎フロンターレ監督の関塚隆が発表された。関塚コーチはU-21のオリンピック・チームの監督になることが事実上、決まっていた。つまり、4年後のワールドカップに加わる若手を育成する役割を担いながら、日本代表の新監督を補佐する立場が想定されている。
 ここまでの経過から推測すると、原委員長の方針はこうである。
 新監督は外国の著名な戦術家を起用するが、選手の育成は国内で実績のある関塚コーチに担当させる。外国人の新監督に4年後のワールドカップまで代表チームを任せるとは限らない。

◇外国人監督を招く利点
 日本代表の後任監督を外国人にするのは、犬飼前会長のときに決めてあった方針のようだ。
その後、ワールドカップで岡田武史監督が好成績を残したので「岡ちゃん続投」という手もあったのだが、小倉純二新会長は、強化担当を引き続き大仁副会長と原技術委員長に任せることにし、方針を変更しなかった。
 外国人を監督に招くのも悪くない。外国の新しい方法や考え方を取り入れる機会になるし、日本人同士だと気付かないことを指摘してくれることもある。「窓を開けて外の風を入れる」ことも必要である。
 ぼくが「読売サッカークラブ」(現在のヴェルディ)の運営に協力していたころ、日本人と外国人の監督を交互に起用することを提案し、実行してもらったことがある。新しい風を入れたいが、外国人監督ばかり続けると日本人の監督が育たない。それで交代制にしたのである。
今回の日本代表も、外人監督の次は日本人の関塚という路線を想定することができる。

◇育成型と勝負師型と
 新しい監督に、どういうチーム作りをさせたいのか? その考え方も重要なポイントである。
 一つの考え方は、4年後のブラジル・ワールドカップを目標に、日本代表を「一つのチーム」として強化することである。そういう方針であれば、ユース年代、オリンピック・チーム年代の若い選手にも目を配り、選手を育てながらチームを作っていくことになる。
 もう一つの考え方は、一つ一つの国際試合、あるいは国際大会のたびに集められるメンバーで代表チームを編成して、その時点で「勝つこと」を求めることである。その試合、あるいは一つの大会を戦うために「勝負師」としての戦術的手腕が求められる。
 推測を積み重ねると、外国人の新監督は「勝負師型」で、翌年のアジアカップやワールドカップ予選に勝つことを求められる。関塚コーチには若手を育成してブラジル・ワールドカップのチーム作りをする役割を想定する。つまり、育成と勝負の二兎を追う方針ではないだろうか?

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