ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 





三信ビル。千代田区有楽町1-4
上:1986(昭和61)年5月18日
左:1985(昭和60)年11月22日

先日(2018.03.29)「東京ミッドタウン日比谷」が開業した。三信ビルと日比谷三井ビルとを再開発して35階地下4階建の高層ビルにしたものだ。そんなにオフィスの需要があるものなのかと、不思議でしかたがないが、どうもいくらでもあるらしい。

三信ビルの建て主は三井合名と三井信託で、「三信」とは「三井信託銀行」の略称である。テナントも主に三井の関連会社だったらしい。8階には「三友倶楽部」という三井の厚生施設だか社交施設だかが設置されたという。
三信ビルの工事着工は昭和3年(1928)7月、竣工は1929(昭和4)年12月。SRC造8階地下2階塔屋1階、設計は横川工務所(松井貫太郎)、施工は大林組。
外観が独特でただのオフィスビルにない魅力を発している。壁面や窓などの曲面は「表現派」の影響というのがよく言われる。たしかに、表現派の建物に感じるちょっと異様な、あるいはSF的なものは感じられる。外観についてはいろいろ言い方があるようだ。

「外観の単調さ、平滑さを嫌い、さまざまな様式を集めて、個性的な表現を試みた特徴ある建物である。コーナーを丸め、中央部にふくらみを持たせた外壁は、当時流行の表現主義を基調にしているが、ルネッサンスやゴシックの手法も見られる。」(『建築探偵術入門』(東京建築探偵団著、文春文庫、1986年、480円)。
「基本的には簡素化された様式主義の範疇に属している。しかし、外壁の曲線のうねりの大胆さは、表現主義の影響とみて妥当であろう。」(『帝都復興せり!』(松葉一清著、平凡社、1988年、2400円)。
「セセッションとゴシックを折衷した外観」(『看板建築・モダンビル・レトロアパート』(伊藤隆之著、グラフィック社、2014年、2,800円)。
「スパニッシュ風のアールデコ様式」(藤森照信、『東京人No.152』2000年)。

東西に長い形で、1枚目写真の角度で見ると、アメリカの大陸横断列車を引っ張るディーゼル機関車のようにも見える。ぼくは1930年前後の工業製品のデザイン(飛行機、自動車、機関車など)が好きなのだが、このビルにも同様なものが見て取れる。
また、このビルは吹き抜けのアーケード、2階の回廊、半円形のエレベータホールなど、内部が素晴らしかった。

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コメント
 
 
 
三信ビル (hs)
2020-12-18 18:36:48
私の父が定年まで三信ビルで働いておりました。
いまその父の自伝をつくっており、
このお写真を表紙に使用させていただきたく考えております。
非売品です。
完成したらお礼にお送りしたいのですが、よろしければご連絡先をお知らせください。
よろしくお願いいたします。
 
 
 
>hs様 (流一)
2020-12-19 10:22:00
当ブログの写真を表紙にとは光栄です。
ご面倒で恐縮ですが、当ブログ画面、左の「CATEGORY>私事」の「はじめに」に私のメールアドレスが書いてありますので、再度メールを送っていただければ、返信しますのでよろしくお願いします。
 
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