サッカー日誌 / 2011年02月06日


アジア杯のザッケローニ(中)


チームの成長か? 個人の成長か?

(アジアカップ 1月7日~29日・カタール)

◇「成長」の意味に違い
 アジアカップを戦う中で、ザッケローニ監督は「成長」というキャッチフレーズを掲げた。この言葉はNHK-BSの中継のなかで、アナウンサーも解説者も、しばしば引用していた。
 しかし、聞いているうちに「成長」という言葉の理解に違いがあるのではないかという気がしてきた。
 ザッケローニ監督の掲げた「成長」には二つの意味がある。
 一つは「準備期間が少なかったので、大会を戦いながらチームの力を成長させる」ことである。苦戦しながらも最後に優勝を勝ちとったのだから、その意味では大成功だった。
 もう一つは「タイトルを求める厳しい試合の経験を重ねることによって一人一人の能力を成長させる」ことである。これは、将来にとって重要である。

◇ワールドカップへ育てるのか?
 さらに、もう一つの「成長」の解釈があったようだ。それは2014年ワールドカップへ向けて日本代表チームを成長させることである。テレビ解説者の言葉を聞いていると、そういう受け取り方をしている人が多いように思った。
 しかし、ザッケローニ監督の頭の中には「アジアカップ優勝の顔ぶれを、そのままワールドカップへ向けて成長させよう」というような考えはないだろう。ぼくは、そう思った。
 3年半後に、長谷部誠と遠藤保仁が中盤の「かなめ」であるかどうかは分からない。ゴールキーパー川島永嗣の大当たりを欧州南米の強豪相手に期待できるかどうかは未知数である。本田圭佑をしのぐ強力プレーヤーが台頭している可能性もある。
 だから3年半後に、どういう日本代表チームを作るかは、この時点では見当もつかない。代表チームを「一つのクラブチーム」のように育てあげるのは無理である。

◇個人の成長が代表を強くする
 ザッケローニはイタリアのクラブチームで成果を残してきた監督だが、選抜の代表チームを単独のクラブチームと同じような考え方で育てられるとは思っていないだろう。
 ザッケローニ監督が期待しているのは、一人一人の能力の成長である。「日本のプレーヤーは、もっと伸びる可能性(伸び代)を持っている」とよく言っているが、成長とは、その隠されている能力が、厳しい試合の経験によって引き出され、鍛えられることである。アジアカップは、そのための一つの機会だった。
 成長した選手たちの層が厚くなるとともに、代表監督の選択肢が広がり、いろいろな試合の状況に応じた、いろいろなチーム作りが可能になる。それが強い代表チームを作る。
 ザッケローニ監督が、代表チームを単独クラブのように「一つのチーム」として完成してくれるだろうと期待しているのであれば、ちょっと見当が違うだろう。


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