サッカー日誌 / 2008年10月17日


個性を育てる三つの条件


来日のクラマーさんに聞く
(10月12日、浦和ロイヤル・パインズ・ホテル)

★選手に考えさせる
 デトマール・クラマーさんが、さいたま市で開かれた催しで講演するため短期間ではあるが来日した。そこで9月のドイツ・ツアーでお世話になったお礼をのべようと仲間たちで宿舎を訪ねた。そのときに「子どもたちを、どう教育したらいいか」という話が出た。
 日本のサッカー選手は、よく教え込まれてうまくなったが個性的でない。「しっかりと教育しながら個性を伸ばすには、どうすればよいか」というテーマである。
 「コーチの考えを教えるのではなくて選手に考えさせろ」というのがクラマーさんの第一の答えである。
 1964年の東京オリンピックを前に日本代表チームを指導したとき、八重樫茂生選手に「ゲームメークをやれ」と指示した。「どういうふうにするのですか?」と八重樫がきいた。「それは自分で考えろ」とクラマーさん。「答えは選手の口から言わせなければならない」

★一人一人と話し合う
 クラマーさんの第二の答えは「一人一人の選手と話し合う」ことだった。
 バイエルン・ミュンヘンの監督をしたとき、チームはスターぞろいだった。ベッケンバウアーやゲルト.・ミュラーがいた。そういうスターを含めて、すべての選手と個々に話しあいをした。ルンメニゲはまだ若かった。日曜日の昼はいつも、ルンメニゲと一緒に食事をした。「選手は一人一人違うのだから、それぞれに話をしてやり、それぞれから話を聞いてやる必要がある。そうして選手との間の垣根を取り払わなくてはならない」という。
 みんな一緒に同じように練習させ、チーム全体に一括して指示を出して、それで「監督の仕事は終わり」ではない。
 最初に日本に来たとき足を痛めて練習を休もうとした選手がいた。痛めたほうの足を使わなくてもできる練習を厳しく課したが、そのときも1対1で話し合って納得させた。

★個性を伸ばせる環境を
 「子どものころの環境もだいじだ」というのが第三の答えである。
 クラマーさんがいま住んでいるのは、ライト・イム・ヴィンクルというチロル渓谷の中の小さな村だが、ここから冬のオリンピックの金メダリストが二人出ている。一人は女子のスキー距離選手で、もう一人は男子のジャンプの選手である。
 「冬は雪が積もってサッカー場は距離スキーの練習場になる。近くの丘には中規模のジャンプ台があって、子どもたちは80㍍くらい平気で飛んでいる。そういう環境の中で遊んで育って、その中からメダリストが生まれるんだ」
 モーツアルトのような素質をもった子供がいても、ピアノのない家庭で育ったのではモーツアルトは生まれない。子どもたちが、自分からスポーツをしたくなるような環境が必要だ、ということだった。

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