ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 




静嘉堂文庫。世田谷区岡本2-23。2000(平成12)年1月27日

静嘉堂文庫美術館は南の丸子川と北の谷戸川に挟まれた海抜30mほどの丘陵に建っている。丸子川は江戸初期に整備された六郷用水。台地の裾に沿って流れているので、南の野川との間の田畑に水を供給していたのだろう。静嘉堂文庫のすぐ東で、丸子川に合流する小川が谷戸川。谷地形を流れてくる自然河川だ。
静嘉堂文庫美術館は三菱の岩﨑彌之助と岩﨑小彌太の父子二代によって収集された東洋古美術品を中心に収蔵した美術館。最も有名な収蔵品は「曜変天目」の茶碗で、見学者のほとんどはそれが目当てと思われる。ぼくはここでそれを見たのかどうか覚えていない。
「文庫」は大正13年(1924)、小彌太が岩崎家納骨堂があった地に洋館を建てて古典籍を収蔵した。RC2階建てスクラッチタイル貼り。イギリスの郊外住宅のスタイルである。本の閲覧・研究の為の施設で、「書斎建築」というそうだ。設計は桜井小太郎。施工は『日本近代建築総覧』に上遠喜三郎とある。
桜井小太郎(1870-1953)はジョサイア・コンドルの設計事務所で指導を受けたコンドルの弟子。また、イギリスに留学して建築を学んでいる。岩﨑小彌太も明治33年イギリスに留学してケンブリッジ大学を卒業した。静嘉堂文庫の外観は二人の趣味が一致した結果だ。
施工の上遠喜三郎は、早稲田大学會津八一記念博物館や同演劇博物館の施工者、上遠組のこと(『北寺尾散歩(3)上遠牡丹園』)。



静嘉堂文庫南側。写真左に収蔵庫。洋館の裏側にある収蔵庫は1930(昭和5)年に建てたものらしい(『静嘉堂』)。2000(平成12)年1月27日

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