サッカー日誌 / 2015年04月29日


スポーツ施設の維持管理(上)


香川県立体育館の場合
(4月20日 スポーツ政策研究会)

★耐震工事ができない
 四国高松市の香川県立体育館が、閉鎖されたまま、取り壊しもできず、放置されているということである。
 スポーツ政策研究会の4月例会で、森川貞夫先生のお話を聞いて知った。
 2014年7月4日のNHKテレビ「おはよう日本」で報道されてから問題になっていたとのことだが、不勉強で知らなかった。そのころワールドカップ取材でブラジルに行っていたためでもある。
 香川県体育館は、耐震検査の結果、補修工事が必要なことが分かった。
 そこで、補修工事の業者を入札で公募したのだが、引き受け手がない。というのは、県が設定している予算では、採算が合わないからである。
 危険だから取り壊すことも考えなければならないが、取り壊しには反対運動が起きた。

★芸術作品としての保存
 香川県体育館は、船の形のユニークなデザインで知られている。丹下健三事務所などの設計で、1966年にグッド・デザイン賞を受賞している。
 そういう芸術的な建築物だから、観光資源として保存すべきだという運動が起きた。
 建ててから50年あまり経って老朽化しており、建て替えの時期でもあるらしい。
 しかし、芸術作品として保存するのであれば、建て替えはできない。
 耐震性の点で危険があるから使用することもできない。
 そういう事情で使用禁止のまま放置されているという。
 法隆寺のような国宝として評価の定まった建造物は、多くの人が保存する価値を認めるだろう。
 文化財としての保存の費用を税金から助成することに、反対は少ないだろう。

★法隆寺との違い
 しかし、体育館は実用のための現代の建物である。法隆寺とは性質が違う。
 使うことができなければ、それまで利用していた人びとにとって支障が生じる。
 建築家の丹下健三さんの作品としての価値は、広く認められているとしても、それを国民あるいは県民の税金を使って保存すべきかどうかは、意見の分かれるところである。
 このように香川県立体育館の問題を考えると、三つのポイントがある。
 一つは、補修に必要な実際の費用を、どのようにして調達するかである。
 第二は建造物の耐久性である。建造物は、いつか老朽化するから、そのときに建て替えの費用が必要になる。
 三つ目の問題は建築物の実用性と芸術性である。実際に使われているものを文化財として保存することは難しい。


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
     

Copyright(C) 2007 US&Viva!Soccer.net All Rights Reserved.