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脱サラして独立。我が道を行く男の独り言

見て盗め

2021年02月10日 | 見習い時代
見習い時代「見て盗め」という指導で育ちましたが、今、振り返ると「盗むほどのモノが無い人」ほど、見て盗めを多用していたように思います。
(私の周辺に限って、ですよ)
作業の「目的」を理解していない。頭を使って「工夫した」仕事をしていない。
作業の説明、指導できない事を「見て盗め」で誤魔化したのだと思うのです。

達者な技術を持った職人さんは、作業1つにも「目的」があります。
「何で、こういう作業をするのか?」と、全てに意味がある事を知っています。
これが指導に繋がります。

私の親方は、ハッキリ言って指導力はゼロでした。
なにしろ、仕事が下手で雑なんです。クレームも多かったのです。
(私が見習いに行く頃は、滅多に現場にでなくなっていましたが)
だから盗むほどのモノが無いのですが、私には「見て盗め」を力説するのです。
(そう言えば「一生勉強」も口癖でした。これは改めて)

名人は、その名の通り名人で、指導力も高かったです。
私が「スキマ無く仕上げた」ものを、名人は「器用だねぇ。でもゼロ点」と酷評。
理由は家の狂いを考えていないから。
(今なら理解できます)

次に、スキマを開けた仕上げを見た親方は「こんなにスキマがあったら、みっともない」と。
それを名人が「スキマじゃなく余裕。人間、余裕が無いとストレスで死ぬんだ。家も同じだ」と。
(名人には誰も逆らえないので、親方も黙りました)

細かい技術的な説明もありましたが、名人は「考え方」の指導が多かったです。
お陰で工夫する能力が鍛えられました。
多分だけど、名人はモテただろうなぁ。
(蟹江 敬三さん似の、渋い顔でしたし)
もっと盗みたかったなぁ。

名人は「見て盗め」は、滅多に言わなかったです。
「ま、ちょっと見てな(笑)」と、私が苦戦した物を簡単にやっつける事は多かったです。
作業しながら「ここで、木に笑われる(苦戦する)」とポイントを教えてくれました。

親方は、刃物の砥ぎでさえ「ここで砥げば」だけ。
(~れば、は方言らしい。疑問形ではなく、「~やりなさい」に近い意味らしい)
今、何をしているという説明すら無いから、学びようが無い(笑)

これでも経営できていたのですから、経営者としての親方は盗むモノがたくさんあったのかもしれません。

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